今回はDTVの現在、そして少し未来の話をしたいと思います。つまり「今ボクの周りで起きているコト!」がテーマです。1日に何回いうねん!とツッコミたくなるくらい繰り返し出てくる単語ランキング1位「5D!」。そう、デジタル一眼カメラ動画盛況の中で、ダントツ際だっているのが「Canon EOS 5D Mark II (以下:5D)」。その5Dの映像を初めて見たのはWeb上でした。

第一印象、「ヤバイ、来るかも!」

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その「ルックの強さ」、デジタル一眼カメラのボケ味、ノイズ感、感度の良さ、発色。それは写真が動いた瞬間でした。実機を見たのは、去年のInter BEE 2008。たしかに、ブースの中でも目立っていた印象はありました。しかしこの時点では、正直、現在の爆発的な一眼レフ現象を想像出来ていませんでした。凄いコトになっているなって感じ始めたのは今年のNAB 2009の会場でのこと、海外の反応が半端無かったのです。彼らは本気でこれで映画を作るつもりなんだという機材があちらこちらのブースで見かけられ、RED ONEを食う勢いを感じさせました。

ルックが突き動かした映像業界、一眼レフHD動画の波が止まらない!

日本では、フィルムルックが大好きなミュージックビデオ業界が、5Dをほっとくわけがありません。レンズ交換で遊べるんだからミュージックビデオ業界での流行は想定内でした。何より5Dによって突き動かされたのがCM業界です。この現象に、とにかくボクは感動しました。 CM業界が使い始めたってコトは、ちょ〜画質にこだわるハイエンドな人達が認めた機材というコト。つまり、35mmカメラや高額なHDビデオカメラと5Dが肩を並べたコトを意味するのです。で、何にそんな感動したかというと、「ルックが良ければ使うんだ!」っていこうコトです。5Dのルックは確かに良いけど、「使いやすいか?」「編集しやすいか?」と言われれば、そうでもありません。フォーカスを送るのが大変だし、手ブレはするし、ローリングシャッター現象も起きる。

編集面では、収録コーデックがH.264。リアルタイム編集は、変換なしには出来ないという、面倒なコーデック。しかもフレームレートが純粋な30fps。そして何よりもデータ収録、つまりテープレスなのです。そんな取扱い要注意の5Dをこぞって使う理由は「ルックが良い」からと。「良いルック」に飛びつくこのクリエイティブな現象に何とも感動したわけです。

そして、早くも新機種7Dが発売されました。フレームレートの選択が増え、29.97fps,23.976fpsに加え60fpsを搭載してきました。60fpsつまり、編集時に29.97や23.976に変換する事で、最大2.5倍のスロー映像が、一眼レフカメラで撮影可能になったわけです。これで映像の表現がグッと上がる訳で、ミュージックビデオ、CM業界でのデジタル一眼の波はまだまだ止まらないでしょう。

そして、仕事のカタチが変わる!?

Webや映画、テレビドラマ、グラビアDVDなど、そんな様々な業界で、デジタル一眼カメラを使用した映像制作事例を雑誌やWEBの記事で多く見かけます。特にWebや広告では、スチルカメラマンが、スチルと同時に動画も撮影しているとよく聞きます。クライアント側にしても、写真と映像が同時撮影可能な事は、予算削減というメリットがあるでしょう。しかし、注目すべきは、スチルカメラマンやクリエイターの意見。動画撮影が楽しいらしく、さらに新しいビジネスチャンスだと思っている。少し前にRED ONEで撮影した映像素材から1コマ切り出し、レタッチし、ポスターを作成したという話を聞いた事があります。

スチルカメラマンが撮影する映像を、レタッチャーがカラコレするといった、少し前には、考えられなかったワークフローが実現するのです。

映像のプロと変わらない機材が安価に手に入り、映像が高画質化、またデータ化された事で、様々なクリエイターが映像に関われるようになったのです。つまり映像の仕事のカタチに変化が起きています。これは素晴らしいコトだとボクは、捉えています。既存の映像制作者と仕事のパイを取り合うような事も少しは起きると思われますが、それよりも仕事の幅が広がることに注目し希望的観測をしています(笑)。

やっぱり映像はオモシロイ!

デジタル一眼がここまで人を惹きつける要素は何でしょうか?それは3つあります。

1つ目は、上記で述べてきた「ルック」、2つ目は「クリエイターの交流・変化」、そして3つ目が「偶然」です。その「偶然」とは、まず5DにHD動画機能を実装したこと。開発当初、この機能はCanonの戦略としてはプライオリティーは高くなかったはずです。CMで通用するハイレベルな映像が撮影可能なカメラの価格が、ハイエンドのビデオカメラに比べて桁違いに安かったこと。それは経済不況の煽りを受け、CM予算縮小のタイミングと重なり、使用された偶然という要因のひとつであります。

「偶然」とはいえ、Canonは、この経済状況の中、ただの価格破壊ではなく、ニーズに合った「価格と画質」を実現したのです。このことがクリエイターを触発し、クリエイティブに大きな変化をもたらしたコトがボクにはオモシロくて仕方がないのです。映像に革命を起こしたオチは「偶然」でしたが、この状況をビデオカメラメーカーが黙って見ている訳がありません。次は、ビデオカメラが革命を起こす番です。今年のInter BEE 2009が楽しみになって来ました。

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WRITER PROFILE

高野光太郎

高野光太郎

Cosaelu株式会社 代表取締役 / 映像ディレクター ミュージックビデオ、番組オープニングタイトル、CM、劇場映画、全てをデスクトップで制作。