ファイルベースのとある疑問とは? By 小寺信良(File based担当)

本日NABの初日。ファイルベースのシステムをいろいろ見て回っている。今やカムコーダはファイルベースが当たり前になってきているが、その後どうするのか、全部PC処理でいいのか、というところに疑問符がつき始めているのだと思う。

ハイエンドでのトランスコード処理として注目を集めているのが、SONYの「Ellcami」だ。HDCAM-SRのインジェストから複数コーデックへパラレル処理でトランスコードできる。

3-DSC02141-s.jpg いよいよ発売される「Ellcami」

複数のCELLプロセッサを使って力ずくでぶん回していくわけだが、4Kのハイエンド処理だけでなく、HDクラスの映像を扱うポストプロダクションでの引き合いもあるという。ファイルベースシステムの問題としていつも言われるのが、アーカイブである。メタデータをちゃんと付けておかないと検索もままならないが、それよりもアーカイブのハードウェアがHDDでいいのか、ということである。

案外昔ながらの棚管理の方が、ワークフローに合うというところもあるだろう。そういうときにXDCAMでアーカイブしよう、というコンセプトも生まれてくる。XDCAM用ProDiscも、今回4層のメディアとドライブが発表された。4層で128GBの容量を持つこの新ディスクは、カムコーダへの搭載は未定だが、アーカイブ用ととしての利用が見込まれるという。

4-s-DSC02060.jpg 4層128GBのProDiscが登場

またそれに付随する形で参考出品されたのが、XDCAMドライブ1台、XDCAM EXスロット2台を搭載するデッキスタイルのサーバだ。もちろんインジェストステーションとしての用途も想定されるが、映像・音声のI/Oも一系統ずつある。

6-s-DSC02062.jpg XDCAMシリーズのメディアスロットを搭載したデッキスタイルのサーバ

またシリアルコントロールも受けるため、リニア編集のデッキとしても使えるのがミソだ。ジョグ、シャトルもあるので、映像をハードウェアのパワーでがーっと探せるのも、報道用途で威力を発揮するだろう。

怪気炎あげるブラックマジックとDSLR By 石川幸宏(DSLR担当)

ブラックマジックデザインのプレスカンファレンスから始まった2日目。さすがパナソニックなどと同じ大きさでブース面積を拡げただけあり、新製品が目白押しでこれは凄い!ノンリニア系のメーカーも凌ぐブース内には、新製品の嵐。中でも驚きの$995で発表されたDaVinci Resolve for Macは価格と性能だけ見れば、革命的カラーコレクションソフトウエアとなるかもしれない。ただしコンソールとシステムインテグレート無しでは、カラーコレクション、カラーグレーディングの世界は難しいので、従来通りフォトロンが販売を担当して行く模様だ。$995はあくまでソフトウェアのみの価格で、コンソールが付くと$29,995、さらにインテグレーションフィーなどは別。それでも破格だ。

DSLR(デジタル一眼)ムービー系の話としては、こちらで言うところのHDSLRはなんと言っても、キヤノンを中心として、会場中がほぼEOS MOVIEに代表されるデジタル一眼ムービーの目白押し。カメラガジェット系を多く展示しているセントラルブースでは、ほぼ各ブースにEOS 5D Mark IIかEOS 7Dがある状態で、ハッキリ言ってビデオカメラの台数よりも多い状況だ。すでに1つのジャンルを確立したと言っても過言ではない。

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気になるツールとしては、出ると思っていたDSLRの3Dリグ。ドイツのメーカーSCREEN PLANE社が展示していたDSLRが装着された3Dリグ『3-FLEX RIG』同期方法などは詳しく判らなかったが、ついにDSLRで3Dという動きもあるようだ。その他、リグやジブといった周辺機器系は各社目白押しだった。

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EOS総本山のキヤノンブースもパナソニックの隣に、同規模に拡大して出展。ブース内の”LIVE LEARNING”コーナーでは、EOS MOVIEメイキングに関する詳細なセミナーが行われていた。気になるビデオ系新製品のXF300/XF305は、実機とブース展示を見ただけでは、実際それほどMPEG2 4:2:2 50MHzの素晴らしさは伝わってこなかったのだが、ブース裏側に隣接されたHD シアター内で、XHG1、XHG1s、EOS 5D Mark II、EOS 7D、そしてXF300/305で撮影された映像が、200インチほどのスクリーンにショーリールとして上映された。この中でEOS MOVIEの良さはもちろんなのだが、実はここでこそXF300/305の凄さが発揮された感じがある。4:2:2:の持つ色の諧調の多さなどが良く現れていて、dof重視のEOS MOVIEとはまた違ったまさにHDTV向きの画質には驚かされる。しかも日本円で80万円(XF305)と今までの同機能カメラの約1/3の価格。ニューENGカメラとして放送局などで多く採用されそうだ。

現在のトライ&エラーが市場を牽引する糧となる By 秋山謙一(3D担当)

NAB Showで放送業界もステレオスコピック3D制作に興味を持っていることは分かった。しかし、新たにステレオスコピック3Dに本格的に制作に取り組むには、制作予算も時間も足りない。とはいえ、Blu-ray 3Dや3D機能搭載ハイビジョンがあと2~3カ月で登場してくるので、ステレオスコピック3Dコンテンツを増やす必要にも迫られている。そこで関心が高まっているのが、ステレオスコピック3Dのライブ放送というわけだ。

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各社のブースを回ってみると、「今年のNABは日本人が少なかったですね」と言われたり、「今年は参加者が少ないと言われていたけど、それほど減ってはいませんね」と言われたりした。いったい日本人が多かったのか少なかったのかハッキリして欲しいと言われそうだが、会場内で日本語を聞くことはほとんどなく、かなり少なかったという印象だ。それでは、「それほど減ってはいません」としたブースは何か──。これが、ステレオスコピック3D関連製品を扱っていたブースだった。日本人参加者のなかでも、ステレオスコピック3D制作の必要性を感じている放送局やプロダクションからは、複数の担当者がNAB視察に訪れていたようだ。潜在的な市場は動き始めていると言える。

ステレオスコピック3Dの視差調整は、誰もがすぐにできるというわけではない。カメラの前後の位置を揃え、視野の水平を出し、目の間隔に合わせる。さらに、被写体の位置によっては視線を交差させてコンバージェンスポイントを作る必要もある。こうした収録前のカメラ設定に加えて、撮影時にも収録テクニックが必要になってくる。単に2台を揃えれば撮れるというものではなく、トライ&エラーは欠かせないのだ。このトライ&エラーをどれだけ繰り返して試行錯誤したかが、スレテオスコピック3D収録の技術を培っていくことになるのだ。

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ステレオスコピック3Dの市場は待っていてもなかなか形成しない。映像業界全体でトライ&エラーを繰り返しながら市場を形成、牽引していく必要があるのではないかと感じた。

映像業界におけるiPadと幕の内ライブ配信 By 猪蔵(NEW stream担当)

このNABで目につくのがアメリカで先程発売されたiPadである。各ブースで見かけたり、カンファレンスの受付に使われているのを何度も見かける。個人的にももちろん気になるのだ。時間のあいたときに実際にアップルストアに赴き、触ってみて、あの視認性と使いやすさは驚きである。ボタンを押してもノイズが出ないことはコンソールやコントローラーにとっておきである。映像業界にインパクトがあるんじゃないかと思ったのだが…。

IMG_6287.JPG 同じのプロンプターをiPadアプリで送出

iPadを映像業界で如何に使用するか?とすぐ思いつくのが、プロンプターではないだろうか?会場に足を運べば、当然のごとくiPadの製品をいくつか見つけることができた。先ずあのスクリーンからプロンプターは必須。案の定各社からのラインナップが見られた。プロンプターではお馴染みのPROPROMPTERでももちろんリリース。

IMG_6249.JPG iPadを使用したインターフェース

しかしこれにとどめるのはもったいないと思っていたらこれから映像業界にも取り入れられる部分は、iPadによるタッチパネルによるコントロール部分ではないかと思う。その中でも快気炎あげるBlackmagicdesignがリリースしたSmartContorが素晴らしい。もちろん機能本来の役目もそうだが、この製品は、別の意味で大きい。iPadがコントロール部分に最適でスタンダードになり得ると感じさせられたプロダクトだ。

もちろんライブ送出系も幾つか。今回Fantastic4でもUstreamライブのために幾つか機材を持ち込んでいるが非常に煩雑である。これが一人であればなおさらだ。そこでお勧めしたいのは、TVUPack。煩雑なシステムを一つのバックパックにまとめたプロダクト。HDクオリティーでワイアレスカードを複数使用し、NO VANを標榜し、配信が落ちることを防止。

IMG_6292.JPG かばん一つでどこからも配信可能

同じように一つにまとめて幕の内にしたライブ送出機BCC/BroadCastCase。タッチパネルでライブ編集。従来のHDシリーズにライブ3D送出機能も追加。

まだまだ初日でほとんど回れていない状態である。さて今日は何が見つかるか楽しみである。