EDIUS Pro 5がバージョンアップしてVer.5.11に
EDIUS Proが新バージョン5になってから初のバージョンアップを実施した。早速、新バージョンをお借りすることが出来たので、テストをしてみた。今回のバージョンアップでは、かなり細かい部分まで修正が入っているらしく、追加変更部分を詳細に記述したPDFのページはチョットした取説並のページ数になっていた。これを全部紹介するのは余りにも馬鹿馬鹿しいので、このテストレポートでは、今回のバージョンアップで一番の目玉部分であるH.264/MPEG2コーデックアクセラレータFIRECODER Bluでの連携部分をまず検証してみたい。
インストール自体はアップデートファイルをトムソン・カノープスのWebサイトからダウンロードすればよいだけの話だが、このファイルサイズが久しぶりに1GB超というとんでもないサイズ。フロードバンド環境が普及しているとはいえ、光接続環境以外では気軽にダウンロードしにくいファイル容量になっている。ちなみに、今回のアップデート開始は当初4月末でのアナウンスだったが、現実には5月1日で、まるでVerナンバーの5.1に合わせたような日時に変更されていた。なかなか面白いことをやるなぁ~と考えていたら、どうやら最後の最後でバグでも在ったのか、3D PinPのアップデートが別に付加されていた。これを入れることでVer5.11へと変更される。
FIRECODER Bluとの連携で実時間でエンコード
H.264/MPEG2コーデックアクセラレータFIRECODER Blu |
2008年末には発売されていたFIRECODER Bluだが、結局のところEDIUSからのコントロールが出来ず、AVCHDをM2Tに変換したりBDファイルを作成したりという単純なファイル変換ボードとしての役割しかなかった。今回、EDIUS Pro 5.11にバージョンアップして、ようやくEDIUS上から直接ボードを叩くことが可能となった。やっとフルコントロール出来るようになった恩恵のほかにはどんなことが出来るのかをテストしてみると、まず一番最初に目に付いたのは、リニアPCMでブルーレイ出力を出せるようになった。
バージョンアップ前はFIRECODER Bluを使ってAVCHD変換すると、音声は特に変更出来るわけでもなく、AC3 384kbpsに固定されてしまった。今回のVer.5.11では、出力設定で、リニアPCMかAC3かが選択できるようになった(AC3の場合はビットレート変更も可能)。編集内容によっては、タイムライン上での音声はリニアPCMと言う場合も多く、リニアPCMが使えると言うことは非常に大きな機能向上と言えるはずだ。
次に恩恵を受けた部分としては、フルHDのリサイズでもエンコード速度が落ちないということだ。これに関しては、もしかしたらPC環境のスペック次第で変化が見られない可能性もある。しかし、筆者のPC環境においてはこれまで、幅1440ピクセルの素材を1920ピクセルにリサイズしてからAVC変換させると素材実時間の約3倍近くエンコード時間がかかっていたが、リサイズ無しでのエンコード時間とほぼ同じ様な感じで終了することが出来た。 テスト期間の兼ね合いもあって、実際に出来上がった映像を詳しく調べたわけではないのだが、出来上がった映像は、どうも1920ピクセルのVBR14Mbpsの映像としては若干甘い感じに見受けられるような気がする。もしかしたらリサイズするときの画質変換項目で、「最高」画質を選ばずに「普通」でリサイズした後にエンコードしているから処理が速かったのかも?という感じがしなくもない。
次に、実際にタイムラインにM2T素材を並べ、BD作成におけるAVCHD変換のスピードを検証してみたい。素材は適当なM2T素材を3本選んで、マルチカム編集でのタイムラインを使用した1分間のもので、①適当に15カットくらいに並べたものを白完パケ状態と仮定して(ベース素材)、②字幕3カ所、ディゾルブ5カ所を追加したもの、③そこから更にビデオエフェクトとして全編カラコレと音声エフェクトでVSTプラグインを1個(マルチコンプ)載せたものの3種類のプロジェクトを用意した。それぞれ、1920×1080へのリサイズを行い、タイムライン上からファイル変換して見たところ、①52秒②53秒③54秒(多少の誤差あり)という変換結果が出た。タイム計測だけで見るとほんの1秒位の差でしかないが、FIRECODER Bluをコントロール出来ない環境でやると、とても考えたくはない数字が出てくるのは周知の事実だ。
結論から言うとEDIUS Pro 5.11+FIRECODER Bluの組み合わせは、何をやっても(エンコード処理をしても)ほぼ実時間でAVCHD変換をしてくれると言っても過言ではないだろう。こうなってくると変にタイムライン上からダウンコンバートしてDVD作成するよりも、FIRECODER Bluを使ってBD出力しちゃった方が手間がかからないのでは?という、とんでもないことになってきそうだ。これは、ちょうどDVSTORM時代に、オプション扱いのエンコードボードを付加してDVDを作成したときと同じ様な感覚かもしれない。
1パス処理に注意すれば十分な品質のBD作成機能
最後に、実際にタイムライン上からBD作成をした場合の感想を書いておこう。まずはタイムライン上で完パケを作成し、それをDVD/BD作成バーナー(?!)を使ってカノープスHQで書き出ししたものを再度タイムラインに乗せ、チャプター個所にVマークつけてからBD作成という作業をしてみた。ビットレートは、とりあえずCBRで最高の24.9Mbpsに固定し、音声はリニアPCMを選択した後でエンコードをスタートした。この場合、約113分の素材に対して、約90分でエンコードが終了した。イメージファイルの作成に約30分弱程かかるようだが、さほど問題ではない、それよりほぼ実時間で書き込み直前まで作成できると言うことの方がメリットは大きいはずだ。
出来上がったブルーレイディスクを再生してみると、画質・音質とも一般的にはまず申し分無い品質で出来上がっていた。注意点としては、現時点でFIRECODER Bluは、仕様上1パス処理しか出来ないはずなので、高ビットレートでないと、若干映像が甘めに感じるかもしれない。しかし、今回の実験のようなパターンであれば、最高レートでのCBRで作成するなら全く問題は無いはずだ。しかも、音声がリニアPCMであっても片面1層25GBディスクに140分程の記録は出来るみたいなので、AC3コーデック256Kbpsなどの品質で割り切れるなら180分近く入れられる可能性も出てくるだろう。
エントリー製品のEDIUS Neo 2もBDに対応
EDIUSシリーズのエントリー製品であるEDIUS Neo 2でもFIRECODERBluを使いBD作成を試してみた。基本的な操作はEDIUS Pro 5.1と同じではあるが、EDIUS Neo2のテンプレートを使用したMENU作業も加えてみた。特に取説を熟読しなくても、なかなか判りやすい操作で好感が持てる。テンプレートの雛型も数も種類も充分にあり、使い勝手は良好だ。これで背景にモーションメニューまで選べたら、他のオーサリングソフトの世話にならずに済むのだが……。
EDIUS Pro 5.11と同様に、タイムラインで編集して書き出したら、BD書き込み直前でエラーが出てしまった。メディアが悪いのか、それともソフトのバグなのか分からなかったのだが、イメージファイルを変換する作業フォルダをよく見たら、フォルダの容量が「25.1GB」になっているという結果だった(この作業フォルダを見つけるのは若干解りにくいので、トムソン・カノープスはFAQにフォルダ構成を載せておいて欲しいと思う)。
エラーは、エンコード前は容量内だったが、メニューなど色々と欲張りすぎて、結果的にその分の容量オーバーになってしまったという事だった。こういう時は、解りにくいエラーコードを吐き出しすのではなく、ダイアログなどで単純に『容量を越えています』という日本語メッセージを出して貰いたい。その方が、何を意味するエラーなのかを調べる無駄な時間が省けるというものだ。次期マイナーバージョンアップ時にでも組み込んで頂きたいと思う。このエラーの予防法としては、安全のためにターゲット容量をディスクの90%程度にした方がよいみたいだ(因みに95%指定では微妙にサイズオーバーになった)。
今後のBD制作ソリューションの標準的存在に
EDIUS Pro 5.11とEDIUS Neo 2という新しいバージョンの製品を使ってみたが、ここまで簡単にBD作成ができてしまうソリューションは他のメーカーでは今の所無いのでは?と思えた。特に、Mac環境では、まだまだBD制作に関しては厳しい部分が多々あるのも事実。もちろんFinal Cut ProとEDIUSの用途の違いという比較できない部分もあるが、早い時期からBD対応を謳っていたAdobe CS4やSONY Vegasに比べると、かなりアドバンテージが出来たはずだ。FIRECODER Bluを使用したBDソリューションは、EDIUS Pro5.11もEDIUS Neo 2も基本的に全く変わらないと言っていいレベルだ。
EDIUS Neo 2はパナソニックのAVCHD製品へのバンドルが始まったようだが、EDIUS Neo 2+ソニーHDVカムコーダーHVR-HD1000Jを組み合わせて、DELLやHPなどの安めのデュアルコア・ノートPCを使えば、撮影から編集、BD完パケまでわずか25~26万程度で出来上がってしまう。この価格で数年前の放送HDより品質が高い映像がインハウスで出来てしまうという事は、かなり驚異的な事であると改めて感じてしまった。
岡英史(VIDEONETWORK)