Inter BEE 2009が閉幕した。3日間の会期を終えてみれば、やはり昨年よりも入場者数の少ない展示会となってしまった。しかし、そんな数字と会場の雰囲気はリンクしていなかったのも特徴的だ。3日目の午前中こそ閑散とした印象があったが、午後からは広くなったといわれる通路にも多くの人だかりができ、おおむね盛況だった。

取材しながら各社で聞いてみても、「今年は昨年以上にブースに集まってくれた」という声があちこちで聞かれ、「こんな景気だけにブースへの来場者が、さっぱり…」という声は少なかった。参加者が減ったにも関わらず、ブース来場者が増えたということは、各人がそれだけブースを念入りに回ったということの証でもある。会場の展示面積と来場者数のバランスが良かったのかもしれない。元々放送業界の機材展である。その展示会そのもの肥大化した部分が削ぎ落とされ丁度手頃なものになったといえる。スケールメリットを考えると2009年ほど良質だった回は近年なかったように思える。

今年のキーワードはやはり3D

今回の来場者は、それぞれ何を感じ取ったのであろうか?「4K」「ステレオスコピック3D」「デジタルサイネージ」とキーワードを探れば、自らこの辺りが取り沙汰されてくるだろう。その中でもInterBEE2009のキーワードは、「ステレオスコピック3D」といえる。来年以降は、3D映画上映の定番化や3D機能搭載テレビの登場により、家庭にステレオスコピック3D視聴環境が入り始める胎動期でもあり、その可能性をリサーチする意味合いも強かったのかもしれない。

ステレオスコピック3Dが成功するためには、3Dコンテンツが増えることが命題となる。その市場は未知数であるが、会場を見渡せば納得できたのではないだろうか?とはいえ、今年は、来場者だけでなくブース出展者もまた、次世代映像制作への模索をしているようだ。「ステレオスコピック3Dって、今後、本当に流行ります?」制作費や運用コストが縮小する経済状態のなか、次の一歩をどう踏み出せば良いのか、来場者もブース出展者も恐る恐る市場を覗き込んでいるような印象だった。

市場に一石を投じることになるのかどうかは慎重に見守りたいのが、200~250万円という数字だ。フィニッシングツールとして発表されたオートデスクのSmoke 2010 for Macや、エヌジーシーのポータブルライブプロダクションシステムTriCasterなど、多機能で実用的な制作システムがこのレンジに入って登場してきた。作品の制作費が、制作システムの価格で決まる時代が終焉を迎え、制作システムのオペレーターの既得権がなくなるフラットな時代であるともいえる。

実際にPRONEWS編集部でもいくつかの部隊が取材を行ったが、業務用でアーカイブを収録編集し、WebCamによってLive放送を行った。機材の値段や用途は違えども「伝える」という部分では、誤解を恐れずに言えばさほど変わりはなかったといえる。機材の価格ではなく、制作する内容が重要であるといえる。これも過渡期なのだと感じずにはいられない。バランスよく、楽しめたInterBEEだったが、これほどユーザー側からアプローチできる貴重な展示会はなかったのではないかと思っている。さて2010年のInter BEEには何が登場してくるのか?今から思いを馳せることにしたい。

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