世界のフィルムコミッションが参加するAFCI(国際フィルムコミッショナーズ協会)が主催するロケーショントレードショーが、今年も4月15,16,17日の3日間、米ロサンゼルスのサンタモニカ・シビック・オーディトリアムで開催された。毎年この時期に開催されている本展示会は、今年で25周年の節目を向かえる。

AFCIは、1975年にアメリカで設立された非営利教育団体であり、現在、世界41カ国、307団体が加盟している。「Cineposium」と呼ばれる教育プログラムや、毎年開催されているこのロケーショントレードショーの開催などを主な活動としている。ハリウッドの映像制作者に対して、世界各地のロケ地誘致のためのPR展示会が、このロケーショントレードショーであり、今回は160のフィルムコミッションがブース出展した。

AFCI_jpn.jpg 日本は各ロケーション合同で参加

日本でも平成12年ごろからにわかに機運が高まってきたフィルムコミッション。現在、全国フィルムコミッション連絡協議会に参加する団体数は、今年3月時点で101団体になるが、その中でもAFCIに加盟しているところがある。AFCIの正会員には、さっぽろフィルムコミッション、東京ロケーションボックス、那須フィルムコミッション、なごやロケーション・ナビ、大阪ロケーション・サービス協議会、神戸フィルムオフィス、姫路フィルムコミッション、広島フィルムコミッション、萩ロケ支援隊、北九州フィルムコミッション、福岡フィルムコミッション、大分市ロケーションオフィスの12団体が参加している。今回も日本ブースとして合同参加している。

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ロケーショントレードショーには各フィルムコミッションの他にも、ロケ地で様々なサービスを行う企業も参加しているところが面白い。映画制作雑誌などの映像系出版社をはじめ、ヒルトンやマリオットなどの海外に広くネットワークを持つホテルチェーンや、エアーコンディショナーやレンタルトイレ施設、ケータリング用具企業など、これら多くはアメリカ国内もしくは北米でのサービスを中心としているが、こうした企業も積極的なPRに余念がない。

各地の税金控除合戦が熾烈

今回の傾向として目についたのは、例年になく税金控除、免除などによる誘致合戦が繰り返されている。リーマンショック以降、ハリウッドの映画産業も制作費削減による経済不況に陥っており、なかなか大規模なロケ隊がロケ地まで行かなくなっていることから、各地は免税による控除制度を積極的にPRして、政府レベルでの誘致促進を仰いでいる。ブースの各所には、30%〜40%などの免税控除の割引率の数値が目立った。

日本では馴染みのないこの制度だが、映画やテレビドラマの撮影が、そのロケ地にホテル代、交通費、食費、機材レンタルなど多額の金額を落とすことから、例えば米国ならば、売上税や使用税の免除、ホテルにおける宿泊税の免除が、各州ごとに税額控除制度として設けられている。その他の国でも制作会社が現地の撮影会社を使用していくらか以上の金額をその国に落とした場合、その撮影会社の法人税が、あとで何パーセントか免除され、従ってその分を制作費から値引く、というような仕組みもある。

つい先日も、映画「のだめカンタービレ<最終楽章>」が、フランス国内の免税措置の適用を受けたことが話題になったが、各国がすでに様々な優遇措置が存在しているのが現状だ。

AFCI_araska.jpg アラスカのフィルムコミッション

日本では残念ながら海外諸国ではすでに一般化している税金免除制度は存在しない。日本のフィルムコミッション関係者によれば、その代わりに日本では、制作者のユニオン(組合)が存在しないことを逆手に取るといった方法でロケ誘致を推進しているという。

例えば、9時から5時までという就業時間が明確でないため、たとえ撮影が伸びても延長料金が発生しない、などである。確かにこれを合算すれば、現地撮影費にかかる数パーセントの税額を控除するよりもメリットはあると思われるが、逆に日本の制作会社にとっては、3K商売のレッテルを張られているキツい映像制作現場というイメージが、益々厳しいものになってしまうのでは?と一抹の不安も感じた。

いずれにせよその国の観光産業の起点となるような映画へのイメージ・プロパガンダは、いま現在でも重要な産業である事を日本ももっと重要視すべきかもしれない。会場には、そうした資金面での側面をサポートすべく、フィナンシャル系の金融企業も出展していた。

AFCIロケーショントレードショー http://www.locationstradeshow.com/

WRITER PROFILE

石川幸宏

石川幸宏

映画制作、映像技術系ジャーナリストとして活動、DV Japan、HOTSHOT編集長を歴任。2021年より日本映画撮影監督協会 賛助会員。