ja PRONEWS https://jp.pronews.com ja (c) PRONEWS Co., Ltd. 15 https://d3hhutmcavcnbo.cloudfront.net/images/pronews_logo.png AF化、軽量化、そして「味」へ──揺れ動く2025年のレンズ価値軸 Vol.02 [PRONEWS AWARD 2025] https://jp.pronews.com/special/202512201402705451.html https://jp.pronews.com/special/202512201402705451.html 2025-12-20T05:02:45+00:00 2025年、レンズの価値軸はどこへ向かったか PRONEWS AWARD 2025 レンズ部門におけるノミネート製品を俯瞰すると、2025年はレンズの価値軸そのものが大きく揺れ動いた一年だったことが見えてくる。高解像度化や大口径化といった従来の競争軸に加え、オートフォーカス化、軽量化、価格帯の再定義、さらには描写の「味」への再評価など、複数の潮流が同時進行した年であった。

本稿では、各ノミネート製品をこれらの価値軸のいずれかを代表する存在として位置づけ、その意義を読み解いていく。

まず、2025年を象徴するトレンドとして挙げないわけにはいかないのが、「アナモフィックレンズのオートフォーカス(AF)化」だ。その筆頭として選出したのが、SIRUI「40mm & 20mm T1.8 S35 1.33x」アナモルフィックレンズである。これまでマニュアルフォーカスが常識だったアナモフィックの世界に、S35/APS-C対応かつAF駆動という新たなスタンダードを持ち込んだ意義は大きい。T1.8という明るさを確保しながら、40mmモデルで約614gという軽量コンパクトな筐体に収めた技術力には素直に驚かされた。マウントは、E、MFT、Z、Xマウント対応で、ワンマンオペレーションの現場を深く理解した設計であり、「アナモフィックはMFが常識」という固定観念を覆し、この分野における価値観の転換を強く印象づけた一台である。

シネマレンズにおけるAF化という潮流は、シグマ「AF Cine Line」によって、さらに明確な輪郭を与えられた。「28-45mm T2 FF」および2026年春発売の「28-105mm T3 FF」は、硬派なマニュアル操作が主流だった同社シネラインに、リニアモーターHLAによる本格的なAFを導入した点が大きな特徴だ。
写真用レンズで培った光学性能を土台としつつ、クリックレス絞りやギアはシネマスタンダードの0.8Mピッチなど、筐体は完全にプロフェッショナルなシネマ仕様へと刷新されている。
写真用AF技術と本格シネマ筐体を両立させることで、AFシネレンズを「妥協の選択」ではなく、現実的な制作ツールとして再定義する可能性を示した。

SIRUI Astra 1.33x
SIRUI 40mm T1.8 S35 1.33x アナモルフィックレンズ
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Sigma 28-45mm T2 FF
シグマ「28-45mm T2 FF」
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一方で、シグマがハイエンド市場に向けて投入した「Aizu Prime Line」は、その仕様を見ただけでも強い意志を感じさせるシリーズだ。
φ46.3mmという広大なイメージサークルと全焦点距離でのT1.3統一、さらに現代のVFXワークフローを強く意識した設計である。ZEISS eXtended Dataへの対応を含め、光学性能だけでなくシステムとしての完成度も高く、日本発のシネマレンズがハイエンド領域において十分に競争力を持ち得ることを具体的に示した。

今年はまた、「性能」一辺倒ではなく、「味」を積極的に取り込む動きも際立っていた。Tokina「Vista-C」シリーズは、現代的なT1.5の明るさと解像力を維持しながら、あえて周辺解像度を落とし、赤や青のフレアが出やすいヴィンテージ的な特性を注入してきた。計算された「崩し」による有機的なルックは、高解像度時代におけるクリエイターの渇望に応えるものであり、高性能・高解像度一辺倒の流れに対して、「意図的な崩し」という価値を、明確な意志をもって提示した一本である。

SIRUI Astra 1.33x
シグマ「Aizu Prime Line」
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SIRUI Astra 1.33x
Tokina「Cinema Vista-C」
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同様に、Leitz「HEKTOR」シリーズも印象深い。往年の名玉へのオマージュを込めつつ、交換可能なミラーレスマウントを採用するという大胆な戦略は、同社の覚悟を感じさせるものだった。
Leitz Cine製のレンズが、ミラーレス世代のユーザーにとって現実的な選択肢として手の届く位置に近づいたことを、強く印象づける出来事であった。
効率や自動化が進む市場において、描写と操作性を最優先に据えるという価値観を改めて可視化した存在と言える。

コストパフォーマンスと機能のバランスという観点では、DZOFILM「Vespid 2」が放ったインパクトも大きい。1本あたり20万円以下というエントリークラスの価格帯でありながら、Cookeの「/i Technology」によるメタデータサポートを実装し、全域T1.9で統一してきた仕様は極めて野心的だ。エントリー価格帯であっても妥協なき機能統合が可能であることを明確に示し、シネレンズ市場における従来の前提に再考を促した存在である。
価格帯による序列そのものに疑問を投げかけた点も、本シリーズの重要な意義と言える。

Leitz Cine HEKTOR T2.1
Leitz Cine HEKTOR T2.1
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DZOfilm Vespid2
DZOfilm Vespid2
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特殊撮影の分野では、LAOWAの新型プローブズームレンズ「15-35mm T12」および「15-24mm T8」の進化が光った。従来は画角調整のたびにカメラごと移動する必要があったプローブレンズにズーム機構を搭載したことで、撮影効率は飛躍的に向上している。
モジュール式による形状変更の柔軟性も含め、プローブレンズを「特殊機材」から、現場で使われる実用的な撮影ツールへと位置づけ直した一本である。
マクロ撮影や特殊撮影を限られた用途から解放し、より日常的な表現手法へと引き寄せた点で、市場の使われ方そのものに影響を与えた。

    LAOWA Probe Zoom15-24mm T8 Macro/LAOWA Probe Zoom 15-35mm T12 Macro
LAOWA Probe Zoom15-24mm T8 Macro/LAOWA Probe Zoom 15-35mm T12 Macro
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こうしたレンズ観の変化は、シネマレンズの世界にとどまらず、スチルと動画を横断するハイブリッドな領域にも確実に波及している。

スチルと動画の垣根を越えるハイブリッド領域において、ニコンの「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は、完成された存在と見なされてきた標準ズームというカテゴリーに、改めて問いを投げかけた一本である。
インナーズーム化と大幅な軽量化を同時に実現した本レンズは、単なる改良型にとどまらず、ジンバル運用やワンマンオペレーションを前提とした現代的な撮影スタイルに対する、明確な回答を示している。特に注目すべきは、ズーム操作による重心変化を排した設計思想だ。これはスペック上の進化ではなく、撮影現場での判断や段取りそのものを簡略化する実用的な価値をもたらす。
標準ズームという“完成形”と思われていた領域において、運用面から再定義を行った点で、本レンズは2025年のレンズ価値軸の変化を象徴する存在の一つと言える。

キヤノンの「RF45mm F1.2 STM」は、価格帯の再定義と軽量化を同時に成立させた価値軸を明確に示した一本だ。
F1.2という極端な大口径を掲げながら、400gを切る軽量ボディと現実的な価格帯を両立させた本レンズは、「大口径=特別な機材」という前提を大きく揺さぶっている。
従来、F1.2クラスのレンズは、描写と引き換えに重量や取り回しを受け入れる存在だった。しかし本レンズは、動画撮影や日常的な運用を視野に入れたSTM駆動と軽量設計によって、大口径表現を“特別な選択”から“日常的な選択肢”へと引き寄せた。
表現力と現実性の両立という観点で、ミラーレス時代のレンズ設計思想の転換を明確に示した存在である。

NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
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キヤノン RF 45mm F1.2 STM
キヤノン RF 45mm F1.2 STM
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さらに、APS-C用標準ズームレンズシグマ「ART 17-40mm F1.8 DC」は、かつての名玉「ART 18–35mm F1.8 DC HSM」を現代的な軽量ボディと最新マウントで蘇らせ、動画制作者に新たな選択肢を提示した。

ZEISS「Otus ML」シリーズは、効率化やAF化とは距離を取り、描写の純度と撮影者の意思を最優先するという価値軸を担った存在だ。AF化や効率化が急速に進む市場環境の中で、本シリーズは「撮るという行為」そのものへの覚悟を、真正面から問いかけてきた。
究極的な光学性能と引き換えに、操作の自動化を一切排した設計は、決して万人向けではない。しかしだからこそ、表現に対して主体的であろうとするクリエイターにとって、本シリーズは代替不可能な存在となる。
過去の名作を単に再現するのではなく、ミラーレス時代においてもなお“撮影者の意思”を最優先に据えるという選択肢が成立することを示した点で、Otus MLは2025年のレンズ群の中でも、異質かつ象徴的な存在であった。

シグマ 17-40mm F1.8 DC アート
シグマ 17-40mm F1.8 DC アート
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ZEISS Otus ML 50mm F1.4 & 85mm F1.4
ZEISS Otus ML 50mm F1.4 & 85mm F1.4
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総じて、今年のノミネート製品は、単なるスペック競争を超え、撮影スタイルや表現の幅を具体的に拡張する力を備えたものばかりであった。それぞれのメーカーが提示した「次世代のレンズ像」に、心からの敬意を表したい。

本年度のノミネート製品は以下の通りである。

  • SIRUI「40mm & 20mm T1.8 S35 1.33x」アナモルフィックレンズ
  • シグマAF Cine Line「28-45mm T2 FF」
  • シグマ「Aizu Prime Line」
  • トキナー「Cinema Vista-C」
  • ライツ「HEKTOR」
  • DZOFILM「Vespid2」
  • LAOWA「15-35mm T12 / 15-24mm T8」
  • ニコン「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」
  • キヤノン「RF45mm F1.2 STM」
  • シグマ「ART 17-40mm F1.8 DC」
  • ZEISS「Otus ML」

PRONEWS AWARD 2025 レンズ部門 ゴールド賞

シグマ「ART 17-40mm F1.8 DC」

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ゴールド選定理由|「現場を動かした一本」

ここからは、数あるノミネート製品の中でも、2025年の映像制作ワークフローに最も直接的な影響を与えた一本として、ゴールド賞に選出した理由を述べる。評価の軸としたのは、レンズの思想や方向性ではなく、実際の現場における判断と運用をどれだけ更新したかという一点である。

PRONEWS AWARD 2025 レンズ部門ゴールドは、シグマAPS-Cミラーレス用ズームレンズ「ART 17-40mm F1.8 DC」を選出した。写真用ズームレンズでありながら、動画撮影の現場において事実上の“標準レンズ”として機能した点を高く評価した。

本レンズは、かつて多くの映像制作者に支持された「ART 18–35mm F1.8 DC HSM」の思想を継承しつつ、焦点距離の拡張と大幅な軽量化、さらにミラーレス専用設計へと進化を遂げている。これにより、一眼レフカメラマウント時代から移行をためらっていた制作者に対し、運用面での明確なメリットを提示した。レンズ交換の頻度、ジンバル運用時のバランス調整、ワンマンオペレーションにおける負担といった、日常的な制作判断の前提を確実に書き換えた点は見逃せない。

また、F1.8通しというスペックがもたらす表現力を、特別な機材や高価なシネレンズに頼らず実現できる点も重要だ。描写性能、取り回し、価格のバランスが極めて現実的であり、同社公式ストアで148,500円(税込)という価格設定も含め、多くの現場に「選ばれる理由」を持ったレンズであった。

2025年において、実用性と影響力の両面で最も多くの制作現場を動かした一本であり、ゴールド賞に選出するにふさわしいと判断した。

PRONEWS AWARD 2025 レンズ部門 シルバー賞

Leitz ミラーレス用シネレンズシリーズ「Cine HEKTOR」

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シルバー選定理由|価値観を揺さぶった挑戦

シルバー賞では、撮影現場を即座に変える実用性や合理性とは異なる次元で、映像制作における価値観そのものを問い直したレンズを選出した。効率化やAF化、軽量化といった進化軸が加速する中で、本賞は「描写とは何か」「撮るという行為に、どこまで撮影者の意思を残すのか」といった根源的な問いを、現代の制作環境において提示した存在を評価する枠である。

PRONEWS AWARD 2025 レンズ部門シルバーは、Leitz Cineのミラーレス用シネレンズシリーズ「Cine HEKTOR」を選出した。本シリーズは、合理性や効率性を最優先とする現在の潮流とは距離を取り、描写の個性や撮影者の意思介在を重視するという、明確な思想を製品として提示している。

特筆すべきは、その思想を単なる理念にとどめず、ミラーレス対応と交換可能マウントという具体的な設計に落とし込み、現代の制作環境において“選択可能な現実解”として成立させた点だ。Cine HEKTORは、広く使われるためのレンズではない。しかし、映像制作が何を大切にすべきかを改めて考えさせる力を持った存在として、2025年のレンズ観に確かな揺さぶりを与えた。その点を高く評価し、シルバー賞に選出した。

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ATEN、デュアル4K対応KVMスイッチ「CS742H」発売。2台のPCを快適に切替操作、切替時も安定表示 https://jp.pronews.com/news/202512200957707873.html https://jp.pronews.com/news/202512200957707873.html 2025-12-20T00:57:02+00:00
CS742Hは、1組のコンソール(USBキーボード・マウスおよびHDMIディスプレイ)で、2台のPCを切り替えながら操作できる、4K60p対応の2ポートUSB HDMIデュアルディスプレイKVMPスイッチだ。ホットキー、プッシュボタン、マウスホイール、リモートポートセレクターによる直感的な切り替え操作に対応し、作業の流れを止めることなく、スムーズなPC切り替えを実現する。

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周辺機器の接続性にも優れ、2ポートUSB 2.0ハブを内蔵。Webカメラ、ストレージ、ペンタブレットなどのUSBデバイスを2台のシステム間で共有でき、追加のドッキングステーションは不要だ。

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2台のPCを、1つの操作環境に。4K60pデュアルディスプレイ対応のHDMI KVMPスイッチ「CS742H」
さらに、ATEN独自のVideo DynaSyncテクノロジーを搭載。ディスプレイ切り替え時に最適な解像度を自動設定し、KVM切り替え時も安定した画面表示を維持することで、ウィンドウ配置や作業環境の乱れを抑える。

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Video DynaSync機能がない場合、画面切り替え時に表示が乱れてしまうことも
CS742Hは、同時表示と高精度な操作が求められるコンテンツ制作やポストプロダクション、ソフトウェア/システム開発などのエンジニアリング用途に最適という。また、Windows、Mac、Linuxに対応するマルチプラットフォーム設計により、さまざまな業務環境へスムーズに導入できる。

デュアル4K環境を、すぐに使える

HDMIケーブル×4、USB 2.0 A to Bケーブル×2、電源アダプター、リモートポートセレクターを同梱。配線から使用開始まで最短3分。導入の手間をかけず、すぐに快適な作業環境を構築できる。

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必要なケーブルは同梱済み:わずか3分でセットアップ完了
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リア
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構成図

ポイント

  • 高精細な映像表示:デュアルディスプレイで4K(4096×2160@60Hz)表示に対応
  • マルチプラットフォーム対応:Windows、Mac、Linuxに対応し、多様な業務用途で活躍
  • ATENテクノロジー Video DynaSync対応:ディスプレイ切替時に最適な解像度を自動設定
  • USB 2.0ハブ:外付けHDD、USBメモリー、プリンターなどのUSBデバイスを簡単に共有
  • 柔軟な切替操作:本体プッシュボタン、ホットキー、マウスホイール、リモートポートセレクターにより、用途に合わせた切替が可能
  • アナログスピーカー対応
  • 必要なケーブルは同梱済み:わずか3分でセットアップ完了
  • 3年間の長期保証
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Avid、Pro Tools 2025.12公開。世界初「Audio Vivid」対応、没入型3Dオーディオ制作を加速 https://jp.pronews.com/news/202512191900707920.html https://jp.pronews.com/news/202512191900707920.html 2025-12-19T10:00:28+00:00
最新機能を入手するためにPro Tools永続ライセンスをアップグレードする必要がある場合は、こちらのオプションを参照する。Pro Toolsを初めて使用する場合は、こちらから詳細を確認し、無料の30日間トライアルをダウンロードできる。

今回のアップデートでは、Audio Vividによる没入型オーディオへの対応やBounce Factory Liteの統合、さらにAIを活用した新たな制作ツール群の導入など、多数の機能強化が行われている。

Pro Tools 2025.12は、Audio Vividイマーシブ・ミキシングおよびデリバリーの導入、新しい統合SoundFlowパネルを介してミックス、ステム、その他すべての成果物をバウンスできる「Bounce Factory Lite」の搭載、そして3つの新しいARAプラグインへの対応を実現した。また、年間サブスクリプション加入者および有効な永続ライセンス所有者向けに、無料のInner Circleプラグインとサウンドのコレクションも提供される。

AUDIO VIVIDによる没入型聴覚体験の提供

Pro Tools 2025.12は、世界初のAI搭載オーディオコーデック規格であるAudio Vividをサポートする。Audio Vividは、サウンドオブジェクトを3次元空間に正確に配置および移動させるための強力かつ効率的なツールをクリエイターに提供する。UHD World Association(UWA)によってリリースされたAudio Vividは、バイノーラルからマルチスピーカー構成まで、再生環境に関わらず一貫性のある没入型聴覚体験を提供するエンドツーエンドのソリューションだ。

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Pro Tools StudioおよびUltimateの顧客には、セッション内で直接Audio VividコンテンツをミックスおよびレンダリングできるAudio Vivid Production Suiteが提供される。Pro Toolsは単一のセッション内で複数のイマーシブミックスをサポートするため、既存のイマーシブセッションからAudio Vividミックスを素早く開始し、複数のフォーマットでミックスと編集を継続できる。アレンジの変更はすべてのミックスに自動的に反映される。

ステム、ミックスなどを素早くバウンス

Andrew SchepsによるBounce Factoryは、ミックス、ステム、その他すべての成果物をバウンスするための業界標準であり、SoundFlowによってPro Toolsに完全に統合された。Bounce Factoryはプロフェッショナルが数千ものプロジェクトを提供するのを支援してきたが、Bounce Factory Liteにより、すべてのPro ToolsユーザーがPro Toolsの編集ウィンドウから直接、この不可欠なツールにアクセスできるようになった。

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AUDIO BREWERS、AXART LABS、SAFARI PEDALS、WAVE ALCHEMYからの4つの無料INNER CIRCLEプラグインとサウンド

Inner Circleは、年間Pro Toolsサブスクリプション加入者および有効な永続アップグレードプランを持つ顧客向けの特典プログラムであり、無料のプラグイン、サウンドなどを提供する。Pro Tools 2025.12には、Audio Brewers、Axart Labs、Safari Pedals、Wave Alchemyからの4つの新しいInner Circle特典が含まれており、オーディオの処理、Ambisonicコンテンツのデコード、MIDIによる制作のための新しい方法を顧客に提供する。

Audio Brewers ab Decoder HOA Express

「ab Decoder HOA Express」は、Ambisonicsのデコードを迅速かつ容易にし、ユーザーがAmbisonics信号をステレオ、5.1、さらには7.1.2ベッドに、設定なしで変換できるようにする。全プロセスは自動化されており、即座に信頼性の高い結果を提供するように設計されている。なお、「ab Decoder HOA Express」はAmbisonicsサポートが必要なため、Pro Tools StudioおよびUltimateの顧客のみ利用可能だ。

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Axart Labs AutoBeat Lite

AutoBeat Liteは、AI搭載の12トラック生成MIDIビートエンジンであり、Pro Toolsに即座にリズミカルなインスピレーションをもたらし、さまざまな現代ジャンルの新鮮なパターンを提供する。直感的な音楽コントロール、詳細なステップ編集、リアルタイムMIDIパターントリガーを活用して、グルーヴを素早く形作り、アイデアを正確に洗練させることができる。ドラッグ&ドロップでのMIDIエクスポートとセッションへのスムーズな統合により、AutoBeatは最初のスケッチから最終的なアレンジまで、ビート作成を効率化する。

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Safari Pedals Time Machine

Time Machineは、ボタンをクリックするだけで50年代、60年代、70年代、80年代の象徴的なトーンを再現する4つのユニークなサウンド「フィルター」にアクセスできるプラグインだ。各時代は、フィルタリング、サチュレーション、コンプレッションの調整された組み合わせと、各時代の録音されたLo-Fiノイズサンプルで作られている。

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Wave Alchemy Triaz Player + Avid Select Expansion

限定のAvid Select拡張機能がバンドルされたTriaz Playerで、即座にリズミカルなインスピレーションを発見してほしい。8,000以上のプレミアムサンプル、375の厳選されたプリセット、完全なミキシングおよびマスタリングツールスイートを備えたTriaz Playerを使用すると、ドラムトラックを簡単に構築、形成、および仕上げることができる。

付属のAAXプラグインは、macOSおよびWindowsの両方でセッションへのオーディオまたはMIDIのドラッグ&ドロップエクスポートをサポートする。このエディションには、Wave Alchemyの評価の高い拡張カタログから厳選された180のシグネチャープリセットであるAvid Selectも含まれており、モダンエレクトロニック、ポップ、実験的なドラムトーンの多彩なパレットを提供する。

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ボーカルおよびダイアログプラグインのARAサポート

AvidはPro ToolsのARAエコシステムを拡張し、音楽およびオーディオポストプロダクション向けの3つの新しいパートナーとのより緊密で高速かつ柔軟な統合を提供する。なお、これらのプラグインはPro Toolsには含まれていないが、ARA経由でタイムラインに直接アクセスできるようにすることで、オーディオのラウンドトリップ(書き出して読み込む作業)の必要性をなくし、Pro Toolsでの使用を高速化する。

VoiceWunder

VoiceWunderは、Pro Toolsにシームレスに統合し、プロフェッショナルな音声制作に革命をもたらす、超リアルな音声合成(TTS/STS)用のARA2プラグインだ。最先端のAI技術と専門的なオーディオエンジニアリングを組み合わせ、リアルに聞こえるだけでなく、リスナーを感動させる音声を作成する。超低遅延レンダリング、74言語のサポート、ワンクリックでノイズ除去を行うWUNDER BUTTONにより、VoiceWunderは最大の効率と品質を提供する。

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VOIS

VOISは、高忠実度の「ボイスフィルター」として機能する革新的なオーディオツールであり、楽器をリアルな声に、またはボーカルを楽器に即座に変換する。Pro ToolsでのARAサポートにより、ピッチ、タイミング、感情など、元のパフォーマンスの独自のニュアンスを維持しながら、サウンドのキャラクターを完全に再形成する。

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Vovious

Voviousは、最新の処理アルゴリズムに基づいた自然な響きのボーカルチューニングプラグインだ。ノートの色は正しいピッチからのずれを示す。

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ARA(Audio Random Access)により、VoviousはPro Toolsにシームレスに統合され、オーディオ信号を即座に受信し、さらなるアレンジの変更に適応する。複数のトラックを編集する場合、VoviousはPro Toolsが提供するトラックカラーを使用するため、どのノートがどのトラックに属しているかを常に把握できる。

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総務省、放送コンテンツ製作の適正化へ講習会を実施。弁護士による無料法律相談も https://jp.pronews.com/news/202512191809707892.html https://jp.pronews.com/news/202512191809707892.html 2025-12-19T09:09:51+00:00

経緯

総務省では、良質で魅力ある放送コンテンツの製作・流通を促進する等の観点から、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を策定・改訂するなど、所要の措置を講ずるとともに、関連する取組を推進している。

同取組の一環として、令和7年度前期に引き続き、放送事業者と番組製作会社の間などにおける放送コンテンツの製作取引に携わる関係者に対し、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」講習会及び無料法律相談会を後期においても開催するものだ。

「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」講習会及び無料法律相談会

概要

放送コンテンツの製作取引に関する法令解釈について、取適法、独禁法等の観点から、事業者が遵守しなければいけないポイント等について担当弁護士が説明する講習会を開催する。

併せて、毎回、講習会の前後30分に、弁護士による個別の無料法律相談会を開催する。個別に関係法令の解釈について確認したい方や製作取引について具体的な悩み・問題について相談に乗る。1件あたりの相談時間は最大30分。なお、相談内容に関する秘密は厳守する。

日程:基礎編 「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン、関連法令(取適法、独禁法、フリーランス法、著作権法等)の基礎」
令和8年1月16日(金)、同年1月29日(木)
日程:事例編 「発注内容等の明示、価格交渉・価格転嫁、著作権の帰属、取引内容の変更・やり直し」
令和8年2月10日(火)、同年2月27日(金)
開催方法 オンライン形式(Zoom)
申込方法 専用フォームより必要事項を入力・選択の上、申し込む。
ホットライン 弁護士への放送コンテンツの製作取引に関する無料法律相談は、講習会以外に「放送コンテンツ製作取引・法律相談ホットライン」ウェブサイト内からも申し込み可能。
受付期間:令和7年4月9日(水)~令和8年3月19日(木)
※上記「相談フォーム」より必要事項を入力・選択することで申し込みが可能となる。
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ライカ、SLシステムとQ3向けファームウェア4.0.0公開。AF高速化、全面的にUI刷新 https://jp.pronews.com/news/202512191730707853.html https://jp.pronews.com/news/202512191730707853.html 2025-12-19T08:30:37+00:00
これらのファームウェアアップデートは、各カメラの主要な領域における性能を大きく向上させ、写真・動画撮影の両面で、より高精度かつ高速で直感的な撮影体験を可能にする。ライカSLシステム向けのファームウェア 4.0.0 は「ライカSL3」および「ライカSL3-S」の性能を大幅に高め、数多くの重要なメリットをもたらすとしている。

ハイブリッドオートフォーカスはさらに高速に反応し、人や動物の認識精度も大きく向上している。システム全体の動作速度が最適化され、「ライカSL3」では新たにマルチショットモードが追加された。これにより、最大2億4,000万画素の撮影が可能になる。加えて、「ライカSL3」および「ライカSL3-S」がAdobe Frame.ioに直接接続できるようになり、プロフェッショナルなワークフローがシームレスにつながる。

また、「ライカQ3」シリーズのカメラもファームウェア 4.0.0による大きな恩恵を受けている。「ライカSL3」の高く評価されているインターフェースに着想を得て、ユーザーインターフェースが全面的に刷新された。新しいユーザーインターフェースは、再デザインされたアイコン、最適化された構造、より高速なナビゲーション、そして向上したタッチ操作性を備えている。

さらに、オートフォーカスや設定可能なLeica Looksと組み合わせることで、これまで以上にパーソナルで直感的な撮影体験が実現するとしている。

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Viltrox、最高峰「LAB」シリーズにAF 35mm F1.2 Zを発売。超高解像力を追求、高精細な描写力 https://jp.pronews.com/news/202512191614707832.html https://jp.pronews.com/news/202512191614707832.html 2025-12-19T07:14:38+00:00
Viltrox AF 35mm F1.2 LAB は、フラッグシップモデルをも凌駕する超高解像力を追求し、画質を革命的に飛躍させる新時代を切り開く。高画素撮影にも対応できるよう、細部まで妥協のない光学設計を採用。かつてない高精細な描写力で、より高い解像度を求めるすべての方のニーズを満たすという。

Viltrox のレンズラインアップの中でも頂点に君臨する「LAB シリーズ」。その中でも Viltrox AF 35mm F1.2 LAB Z は、ブランドの象徴とも言える製品だとであり、同クラスのどのレンズと比較しても、堂々と勝負できる圧倒的な実力を誇るとしている。

LABシリーズとは?

LABシリーズはViltroxブランドの最高級ラインであり、高画質・高規格が特徴だ。市場にある他の製品と比べても、LABシリーズのレンズ仕様はPROシリーズを上回る、より高いレベルの存在である。今回のViltrox AF 35mm F1.2の登場により、ViltroxのLABシリーズは、プロフェッショナルフォトグラファーや映像クリエイターにとって、さらなる創造の可能性を広げる存在として注目されている。

特徴

EDレンズ5枚、高屈折率レンズ3枚非球面レンズ2枚を含む10群15枚の構成により、焦点範囲全体にわたって中心から端まで鮮明さを確保し開放絞りでも細かい質感の描写を可能にすることで、切り取った画像でも細部まで画質を保持しユーザーの撮影の幅を広げる。

Viltroxが独自開発したHyper VCM モーターを搭載し、従来のSTMモーターと比較して150% 高速なフォーカス速度とより正確な絞り精度を実現することで、撮影機会を的確に捉える。

大口径絞りF1.2と11 枚羽根の絞りにより、よりきれいな柔らかく美しい円形のボケで、低光量の暗所の撮影でも優れた品質が得られる。最短撮影距離 0.34m、最大倍率 0.17 倍で無限遠からクローズアップまで、鮮明で優れた画を提供する。

レンズ側面には2つの切り替えレバー、2つのカスタムFnボタン、2つのリング、ディスプレイが搭載され、ユーザーの撮影スタイルに応じた細かい調整が可能。レンズボディはレンズ最前面を含め、防塵防滴仕様になっており、幅広い撮影環境で使用可能だ。

Bluetoothでアプリと接続し、Fnボタンの設定や起動時レンズディスプレイに表示する画像・テキストも設定できる。

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レンズ構成とMTF図

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レンズ構成
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MTF図

作例

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色収差を効果的に補正。周辺光量低下や歪曲収差を抑え、ポートレート、風景、静物撮影に最適な性能を発揮する
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美しい円形のボケ

レンズ仕様

対応マウント ニコンZマウント
焦点距離 35mm
フォーカスモード AF(オートフォーカス)
フォーカス機構 インナーフォーカス
レンズ構成 10群15枚(EDレンズ5枚、高屈折率レンズ3枚、非球面レンズ2枚)
絞り羽根 11枚
対応撮像画面サイズ フルサイズ
絞り範囲 F1.2-F16
最短撮影距離 0.34m
フィルター径 Φ77mm
サイズ Φ89.2mm×123.5mm(マウント部除く)
付属品 レンズキャップ、リアキャップ、フ-ド、収納袋
質量 約970g
メーカー保証 1年間(自然故障が対象)
※合焦速度や精度などは、カメラ本体のAF性能に依存する。
また、すべての撮影機能や対応機材が使用できることを保証するものではない。


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豊作の年、2025年のシネマカメラを総括する──価格帯再編と多様化する価値軸 Vol.01 [PRONEWS AWARD 2025] https://jp.pronews.com/special/202512191548704654.html https://jp.pronews.com/special/202512191548704654.html 2025-12-19T06:48:17+00:00 最大の焦点は、ソニー、キヤノン、ニコンによる「50万円台以下」の市場をめぐる三つ巴の展開だ。長らくソニー「FX3」の独壇場だったこの領域に他社が本格参入したことで、市場はかつてない活性化を見せている。まずは、ノミネート対象となるカメラをピックアップして紹介していこう。

エントリー価格帯の再編が示した、2025年シネマカメラ市場の転換点

ソニー「FX2」は、徹底したハイブリッド志向を特徴とするモデルである。動画機でありながらメカシャッターと可動式EVFを搭載し、静止画撮影にも配慮した設計がなされている。希望小売価格:税込416,900円という価格設定は、ドキュメンタリーなど写真と動画の両立を求められる現場の実情を的確に捉えたものと言えるだろう。
スチル撮影を主とするカメラマンが動画領域へ踏み出す際の現実的な選択肢となる一方で、「FX3a」の投入とあわせ、この価格帯におけるソニーの製品ラインアップの厚みを強く印象づけた。設計思想と価格戦略を高い次元で両立させた本機は、エントリークラスのシネマカメラ市場における再編を象徴する存在であった。

対するキヤノン「EOS C50」は、CINEMA EOSのエントリーモデルという位置付けながら、上位機譲りの撮影思想を随所に受け継いだモデルである。 中でも注目すべきは、ついに実装された7Kオープンゲート収録だ。センサー全域を読み出すことで、編集時の再フレーミング自由度を大きく高め、縦型動画を含む多様な出力要件に柔軟に対応できる点は、現代的な制作環境において大きな強みとなる。
また、小型軽量な筐体により、ジンバル運用やサブカメラ用途にも適しており、「EOS C80」や「EOS C400」といった上位機との併用を前提としたシステム構築にも無理がない。価格帯を踏まえたとき、撮影からポストプロダクションまでを見据えた実運用バランスの良さが際立つ一台と言えるだろう。
上位機の思想を無理なくエントリークラスに落とし込み、実制作に即した基準を提示した点で、本機は2025年のシネマカメラ市場を象徴する存在であった。

ソニー「FX2」
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キヤノン「EOS C50」
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そして大きな話題を集めたのが、ニコン「ZR」である。IBC 2025に合わせた発表は、映像制作者の間で大きな関心を呼んだ。Z6III相当のセンサーや最新のAF性能をベースに、内部RAW収録や32bitフロート録音への対応など、これまで上位機に限られていた機能を取り込んだ構成で、公式ストア価格299,200円(税込)を実現。この価格帯における設計の方向性を示している。
一方で、完成度や運用実績については今後の検証を待つ段階にある。しかし、現時点での完成形を示すのではなく、「今後のシネマカメラはどう進化していくのか」という視点を市場に提示した点において、本機は2025年のシネマカメラ市場を象徴する存在であった。

パナソニック「LUMIX S1II」シリーズは、新採用の部分積層型CMOSセンサーと最新エンジンにより、「動画と静止画のハイブリッド」として極めて高いバランスを実現したモデルだ。特筆すべきは、センサー全域を使った6K30P(3:2)と5.1K60P(3:2)動画記録である。これは編集時の自由度を重視する制作において、大きなアドバンテージとなる。また、ダイナミックレンジブーストON時に15ストップを確保できる点も、映像表現の幅を支える重要な要素だ。その突出した性能を通じて、編集の自由度を求めるクリエイターのニーズに明確に応えた一台と言える。

ニコン「ZR」
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パナソニック「LUMIX S1II」
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フォーマット拡張が切り拓く、新たな制作の選択肢

ボックスカメラの分野では、Blackmagic Design「PYXIS 12K」が存在感を放っていた。同社の上位機種「URSA Mini Pro 12K」と同等の12Kセンサーを搭載しつつ、税込832,800円という極めて戦略的な価格設定を実現した点が最大の評価点である。
オープンゲート的運用を可能とする広い読み出し機構により、制作現場で要求される多様な解像度・アスペクト比への柔軟な対応が可能となり、高解像度シネマ制作の入り口を大きく広げた製品として注目に値する。従来ハイエンド機でしか実現困難だった12Kワークフローを、コスト効率と運用性の両面で現実的な次元へ押し上げた意義は、2025年のシネマカメラ市場における明確な価値となった。

また、ついに発売した富士フイルム「GFX ETERNA 55」も忘れてはならない。中判センサーというフォーマット自体の魅力に加え、映画業界に貢献してきたフィルムメーカーとしての知見がシネマ市場でどう活かされるのか、今後の展開に期待が高まる。放送用ドキュメンタリーや特定のシネマティックな現場において、独自の地位を確立する可能性を感じさせる。本機は中判センサーならではの質感表現を武器に、既存のフルフレーム競争とは異なる価値軸を提示した象徴的な存在であった。

Blackmagic Design「PYXIS 12K」
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富士フイルム「GFX ETERNA 55」
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ハイエンドと特殊撮影領域に見る、表現力の深化

ハイエンド領域では、ARRI「ALEXA 35 Xtreme」が注目に値する。ARRIの主力ラインの伝統を継承しつつ、高フレームレート撮影領域での性能拡張を実現したモデルとして評価に値する。最大660fpsのハイスピード撮影といった高フレームレート性能は、モーション表現の幅を劇的に拡大し、広告・MV・アクション映像制作における創造力の拡張を可能にした。
さらに高画質・低データレートの新コーデック「ARRICORE」によってデータ効率を高めながらもARRIならではの高画質・高忠実度の表現力を維持している点は、プロ向けシネマカメラとしての完成度の高さを改めて証明した。本機は成熟したプラットフォームを基盤に表現領域を拡張し、ハイエンドシネマ制作の進化を象徴する存在であった。

さらにRED「V-RAPTOR XE」も注目の新製品だ。RED「V-RAPTOR XE」は、DSMC3プラットフォームにおけるバランスの良いスペックと運用性の刷新を象徴するモデルとして選出された。8K VVグローバルシャッターセンサーの搭載は、光学的な動態表現やポストワークでのリフレーミング自由度を高め、撮影・編集の両局面で高い柔軟性を提供する。軽量なボディ構造によりジンバルや空撮、移動撮影など多様な現場への適用範囲が広がったことは、REDのフラッグシップ機が持つ高性能をより現場の実務へ落とし込んだ成果といえる。
加えてCanon RFおよびNikon Zマウント対応により、レンズ資産の活用という面でも汎用性が拡大し、2025年のプロダクション現場における選択肢の幅を大きく広げた存在として高評価に値する。本機はフラッグシップ性能を現場へと再定義し、機動力と高性能の両立を象徴する存在であった。

ARRI「ALEXA 35 Xtreme」
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RED「V-RAPTOR XE」
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特殊撮影分野で話題のソニー「VENICEエクステンションシステムMini」は、シネマカメラ新製品ではなくカメラヘッドを大幅に軽量・コンパクト化したVENICE 2用カメラヘッド延長システムだが、VENICE 2の8Kセンサーを内蔵しつつ、従来比70%もの小型化に成功した技術力が光る。標準Eマウントならリンゴほどのサイズで、見た目は強化されたアクションカメラのようだ。現場視点で改良された着脱式ケーブルにより、狭小空間へのリギング自由度が格段に向上している。本機はVENICEの画質を極限まで現場に近づけ、特殊撮影領域における自由度の拡張を象徴する存在であった。

少々異色の存在として、PIXBOOM「Spark」も興味深い製品だった。従来は高価な専用機に依存してきたハイスピード撮影のワークフローを、より現実的でアクセスしやすい選択肢へと引き寄せた点が評価できる。最大4K 1,000fps、2K 1,800fpsの性能により、微細な動きや時間操作表現を、低コストかつ柔軟な運用で実現した。S35グローバルシャッターセンサーは歪みやローリングシャッターの影響を抑え、高速撮影時の画質の純度を高めている。
さらに、最大2.4TBの内蔵SSDを標準装備し、長時間・高フレームレート収録にも対応。ハイスピード撮影特有の運用やポスト処理の負担を軽減し、制作現場での実用性を高めた。Sparkは、演出上の重要性に対して導入障壁が高かったハイスピード撮影に、現実的な解を示した存在と言える。

ソニー「VENICEエクステンションシステムMini」
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PIXBOOM「Spark」
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総じて2025年は、エントリーからハイエンド、そして特殊機材に至るまで、各社がユーザーのニーズを精緻に分析し、驚きのある製品を投入してきた一年であったと言えるだろう。

以上がカメラ部門のノミネート製品となる。

■PRONEWS AWARD 2025 シネマカメラ部門 ファイナリスト

  • ソニー「FX2」
  • キヤノン「EOS C50」
  • ニコン「ZR」
  • パナソニック「LUMIX S1II」
  • Blackmagic Design「PYXIS 12K」
  • 富士フイルム「GFX ETERNA 55」
  • ARRI「ALEXA 35 Xtreme」
  • RED「V-RAPTOR XE」
  • ソニー「VENICEエクステンションシステムMini」
  • PIXBOOM「Spark」

以上の製品はいずれも、2025年のシネマカメラ市場において明確な個性と役割を持ち、制作現場に新たな選択肢を提示した存在である。 本部門では、こうした多様な価値を前提とした上で、最終的な評価を行った。

PRONEWS AWARD 2025 シネマカメラ部門 ゴールド賞

キヤノン「EOS C50」

PRONEWS AWARD 2025 シネマカメラ部門 ゴールド賞に選定したのは、キヤノン「EOS C50」である。ノミネート製品はいずれも明確な個性と価値を備えており、最後まで判断は容易ではなかった。その中で、実制作の現場において最も安定して成果を出せる完成度を示した点が、最終的な決め手となった。

EOS C50は、7Kオープンゲート収録をはじめとする撮影機能を、小型軽量な筐体に無理なくまとめ上げ、ジンバル運用からメインカメラ用途まで幅広く対応する汎用性を備えている。先進性や尖った個性を打ち出した製品が並ぶ中で、本機は価格帯・性能・運用性のバランスを高い次元で成立させ、実運用における確実性が際立っていた。「現場での実効性」と「制作フロー全体への影響力」という本部門の評価基準を最も安定して満たした一台として、編集部としてゴールド賞に選定した。

PRONEWS AWARD 2025 シネマカメラ部門 シルバー賞

富士フイルム「GFX ETERNA 55」

一方で、完成度や汎用性という観点ではゴールド賞に一歩及ばないものの、独自の価値軸や将来性において強い印象を残した製品も存在する。

PRONEWS AWARD 2025 シネマカメラ部門 シルバー賞には、富士フイルム「GFX ETERNA 55」を選出した。

中判フォーマット特有のレンズ選択やシステム成熟度には今後の拡充が求められる部分もある。しかし、それを踏まえてもなお、中判ならではの描写力とトーン表現がもたらす映像価値は明確で、フルフレーム競争とは異なる次元の選択肢を示した点を高く評価した。

完成度や汎用性という観点ではゴールド賞に一歩譲るものの、表現そのものに新たな基準を持ち込んだ点は特筆に値する。効率よりも映像美を重視する現場において、代替の効かない価値を提示した挑戦として、シルバー賞にふさわしい一台である。

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七工匠 7Artisans、「Floral Bloom」37mm/57mm発売。周辺が流れる“バーストボケ”で独自の世界観を表現 https://jp.pronews.com/news/202512191541707803.html https://jp.pronews.com/news/202512191541707803.html 2025-12-19T06:41:33+00:00
七工匠 7Artisans Floral Bloomシリーズは、画面中央部をシャープに保ちながら、周辺部が放射状に流れる独自の描写(バーストボケ)を特徴とする開放T値2.9のシネマレンズだ。フォーカス位置やT値に応じてボケの表情が変化し、回想・加速・ホラー・幻覚表現など、物語性を強調したいシーンで印象的な映像効果を取り入れることが可能だ。

レンズの鏡筒には目を引くパープルカラーを採用。撮影者の想像力と演出で表現の幅が広がるクリエイティブなレンズだ。

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特長

周辺部が流れるバーストボケ表現

Floral Bloomシリーズは、背景の光やハイライトが放射状に伸びることで、視線を中心へ導く印象的な描写を生み出す。霞みや光跡、歪みを伴うような画づくりが可能で、日常シーンのなかにも非日常的な緊張感や速度感を演出できる。効果は撮影時に確認できるため、編集工程に依存せず、現場で直感的に撮影が可能だ。映像作品はもちろん、世界観のあるポートレート撮影などの静止画でも豊かな表現を提供する。

物語性のある演出に適した表現設計

フラッシュバック、タイムワープ、恐怖演出、超自然現象の表現など、登場人物の内面や緊張感を視覚的に強調したいシーンと相性の良い描写が得られる。MV、短編、広告映像などで、短いカットでも強い印象を残したい場面で活躍する。

フォーカス位置・T値によって変化するボケ表情

被写体距離(フォーカス位置)およびT値の設定により、ボケの形状や流れ方、放射状の広がりが変化する。開放付近では効果が強調され、絞り込むことで描写は穏やかになる。シーンの意図に合わせて、同一レンズでも表現の度合いを調整できる。

汎用性の高いレンズ設計

シネマレンズで一般的なギア規格0.8MODに対応しており、多くのフォーカスリング用アクセサリーと組み合わせて、撮影環境に応じた幅広い運用が可能だ。金属製のレンズ鏡筒は軽量でありながら耐久性に優れ、コンパクトなサイズでジンバルに搭載しても取り回しがしやすく、様々な現場で活躍する。マウントアダプターを併用することで、ミラーレス機でも使用できる。

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マウントアダプターとのセットも同時発売する。マウントアダプターを併用することで、E/Z/RF/Lマウントのミラーレス機でも使用できる。

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作例
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作例
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作例

仕様

Floral Bloom 37mm T2.9 Art Bokeh

対応マウント PLマウント
対応撮像画面サイズ 35mmフルサイズ
焦点距離 37mm
レンズ構成 5群6枚(EDレンズ1枚、高屈折レンズ3枚)
フォーカス MF(マニュアルフォーカス)
絞り T2.9-T22
絞り羽根 9枚
最短撮影距離 0.35m
ピントリング回転角 300°
フィルター径 72mm
フロント径 76mm
サイズ 約Φ80×45mm(マウント部除く)
質量 約345g
付属品 前後キャップ

Floral Bloom 57mm T2.9 Art Bokeh

対応マウント PLマウント
対応撮像画面サイズ 35mmフルサイズ
焦点距離 57mm
レンズ構成 5群6枚(EDレンズ1枚、高屈折レンズ3枚)
フォーカス MF(マニュアルフォーカス)
絞り T2.9-T22
絞り羽根 10枚
最短撮影距離 0.5m
ピントリング回転角 300°
フィルター径 72mm
フロント径 76mm
サイズ 約Φ80×45mm(マウント部除く)
質量 約370g
付属品 前後キャップ
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アカデミー賞、2029年からYouTubeが世界独占配信権を獲得。複数年契約を締結 https://jp.pronews.com/news/202512191350707731.html https://jp.pronews.com/news/202512191350707731.html 2025-12-19T04:50:01+00:00
レッドカーペットの模様、舞台裏コンテンツ、ガバナーズ・ボールへのアクセスなどを含むアカデミー賞授賞式は、YouTubeを通じて世界中の20億人以上の視聴者に無料でライブ配信されるほか、米国ではYouTube TV加入者も視聴可能となる。YouTubeは、クローズドキャプションや多言語音声トラックなどの機能を通じて、アカデミー賞をアカデミーの拡大するグローバル視聴者に届ける支援を行うとしている。

同提携により、映画ファンはアカデミー主催のその他のイベントやプログラムにも、オスカー公式YouTubeチャンネル限定で世界中からアクセスできるようになる。対象となるのは、ガバナーズ・アワード、アカデミー賞ノミネート発表、ノミネート者昼食会、学生アカデミー賞、科学技術賞、アカデミー会員や映画製作者へのインタビュー、映画教育プログラム、ポッドキャストなど。

さらに、この包括的パートナーシップを通じて、Google Arts & Cultureイニシアチブはアカデミー博物館の選定展示・プログラムへのデジタルアクセス提供を支援し、アカデミーコレクション(世界最大の映画関連コレクションで5,200万点以上を所蔵)のデジタル化を推進する。これは映画ファンにとって真のハブとなり、世界中からアクセスできるようになるという。

アカデミーCEOのビル・クレイマー氏とアカデミー会長のリネット・ハウエル・テイラー氏は、次のようにコメントしている。

アカデミー賞および年間を通じたアカデミーのプログラムの新たな拠点として、YouTubeと多面的なグローバルパートナーシップを結ぶことを大変嬉しく思います。

アカデミーは国際的な組織であり、この提携によりアカデミーの活動を可能な限り世界中の幅広い視聴者に届けることが可能となります。これはアカデミー会員と映画コミュニティにとって有益なことです。この協業により、YouTubeの広大なリーチを活用し、アカデミー賞をはじめとするアカデミーのプログラムに革新的な関与の機会を創出しつつ、我々の伝統を尊重します。これによって、映画を称え、次世代の映画製作者を鼓舞し、映画史へのアクセスを前例のないグローバル規模で提供することが可能となります。

YouTubeのCEO、ニール・モーハン氏は、次のようにコメントしている。

モーハン氏:アカデミー賞は、優れたストーリーテリングと芸術性を称える、私たちの重要な文化機関の一つです。

アカデミーと提携し、この芸術とエンターテインメントの祭典を世界中の視聴者に届けることで、アカデミー賞の由緒ある伝統を守りつつ、新たな創造性と映画愛好家の世代を育むことでしょう。

アカデミー賞の国内パートナーシップは、2028年の第100回アカデミー賞までディズニーABCとの契約が継続される。同様に、国際パートナーシップもディズニー傘下のブエナビスタ・インターナショナルとの契約が継続される。

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ニコン、「NX Studio」Ver.1.10.1公開。HLG画像での強制終了などを修正 https://jp.pronews.com/news/202512191016707516.html https://jp.pronews.com/news/202512191016707516.html 2025-12-19T01:16:37+00:00 同社ウェブサイトのダウンロードセンターからダウンロードできる。

更新内容は以下の通り。

  • HLG画像を含むフォルダーを開くとNX Studioが強制終了する場合がある現象を修正
    ※HLG画像選択時に[Imaging Codec 01 の確認]ダイアログが表示される場合、必ず最新版のインストールが必要
  • 画像の回転操作を行った後、他の画像で回転や画像の調整ができなくなる場合がある現象を修正
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TASCAM、32bit対応フロートレコーダー「FR-AV4」V1.10公開。オートミキサー機能を追加 https://jp.pronews.com/news/202512190951707528.html https://jp.pronews.com/news/202512190951707528.html 2025-12-19T00:51:10+00:00 同製品のサポートページよりダウンロードできる。

本アップデートでは、会議やイベント、パネルディスカッションなど、複数マイクを使用する収録環境に適した高度なオートミキサー機能が追加される。

FR-AV4 ファームウェア V1.10詳細

  • AUTO MIXER機能を追加。詳細は、取扱説明書の「17-1. FR-AV4 V1.10について」を参照
  • USBバッテリー使用時に乾電池が空の場合、電池アイコンを消灯する仕様に変更
  • 32-bit float設定時において、トラックレベルメーターが0dBを超えて表示されない問題を修正
  • MS DECODE設定時に、M/Sバランスが正常でない不具合を修正
  • その他動作の安定性を向上
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世界初8K360°全景ドローン「Antigravity A1」CEO&開発者に単独インタビュー Vol.46 [染瀬直人のVRカメラ最前線] https://jp.pronews.com/column/202512182000706790.html https://jp.pronews.com/column/202512182000706790.html 2025-12-18T11:00:11+00:00
Antigravity CEO Michael Shabun(マイケル・シャブン)氏
Antigravity開発責任者 Newey 纽维(ニューウェイ)氏

Antigravity社とそのビジョンについて

――会社設立の背景とAntigravity社のミッションや未来のビジョンを教えてください。

Michael氏:

ドローン業界は、いま壁にぶつかっています。スペックは年々向上する一方、ユーザー体験は変わっていません。多くのドローンがより高く、より長く飛べるようになりましたが、一般ユーザーが実際に感じている課題には対応できていないのです。情熱的なエンジニアと飛行愛好家たちがAntigravityに集まり、伝統を打ち破り、飛行方法を再定義することを望んでいます。この自由な飛行に対する願望が、われわれのチームのイノベーションにインスピレーションを引き起こし、A1を開発するきっかけとなりました。Antigravityが最終的に実現したいビジョンは、ドローンのオペレーションを少数者の特権から、誰もが簡単に体験できる新しい方法へと変えることにより、飛行の可能性を再定義することです。

――社名の由来を教えてください。

Michael氏:

Antigravity(アンチグラビティ)は直訳すると「反重力」の意味で、平凡の対極にある無限の可能性を意味します。360°全景ドローン自体が伝統を打ち破って業界を変える象徴です。
製品は反重力状態で空を舞う飛行体験を提供します。「反逆」というブランド精神の共通認識を確立した先に、この名称は必然的に生まれました。

――会社の業務体系について、教えてください。

Michael氏:

AntigravityはInsta360と第三者との共同開発によって誕生した新ドローンブランドです。当社は専門的な研究開発、マーケティング、サービスチームなどを擁しており、同時にInsta360も多方面からAntigravityをサポートしています。

――今後の数年間で、Antigravityはどのようなポジション・役割を果たすと考えていますか?

Michael氏:

360°全景ドローンは全く新しい市場カテゴリーを切り開きました。従来のドローンと360°全景ドローンの関係は、電気自動車と従来の自動車の関係に例えることができます。これは、人間の直感に最も合致したコンシューマー向けドローンです。パノラマレンズとコントローラーの体感操作により、手が方向を示し、視線が焦点となるため、複雑なカメラワークは不要です。ゴーグルと組み合わせることで、鳥が空を飛ぶように空間全体、世界全体を感じ取ることができます。従来のドローンは「撮影愛好家のツール」に過ぎませんでしたが、全景ドローンはより多くの人々にドローンを身近なものにします。撮影のためだけでなく、飛行そのものの楽しさや、空から風景を探索する喜びのためにも魅力的です。これは多くの人々の旅行スタイルを変える製品になるでしょう。ドローン業界の発展における新たな方向性とトレンドに違いありません。

――グローバル展開という観点で、日本市場、アジア市場、欧米市場のそれぞれに対してどのようなアプローチを想定していますか?

Michael氏:

Antigravityの理念はオープンで協力を重視しています。この8月から世界中のユーザーと共に製品体験を磨き上げてきました。今後も各地域の市場特性に基づき、現地の販売代理店やマーケティングパートナーと連携し、360°全景ドローンのさらなる可能性を共に探求していきます。同時に、主要市場にオフィスを設立し、現地雇用を促進するとともに、地域文化を主軸とした市場戦略を展開していきたいと考えています。

――社内の製品開発チーム・技術チームの体制やカルチャーを教えてください。どんな専門スキルや価値観が大切にされていますか?

Newey氏:

当社の研究開発チームは、能力と経験の蓄積があると共に、活力とモチベーションを備えたチームです。問題に対して「有責無界」であり、問題解決の能力と責任感を持つことが重要視されています。

*「有責無界(ゆうせきむかい)」とは、中国の主にIT企業などで、組織文化や人材育成の理念として用いられる行動規範であり、責任の主体を明確にしつつ、部署や地位などの従来の組織の境界をなくし、共同で問題を解決するという意味。

Antigravity A1における技術・設計・開発のストーリー

――「Antigravity A1」を開発した最も大きな動機と、実現したかったビジョンは何でしょうか?「世界初のオールインワン8K 360°ドローン」というコンセプトは、どのような課題を解決するために生まれたのでしょうか?

Newey氏:

Antigravityの誕生のインスピレーションは、弊社内のドローン愛好家、クリエイター、エンジニアたちの実際のニーズから来ています。彼らは、コンシューマー向けドローンがすでに成熟し、ここ数年もパラメーターはアップグレードされてはいるものの、実際の多くのシーンでユーザーの問題が解決されていないことに気づきました。それらはすべて、シンプルで本能的な人類が自由に空を飛びたいという原始的な願望につながります。この希求が、チームに飛行の意味を考え直させ、飛行方法を再定義する製品を作り出し、天空の探索と映像の物語を本当に手に入れられるところまで持っていきました。
「世界初の8K 360°全景ドローン」というコンセプトが生まれたのは、主にドローンに関する不安を解決したかったからです。操作面の困難や撮影の構図と編集の難しさ、飛行中は完全に没入することができないなどの問題です。「360°」の利点は主に2つあります。体験面では、ユーザーは鳥のように飛行中に自由に周囲を見回すことができます。制作面では、360°カメラが一度に全角度を撮影できるため、ユーザーは飛行中に正確な構図を考える必要がなく、撮影後に自由に視点を調整でき、複数のアングルやアスペクト比の選択が可能な後編集を実現します。これは創作プロセスを大幅に簡素化し、撮影効率と創作の自由度を向上させます。8Kは創作の品質を守るためです。

――市場に存在する他の360°カメラやFPVドローンと比較して、「AntiGravity A1」の最大の競争優位性はどこにあるとお考えですか?

Newey氏:

A1は伝統的なFPVドローンではありません。主な違いは視線の自由度、操作体験、ターゲットユーザー、機能特性にあります。
A1は視線と飛行方向を完全に分離することができ、右に飛んでいる時に左を見たり、上昇しながら下を見たりできます。まるで自分が空中にいるかのように自由に見回すことができるので、それは車を運転するときに自由に周囲を見回せるのと同じです。しかし、FPVドローンの視野は通常、飛行経路とジンバルの視点内に限定されており、他の方向を見るには、飛行経路とジンバルの角度を調整する必要があり、視点は飛行方向に制限されます。「操作体験」の面から見て、A1はフリーモーションを採用しており、どこで飛ぶかを指し示すことで、すぐに飛行を開始して、その方法を学ぶことができます。
ターゲットユーザーと製品の特性も違います。A1は、新しい体験を試みるすべてのユーザー向けに制作されており、初心者でもすぐに始めることができます。より多くの人が飛行の楽しさとパノラマ撮影体験を簡単に楽しめるように設計されているのです。そもそも、FPVドローンのターゲットユーザーは、「没入感のある高速の飛行体験」を求める人、「ダイナミックな映像撮影」をしたいクリエイター、「レースやアクロバティックな飛行」に挑戦したいホビー層、そして「ドローンの操縦技術そのもの」を楽しみたいガチ勢(パイロット)など、主に「体験」と「技術」に重点を置く層です。FPVドローンは、極限のスポーツの撮影(自転車、スケートボード、サーフィンなど)や競技飛行、クロスファイターレースなどによく使われ、動きとスピード感を強調し、観客に臨場感あふれる一人称視点の飛行体験をもたらします。
一方、A1は旅行、アウトドア、日常記録などのシーンに適しており、ユーザーに新しい方法で世界を感じさせます。
総じて言えば、A1は全く新しいカテゴリーに含まれるもので、FPVドローンの没入感ある飛行体験、伝統的な空撮ドローンの撮影体験、そして全景ドローンの「まずは飛ばして、構図はあとから決める」という利点を兼ね備えているのです。

――8K 360°カメラの採用の中で、ステッチや「A1におけるInvisible Drone技術(ドローン本体やプロペラの消去)」について、特に工夫した点や、Insta360との連携について詳しくお聞かせください。

Newey氏:

ドローン本体やプロペラ消去の技術は、Insta360のアルゴリズムチーム、Antigravityの構造・組み込みシステム開発・ソフトウェアチームが共同で協力して完成したものです。
「A1におけるInvisible Drone」技術(ドローン本体やプロペラの消去)は、実はInsta360のXシリーズの「見えない自撮り棒」技術と同じ源流にあり、Arashi Visionのアルゴリズムチームが初期の段階にそのノウハウを提供しました。
次にA1の構造についてですが、通常のパノラマカメラでは、魚眼レンズと本体の位置関係は固定されています。しかし、A1はより複雑です。
(1)雲台は防振ボールを介して機体と柔軟に接続されています。
(2)ブレードは飛行中に揺れます。
(3)異なる地域(熱帯、高原、夏季、冬季)においては、上記の2点に差異があります。
このため、魚眼レンズと機体の位置関係は、飛行姿勢、地点、気候の違いによって動的に変化します。Antigravityの構造エンジニアは、多数の実証実験を実施し、見えない自撮り棒アルゴリズムをベースに、この部分の適応を行いました。
同時に、A1の設計チームとゴーグル設計チームは共同で開発を行う必要がありました。例えば、リアルタイムプレビュー時やゴーグルで素材を再生する際には、先に言及した動的なアルゴリズムに適合する必要があるからです。

――249gという軽量化の達成にあたって、設計・素材・バッテリーなどで特に工夫したポイントを教えてください。

Newey氏:

まず、構造設計とプロセスの最適化が挙げられます。本体の50以上の構造部品をそれぞれ重量分析し、個別に軽量化案を評価、検証しました。積層設計の改善と放熱構造の最適化により、熱持続時間が前世代比で約2倍向上する一方、放熱構造の金属部品を約8g軽量化しました。オーディオ関連構造を簡素化し、金型部品を5点削減し、コスト削減を達成すると同時に約3gの軽量化を実現。バッテリー設計を最適化し、バッテリーケースを薄型化するとともに金属ロック機構を廃止し、3g以上の軽量化を達成しました。
次に、最小限の実行可能システム設計については、「全景ドローンの最小システム」を中核コンセプトとし、クアッドコプター、ステルス処理が必要な2つのパノラマレンズ、バッテリー、メインボードの基本構成を確定し、冗長設計を回避。魚眼レンズ保護のため自動着陸装置を採用し、複雑な回転・昇降機構を代替します。レンズの安全性を確保しつつ構造の複雑さと重量を低減しました。
また、249gの軽量で折りたたみ可能なデザインを採用し、フラグシップ性能を手のひらサイズに凝縮し、携帯性を向上させると同時に軽量化の要求を満たしました。
バッテリーの最適化については、標準バッテリーを設計することにより、ドローンの使用時の重量を249g以内に維持し、欧州のC0カテゴリー(登録不要要件)に適合させました。また、バッテリーケースを薄型化し、金属製のロックを廃止することで、バッテリーケースの設計を最適化して、さらなる軽量化を実現しました。

――A1の耐風性について、考慮した点はどこでしょうか?

Newey氏:

A1は10.7m/sの風に対する耐久性を備えており、「疾風」(風速8.0~10.8m/s未満)の条件下でも安定した飛行が可能です。例えば、海岸における中強度の風の環境下でも、撮影した映像は安定かつ滑らかです。FlowState手ブレ補正により、風の強い状況でも滑らかで安定した映像を実現しますから、ほとんどのユーザーの撮影ニーズに対応することができます。

――「Vision Goggles(Visionゴーグル)」と「Gripコントローラー」によるヘッドセット・ファーストの直感的な操作体験は、従来のドローンの操作と比べてどのような点が革新的ですか?「Point-to-Fly(指差し飛行)」や「FreeMotion Mode」は、初心者パイロットの習熟度をどのように変えるものと期待していますか?

Newey氏:

従来のドローンやFPVドローンとは異なり、全景ドローンのA1は「見るロジック」を覆します。従来はドローンの飛行方向しか見ることができませんでしたが、A1では前方に飛びながらも、鳥のように他の方向も見ることができます。グリップコントローラーとFreeMotion Modeにより、誰でも1分以内に飛行を習得することができます。グリップコントローラーを活用し、任意の方向を指してトリガーを引けば、ドローンがそこに向かって飛びます。人間の本能に合った動作により、習得が必要な操作桿の指令を代用する訳です。実際に「指し示したところに飛ぶ」ことで、ユーザーは自然にコントロール感を身につけ飛行の自信を得ることができます。一切の学習コストがありません。ユーザーの意識を「どうやって飛ぶか」から「どこへ探索に向かうか」にシフトさせ、完全に「今」に没頭させることで、景色を見たり好奇心を満たすことに集中させます。

――A1の本体やVisionゴーグル、Gripコントローラーのデザインは、どのような哲学に基づいて設計されていますか? 機能性と操作性・デザインのバランスについてお聞かせください。

Newey氏:

A1本体、Visionゴーグル、Gripコントローラーの設計の中核の理念はすべて「ユーザー体験」です。あなたのご指摘の通り、機能、操作、デザインにおいては多くのトレードオフがあります。例えば、あるモジュールを追加すると、重量が249gを超える可能性があり、重量を制限すればバッテリー容量が足りなくなるなどです。ここ数年、私たちは多くのトレードオフが必要な瞬間に直面し、核心となる機能に焦点を当てる術を理解するようになりました。
Visionゴーグルは確かに特別です。従来のドローンでは、ユーザーはリモコンの小さな画面を見なければならず、視野がとても狭かった訳です。しかし、Visionゴーグルを使うと、ユーザーは現場にいるように感じ、受動的な存在から能動的な探索者に変わります。A1のゴーグルでは、ドローンが前方にしか進めない場合でも、ユーザーは360°を自由に見まわすことができます。飛行体験がもっと直感的で自然な体験になります。われわれの多くの同僚は飛行するときに「本当に自分が鳥になったような気がする」と言っています。
この効果を達成するために、R&Dチームは多大な努力を傾けました。例えば、業界をリードするパンケーキ光学構造とデュアル1インチMicro - OLED(2560×2560)ディスプレイを採用し、200インチの(仮想の)巨大スクリーンをフライトゴーグルに組み込むことで、HDR10+の衝撃的な視覚効果を実現することを可能にしました。この組み合わせは、広い視野を提供するだけでなく、画面の鮮明度と没入感を著しく向上させます。同時に、ユーザーの装着感も重視し、分割式バッテリー設計を採用しています。本体重量はわずか340gで、競合製品よりも大幅に軽量です。一部の競合製品のゴーグルは内蔵バッテリーを搭載しており、重量が500g近くあり、長時間の装着によりユーザーに不快感を与える可能性があります。
開発の際、チームはVR酔いという技術的な難関に直面しました。ユーザーがゴーグルを装着すると、ドローンの映像伝送に40〜150ミリ秒の遅延があるため、酔いを引き起こす可能性があったのです。この問題を解決するため、開発チームは業界をリードする革新的なRTW(Remote TimeWarp)フレーム挿入技術を搭載しました。AIアルゴリズムを使って、ユーザーの頭部動作を事前に予測し、画面フレームをスマートに補完することで、画面の流れをスムーズにします。また、低遅延映像伝送と組み合わせることで、酔いやバランス感覚の喪失を大幅に減らします。さらに、Visionゴーグルは、イマーシブモードやComfort viewモード(VR酔いを低減する)など2種類の視聴モードを提供しています。ユーザーは自身の適応度に合わせて、最も快適な視聴方法を選べます。
A1ではさらにVisionゴーグルに革新的なディスプレイを搭載しました。ドローンが撮影した映像を表面にリアルタイム表示でき、皆でドローンを飛ばす際に周囲の人が退屈してしまう問題を解決します。誰もが飛行の視点と楽しさを直感的に体感できるのです。A1と未接続時にはサブスクリーンにプリセットのアニメーション効果を表示することで、楽しさと独創性を高めます。

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――レンズ保護、格納式着陸装置などについても、説明していただけますか?

Newey氏:

A1は交換可能なレンズを搭載しており、パノラマレンズが衝突により傷が付いた場合、レンズを自分で交換することができ、面倒な修理を待つ必要はありません。飛行後、カメラレンズとビジュアルシステムのセンサーが汚損されていないかを確認し、必要に応じて、公式のガイドに従ってレンズまたはセンサーを清掃し、湿布やアルコール含有のクリーナーを使用しないようにして、液体の浸入によりショートするのを防いでください。収納式の着陸装置は起動時に自動的に展開するため、展開するスペースを予め確保する必要があります。起動中は手動操作を行わないでください。構造が損傷する恐れがあります。

――「Sky Path」や「Deep Track」といったAI機能は、映像制作のワークフローを、どのように効率化しますか?

Newey氏:

スカイパスではドローン操作という元々孤独な作業を、意味のある共有体験へと変えます。飛行経路を構築し、A1が自律的にナビゲートできるようにします。 Visionゴーグルを友人や家族に渡して、飛行のスリルを体験させてあげることが可能です。 一人の情熱を、皆で分かち合う喜びに変えます。友人や家族は、パイロットがドローンを飛ばしている間、待っている必要はありません。今や彼らも体験に参加できるのです。また、正確な飛行ルートを計画・保存し、ドローンが事前に設定された地点間をスムーズに移動できるため、高度なコンテンツ制作に最適です。
Deep Track(深度追跡)は、対象を選択することにより、A1が自動的に追跡して撮影する技術です。パノラマ撮影を採用しているため、撮影中に主体がずれても、後で欠損なく構図を調整することができ、主体が常に画面の中心に位置することを保証し、主体の位置変化による再撮影を減らし、撮影効率を向上させます。

――このように多くの技術が集中する中で、どのようにUX(ユーザー体験)を最優先に据えて、設計・仕様決定をしましたか?

Newey氏:

技術が複雑に絡み合う環境において、ユーザー体験を最優先に置くことは、本質的にユーザー中心のデザイン哲学を貫くことになります。仕様はユーザー体験の数値的表現に過ぎず、様々な技術もより優れた体験を実現するためのツールに過ぎないと考えます。デザインプロセスにおいてユーザー体験は目標であると同時に私たちの基準であり、実際にそれはあらゆる工程に貫かれています。そうして初めて、真にユーザーにとっての価値を創造する製品を最終的に提供できるものと考えています。

開発上の課題と安全性について

――最も技術的に困難だった点、または予期せぬ課題は何でしたか?

Newey氏:

ドローンのような非常に複雑な電子製品では、ほとんどすべての部分が技術的な難しさになっています。その中でも、画像伝送、バッテリー、飛行制御、障害物回避などの項目は、ドローンにとって特に重要です。これらの項目は飛行の安全と深く関係しており、性能や信頼性の要求水準は非常に高いものです。各部分を改良して、最終的にA1を完成させたことこそ、最大の挑戦だったと言えるでしょう。

――機体重量を249g未満に抑えた背景には、世界的な規制(EU C0クラスなど)への対応があると思いますが、その上で設計時に最も重視した安全対策は何でしょうか?障害物回避、ペイロード検知、帰還機能などの安全機能をどのように設計して、盛り込みましたか?

Newey氏:

多くの国や地域では、250g未満のドローンには、より緩やかな飛行要件が適用されるため、重量を249gに抑えることを選択しました。安全対策はドローン設計の最優先事項であり、障害物回避、帰還機能、飛行制御はいずれも重要な要素です。しかし、これは最も困難な課題でした。従来の249gドローンよりもレンズを1つ追加していることを考慮すると尚更です。軽量化設計は複雑なシステムエンジニアリングであり、性能を一切損なわずに249gを実現するために、エンジニア陣は多大な努力を払いました。

――A1をより多くのユーザーに普及させる上で、現在の技術的または市場的な課題は何ですか。特に、製品化にあたって、日本も含めた世界各国で異なるドローン法規制、安全基準、重量クラス、認証空域アクセス、ライセンス・飛行制限といった外部環境の変化をどう見ていますか?

Newey氏:

当社はドローンの規制への対応を非常に重視しており、専門チームが各国のドローン関連法規を研究し、法規に基づいて設計の制約を策定して製品開発を指導しています。各国の法規の違いに対しては、当社はドローンが所在する地域に応じて現地の国・地域の法規要件に適合させます。同時に、当社には飛行安全データベースがあり、その中の飛行禁止・制限区域に基づいてドローンの飛行を制約しています。また、各地の無人機を規制する行政部門の業務に積極的に協力し、最新の政策情報を把握します。各国の法規は絶えず更新・発展しており、最新の法規要件をいち早く満たす必要があり、作業量は非常に大きく、率直に言ってこれは当社にとって挑戦となっています。

――サステナビリティ・素材調達、リペアやメンテナンス体制など、製品のライフサイクル全体では、どのように社会的責任を捉えていますか?

Michael氏:

A1はレンズの交換が可能な新構造を採用しています。ユーザー自身でレンズを交換することができ、これにより修理の往復による余分な炭素排出と資源の浪費を大幅に削減しています。さらに、当社は積極的にCSR(企業の社会的責任)プロジェクトを進めており、全景ドローンの技術を平和利用に向けることを企業発展の根幹としています。具体的には、A1には過荷重を検知して誤用を防ぐペイロード検知システムを搭載し、戦争用途の改造に利用されることを避け、飛行を楽しさと創造性の源として維持することに努めています。

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ターゲットユーザー・市場戦略・活用シーンについて

――主なターゲットユーザーはプロの映像クリエイターでしょうか、それとも一般のドローン愛好家、アクションスポーツのアスリートなどでしょうか?

Michael氏:

Antigravity A1は、新しい体験をしたいすべてのユーザーのために作られました。映像クリエイターやアウトドア冒険家、従来のドローンに飽きたテクノロジー愛好家など、新しい方法で世界を探索したり、飛行体験をしたり、撮影時に美しい瞬間を逃さないことを望む人には、A1が最適です。

――現在、異なる3つのバンドル(Standard、Explorer、Infinity)が用意されている理由と、それぞれのパイロット層への推奨ポイントをお聞かせください。

Michael氏:

3つのSKU(ストック・キーピング・ユニット/在庫管理の最小単位)の違いは、主にバッテリーと一部のアクセサリーにあります。ユーザーは自身のバッテリー持続時間に対する要求に応じて選択できます。

――「こういうシーンには特にA1が強い、逆に注意が必要だ」という具体例はありますか?ユーザーに向けた"ベストプラクティス"があればぜひ教えてください。

Newey氏:

飛行条件を満たす場合、A1は旅行やアウトドアなどのシーンに最適です。ユーザーはA1を使って新しい方法で世界を楽しみ、美しい瞬間を記録できます。例えば、旅行中にA1でパノラマ撮影をすると、後で様々なカメラワーク効果を自由に編集できて、360°を一度に楽しめますから、あらゆるプラットフォームでの共有ニーズを満たすことができます。ただし、暗い場所や細い枝の間を高速で通過するなどの複雑な環境では、安全を考慮して慎重に飛行してください。

――「Antigravity Care」のような周辺サービスの位置づけについてもお聞かせください。

Michael氏:

ドローンにとって、ユーザーに安心を提供するためにもアフターサービスは極めて重要です。弊社は「Antigravity Care」として、落下や衝突、水濡れなどの事故の解決策を提供し、製品の偶発的な損傷をカバーするための交換サービスを用意しています。Antigravity Careを利用して製品を交換に出す際は、発送・返送にかかる送料を当社が全額負担します。

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A1検証中の筆者

今後の展開〜次世代製品やロードマップは?

――他社製品との差別化を維持・強化していくために、今後どのような技術的ロードマップや戦略がありますか?

Newey氏:

より具体的な技術路線や戦略については公開できませんが、「イノベーション」というキーワードが当社の長期的な差別化における優位性となるでしょう。また、ファームウェアを更新して、A1ユーザーの使い心地を常に良くしていきます。引き続き期待していただけると嬉しいです。

――A1は海外の一部では日本より先行して発売されましたが、ユーザーからのフィードバックや市場の反応をどのように捉えていますか?それは次期製品の開発にどのように影響するでしょうか?

Michael氏:

われわれはユーザーからのフィードバックや市場反応を非常に重視しており、様々なチャネルを通じて情報を収集します。それはユーザーがオンラインおよびオフラインで自発的に当社に連絡することや、KOL(Key Opinion Leader/専門知識や経験に基づき強い影響力を持つ者)の動画下のコメント、オフラインイベントにおけるメディア・パートナーとの交流なども含まれ、これらすべてが当社の意見収集の情報源となります。当社は意見を集約し、次世代製品を前進させるための参考基盤として活用します。

――従来型リモコンモードの追加なども、具体的に検討されていますか?

Newey氏:

実はリモコンモードに関する計画はすでに準備中で、まもなく皆さんに披露できる予定です。

――今後、映像制作会社、メディア企業、監視用途などB to B向けの展開も視野に入れていますか?その際の課題は何でしょう?

Michael氏:

現段階でのAntigravityの目標は、ユーザーに対する洞察と技術革新を通じて、コンシューマー向けドローンにおけるユーザーのペインを解消し続け、より快適で安全で没入感のあるドローンの飛行体験の創出に専念することです。また、染瀬さんが言及した映画制作会社やメディア企業なども、すでにA1をコンテンツ制作の重要なツールとして利用しています。例えば、アメリカのプロ野球のメジャーリーグベースボールでも、A1を撮影に利用しています。世界のメディア環境の変化と転換に伴い、ショートビデオのアプリに投稿したり、クールでクリエイティブなショットの撮影や没入型VRニュースや非定型のビジュアル表現まで、A1はすべてのメディア向けに活用できるものと考えています。To Bの挑戦は、企業顧客と一般ユーザーのニーズの重点がしばしば異なりますが、これも私たちが自身の向上を続けるための原動力の一つとなるでしょう。

購入検討者や市場へのメッセージ

――日本のユーザーに向けて、Antigravity A1を選ぶ際にぜひ知っておいてほしいポイントをひとことで語るとしたら、いかがでしょうか?

Michael氏:

世界初の360° 8Kカメラを搭載したドローンで、臨場感あふれる直感的なドローン飛行を体験してください。まずは飛行し、フレーミングは後で決める。それは、すべての瞬間をキャプチャします。

――もしこれからドローン・空撮を始めたいという個人やクリエイターにアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか?

Michael氏:

ぜひ「飛行」がもたらす喜びを満喫してください。空撮によってあなたの創作にもたらされる驚きが得られることを願っています。A1は、そのためのパートナーとして、「体験」と「創作」の両面をサポートします。

――今後、Antigravity社の製品やサービスを通じて「こんなことができるようになります」など、ユーザーにとってワクワクするような未来のビジョンを教えてください。

Michael氏:

私たちは、引き続き良質な製品を磨き上げることで、より多くの人が「飛行」を愛し、生活の記録とシェアを愛するようになることを願っています。

――最後に、ユーザーコミュニティに何を期待しているか、メッセージをお願いします。

Michael氏:

最後に、私が深く印象に残った事例をご紹介したいと思います。あるパートナーが、A1のリリース前に家族と一緒に自宅近くの丘でテストフライトを行いました。彼は自分が飛行し終えた後、これまで一度も無人機を操縦したことのない弟にも飛行方法を教えたところ、弟は「超かっこいいね!」と言って、とても興奮していたそうです。 彼の母親もそばにいて、 Visionゴーグルのユニークな外部ディスプレイを通じて飛行の様子を見ながら、何十年も暮らしてきた町の別の一面を見ることができたそうです。最後に、彼は私たちに対して、この体験は「とてもハッピーだった」と語りました。
このフィードバックを得て、私の頭の中にもそのシーンが浮かぶと同時に、幸せを感じることができました。私たちは常に、テクノロジーを通じて人々がより良く生活を記録し、共有できるように支援することを目指しており、それは世代間のギャップを埋めたり、時空を超えた素敵な思い出を作り出すことができます。もし私が最も見たいものを尋ねられたら、おそらくこのような無数の幸せな瞬間だと答えるでしょう。日本のユーザーの皆さんと一緒に、A1を使って多くの素敵な思い出を創造し、記録し、共有できることを楽しみにしています。

――この度は貴重なインタビューの機会を、ありがとうございました。

まとめ

「Antigravity A1は空飛ぶカメラか、それとも自身の翼か」。インタビューを終えて抱いたのは、そんな感想だ。Antigravity A1が追求したのは、単なるスペックではない。直感的な操作と360°の視界により、操縦のストレスから解放され、誰もが「鳥の視点」を本能的に楽しめる未来である。技術の粋を集めながら、CEOや開発者から語られるビジョンは驚くほど人間中心だ。空を飛ぶ喜びが、一部の専門家や愛好家だけのものでなくなる日は、もうすぐそこまで来ているのかも知れない。

Antigravity A1は、Antigravity公式ストア、Eコマースプラットフォーム(アマゾン、楽天)、家電量販店(ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダデンキ、 ジョーシン、 ケーズデンキ)、写真機材専門店、小売店チャネル(コストコ)などで発売される予定。

  • スタンダードキット:209,000円(税込)
  • エクスプローラーキット:249,000円(税込)
  • インフィニティキット:263,900円(税込)
日本において指定期間(2025年12月18日20時~2026年1月3日24時)中に、オンラインストア及び店舗で対象バンドルを購入されたユーザーには、対象購入ごとに、25,000円相当の1年間の「Antigravity Care」サブスクリプションが無料で付与される。

*日本国内では、100g以上のドローン(無人航空機)の場合、国土交通省に機体登録する必要がある。また、特定飛行に該当する際には、飛行許可・承認などが必要になる。

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