染瀬直人のVRカメラ最前線VOL12メイン写真

■Insta360 GO 2
insta360オンラインストアの価格:税込39,930円
問い合わせ先:Insta360

Insta360 GO 2(以下:GO2)は、親指大のアクションカムで、2019年9月に発売された初代Insta360 GO(以下、初代GO)の後継機にあたる。今年3月にGO2が発売された当初は超品薄となり、その人気ぶりが伺えた。最大解像度や撮影時間の延長。防水性能の向上。リモコン操作が可能でスタンドにもなる充電ケースの登場など、初代GOと比較して様々な面で機能強化がみられる。

また、ハンズフリーの撮影において威力を発揮する専用アクセサリーにも改良と工夫が施された。撮影後、テーマに沿って自動的にハイライトを抽出し、トランジションやBGMまで付加されるAI編集も進化している。GO2は連載のタイトルで謳う「VRカメラ」ではないが、本記事では、スマートフォンカメラや既存のアクションカムとの差別化を図って再構築されたGO2の実力を見ていきたい。

GO2の外観と多機能な充電ケース

GO2の大きさは、高さ52.9mm、幅23.6mm、奥行きが20.7mm、重さは26.5g。

同梱の充電ケースは、高さ68.1mm、幅48.54mm、奥行き26.6mm、重さ63.5gとなっている。 ボディカラーは初代GOと同様に白である。初代GOと比較して、本体サイズは高さにおいて3.5mm、重さについては8.2gほど、わずかに増加しているが、耐久性が向上したとされている。

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世界最小クラスのアクションカムと謳われるGO2の筐体

カメラ単体での撮影の際は、カメラ前面のロゴのあたりのアクションボタンによって操作する。レンズ下部のインジケーターライトによって、充電や録画のステータスを把握することができる。

GO2の特徴の一つに、多機能な充電ケースの存在が挙げられるだろう。カメラ側のバッテリー容量は210mAh。充電ケース側には1100mAhのバッテリーが内蔵されている。充電ケースにGO2を収納すると、およそ23分で80%、35分でフル充電される。充電ケース自体はType-Cケーブルを使用して充電することになり、充電時間はおよそ65分である。GO2のバッテリーが低下しても、この充電ケースにより3回のフル充電が可能で、そのままポケットやバッグに入れて持ち運ぶことが出来るから便利だ。

GO2を収納した状態で、ケースを開き接続すると、OLEDディスプレイ部分に撮影モードや撮影サイズ、バッテリー残量などが表示される。ボタン操作により、設定やカメラのコントロールを行えるので、ケース自体を持って手持ち撮影が出来る。充電ケースの底面には、1/4インチ三脚ねじ穴が付いているから、自撮り棒やスタンド等を取り付けることも可能だ。

さらには、カメラを取り外した状態でBluetoothで接続、ケースをワイヤレスリモコンとしても使用できる設計は画期的だ。その場合、最大で10m離れた地点からカメラのコントロールが出来る。撮影中の映像をプレビューしたい場合は、モバイルアプリInsta360を利用することになる。バッテリーの寿命は、GO2単体では標準モードで30分、Pro Videoモードで20分。充電ケースに取り付けた状態なら、標準モードで最大150分、Pro Videoで110分程度の撮影ができる。

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カメラ単体での撮影時は、本体下部のロゴのあたりのアクションボタンを操作する。レンズ下のインジケータライトに、カメラの状態が表示される
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強化ガラス製のレンズ保護フィルターが取り付いているので、アクションシーンの撮影も安心だ
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GO2の天頂部のモノラルマイク
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充電ケースの底部には、マイク穴、USB Type-Cケーブルの端子、1/4インチ三脚ネジ穴が設置されている
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付属の充電ケースは手に持ったフィーリングも良く、AppleのAirPodsを思わせる洗練されたデザイン
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GO2本体と充電ケースの接点
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充電ケースの格納された脚を引き出すと、スタンドとして利用できる。アングルも調整できるので、テーブル撮影などに重宝する
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GO2を格納した状態で充電ケースを持ってハンドヘルド撮影。右の白いボタンが接続や変更、左の赤いボタンが録画開始と決定の役割を担っている。ディスプレイでは現在のモードや視野角、サイズ、アスペクト比、電池残量、撮影パラメータなどを確認することができる

進化したスペックと、撮影後に視野角・アスペクト比を選択できる自由度

前述したようにGO2は、初代GOと比較して、性能において、大幅な進化を遂げている。その内容を順を追って見ていこう。

GO2のレンズの口径は、f2.2。等価焦点距離(35mmカメラ換算)は、11.24mm。初代GOのイメージセンサーは非公表であった模様だが、GO2では1/2.3インチセンサーが採用されている。動画の最大解像度は初代GOの1080 25fps(アプリ経由で出力した場合)から、2560×1440 50fpsにアップしている。解像度は、動画の場合、標準モードとPro Videoモードで、それぞれ、2560×1440、1920×1080。フレームレートは、50、30、25、24fps。HDRモードで、2560×1440 25fps、24fps。タイムラプス、タイムシフトは、2560×1440 30fps。スローモーションの場合は、1920×1080 120fpsである。静止画の解像度は、2560×1440(16:9)、2560×2560(1:1)、1440×2560(9:16)、2938×1088(Film Pano)だ。動画のファイル形式は、MP4。静止画は、INSPまたはDNGだ。

視野角は初代GOでは、超広角のみだったものが、GO2では、超広角 、アクションビュー、リニア、狭角と選択できるようになった。アクションビューとはアクションPOVの撮影向けで、その他の視野角と比べ、垂直視野角が大きいのが特徴だ。動画露出モードは、オート、マニュアル(シャッター速度 1/8000 – 1/30秒、ISO 100-3200)。静止画露出モードは、オート, マニュアル(シャッター速度 1/8000-120秒、SO 100-3200)、シャッター優先(1/8000-1秒)、ISO優先(100-3200)。ISO感度はISO100~3200となっている。

また、カラープロファイルに「鮮やか」が、またHDR動画モードが追加された。モバイルアプリのInsta360やPCソフトのInsta360 Studio2021から書き出す場合は、さらに「色彩鮮やか」「粒状感の除去」などの、「AI Effects」を付加することが出来る。防水性能は初代GOのIPX4耐水相当からIPX8 4メートル防水となった。ただし、水周り及び水中の使用では新たに実装されたねじ込み式のレンズ保護フィルターがしっかり締まっていることが必要なので注意したい。手ぶれ補正は標準撮影モードではベーシック手ぶれ補正(カメラ内手ブレ補正)が働き、Pro Videoモードを選択すると高度なFlowState手ブレ補正と自動水平補正が利用できる。FlowStateを適用するには、Insta360アプリ、またはInsta360Studioからレンダリングすることになる。そして、Pro Video、HDR、タイムラプス、タイムシフトについては、撮影時に2,880×2,880のサイズで記録され、撮影後にアスペクト比や画角の変更ができる点も大きなアドバンテージである。

GO2は、マイクロSDカード等の外部ストレージは使用できない構造だ。内蔵ストレージは32GB(使用可能領域は28GB)となり、初代GOの8GBの4倍相当に増加した。動画の最長クリップ尺は、初代GOの1分に対し、GO2は15分まで。FPVモードの撮影では初代GOの5分に対し、GO2では30分まで録画できるようになった。

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左:Pro Videoモードのファイル。ファイル名はPROxxx.mp4で、FlowState手ぶれ補正や地平線レベリング、また、編集時に画角やアスペクト比を変更できる。
右:標準モードのファイル。ファイル名は、VIDxxx.mp4となり、汎用的なプレーヤーで再生が可能だ。カメラ内手ぶれ補正が適用される
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視野角の変化。上から、超広角、アクションビュー、リニア、狭角
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アスペクト比の変化 16:9、9:16、1:1(さらに静止画にはFilm Panoがある)

カラープロファイルの比較

HDR動画

Flowstate手ブレ補正の比較。大至急の撮って出しの用途でなければ、Pro VideoでFlow Stateを利用することが、手ブレ低減には得策と思われる

アクセサリーの改良

GO2は単体でも、裏面のマグネットで金属部分に取り付けることが可能だが、カメラを身につけて撮影したり、あるいは乗り物等に設置して撮影するために、専用アクセサリーが同梱されている。今回、GO2の登場に伴って、これらの設計が見直された。「磁気ペンダント」は、 ペンダントを衣服の下に忍ばせて、服の上からGO2を充てがって保持して使用する。

今回の新磁気ペンダントでは磁力が強化された。「簡易クリップ」は、衣服やキャップの先端などに取り付けて使用できる。GO2バージョンでは、よりアングルが調節しやすく改善された。折り畳み式の「ピボットスタンド」も再設計が施され、形状が変更されている。繰り返しの使用に耐える粘着ベース、折り畳んだ場合にはカメラを保護し、開くと持ち手にもなる内蔵のハンドル、リストストラップの構成となっている。

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GO2単体でも、裏面のマグネットで、金属製の柱などに取り付けることが可能だ
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「磁気ペンダント」は今回、磁力がアップされた。それでも、不意に腕が当たって、落下することもあるので、注意するに越したことはない
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衣服やキャップの先端などに取り付けられる「簡易クリップ」。荷物を持って歩行している際でもハンズフリー撮影が可能。一旦、モバイルデバイスのアプリのプレビューを確認しながら、適切なアングルに調節すると良い。カメラが横遣いにマウントされるが自動で補正される
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「ピボットスタンド」の粘着ベースは、平面に貼ることが出来、何度でも利用できる優れものだ
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「ピボットスタンド」の粘着ベースを保護するように、カバーが用意されている
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マグネットが使用できない場所で、威力を発揮する「ピポットスタンド」

GO2のアクセサリーを用いて、様々なユニークな視点からの撮影を試みた作例(*一部、車外にアクセサリーを取り付けていますが、私道において、撮影しています。このような撮影をおこなう際は、法令に則り、安全に配慮し、自己責任でお願いいたします)

その他、2種類の粘着ベースや、磁気マウント、1/4インチねじ穴マウントとアクションスポーツ用プロングアダプターに対応した「マウントアダプターバンドル」のセット。ペットの一人称撮影用に利用できる「ペットストラップマウント」。ドローンによるFPV撮影時などに発生するローリングシャッター現象の低減に役立つNDフィルターセットの4種類(ND8、ND16、ND32、ND64)が別売りでラインナップされている。

強化されたAI自動編集機能

スマホやタブレットで使用するモバイルアプリについては、初代GOでは、専用アプリを使用していたが、GO2ではInsta360 ONE X2やONE Rと共通のInsta360アプリを利用することになった。Wi-Fi接続により、リアルタイムプレビューしながら、撮影設定やカメラコントロールをおこなうことができる。このアプリでは、FlashCut2.0と呼ばれるAIの自動編集機能も利用できる。Wi-Fi接続時においては、カメラからスマホのストレージにダウンロードしなくても、そのままカメラ内のデータから編集することも可能だ。

編集には二通りの方法があり、一つはVlog、ライフ、旅行、スポーツなどのテーマの中から好みのテンプレートを選択。次に必要な数の撮影済みのクリップを選ぶと、AIがクリップ内のハイライトシーンを抽出、トランジションとBGMを施して、動画を生成してくれるという「Flashcut」。もう一つは使用したい任意のクリップを選んで、AIがクリップ内のベストショットを選び出し、トランジションとBGMを付加して、動画を仕上げてくれる「ストーリー作成」である。「ストーリー作成」では、AI編集以外にマニュアル編集も行えるので自由度が高い。また、アルバムから、個々のクリップを調整することも出来る。じっくりと編集したい場合は、PC用のInsta360 Studio 2021を利用すると良いだろう。

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Insta360アプリの撮影時のプレビュー画面
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Insta360アプリのFlashcut2.0の画面。テンプレートを利用して、自動編集を利用できる
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Insta360アプリのFlushcut2.0の編集画面。マニュアル編集も可能だ

タイムシフト

ハイパーラプス

AI自動編集FlashCut2.0を用いた動画作例

こちらもFlashCut2.0を用いた自動編集の動画作例

まとめ

GO2は超小型・軽量の筐体とアクセサリーの工夫により、従来のアクションカム以上に、人体やペットや乗り物、その他の場所に手軽に取り付けることができるようになっている。そのことによって、POV(一人称)をはじめ、スマホカメラなどでは得られないような自由な視点を獲得することに成功している。

また、被写体もカメラを気にすることがないため、自然な雰囲気を捉えることができるだろう。まさにVlog、スポーツ、ドローン、料理、ペットの撮影といった、あらゆる日常のシーンを記録するのに最適なカメラといえよう。

Pro Videoモードに指定することで、撮影後の落ち着いた環境で画角を決定したり、投稿したいSNSのプラットフォームに沿ってアスペクト比を後から変更出来るのも有難い。4K撮影はできないものの、撮影後の自由度を優先するなら、GO2は魅力的だ。

忙しい時間の合間にもAI編集でサクッと動画を仕上げることが出来るので、スマホから毎日定期的にSNSにVlogを投稿するといったユーザーには相応しいアクションカムである。AI自動編集については、今後の更なる進化に期待している。ただし、身につけやすいからといってバッテリーの寿命はそう長くないので、ライブログのように一日中回しっ放しで撮影できるわけではない。屋外の撮影などには充電ケースを忘れずに併せ持っていくことは必須である。

長時間の撮影の場合はケースに装着して撮影することをお勧めする。また、ストレージの容量が32GB(実質28GB)なので、夢中で撮影をしていれば、すぐに撮影済みデータで満杯になってしまう。沢山撮影される方は、頻繁にスマホやストレージにバックアップをとって、内蔵ストレージの容量を確保されることを心がけたい。

WRITER PROFILE

染瀬直人

染瀬直人

映像作家、写真家、VRコンテンツ・クリエイター、YouTube Space Tokyo 360ビデオインストラクター。GoogleのプロジェクトVR Creator Labメンター。VRの勉強会「VR未来塾」主宰。