「技研公開2010」が去る5月27日から30日、東京都世田谷区のNHK放送技術研究所において「技研80年 さらなる未来へ」をテーマに開催された。NHK放送技術研究所は、放送技術分野を専門とする研究機関で、普段馴染みのない最先端の放送技術に触れられる唯一の場といってもいいだろう。 会場では、高質感・空間再現メディアの実現に向けた研究やユースフル・ユニバーサルサービスの実現に向けた研究、高度コンテンツ制作環境の実現に向けた研究の3つを中心に基礎から応用まで、最新の研究成果44項目の展示が行われた。比較的実用化が近そうなカメラなどを中心にフォトレポートしよう。

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従来は800万画素の撮像素子を4枚使ったデュアル グリーン方式を採用していたスーパーハイビジョン(SHV)カメラだが、昨年3,300万画素の撮像素子3枚を使い、フル解像度でSHV撮影を可能にするプロトタイプのカメラを出展。今年は更に完成度を高め、光伝送装置をカメラヘッドに内蔵。約74Gbpsのフル解像度の映像信号を、ハイビジョンカメラ用ケーブル1本で伝送することが可能となった。

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昨年のInterBEEでも参考出展されていたアストロデザインの4kカメラ。当時詳細は非公開とされていたが、3840×2160の4k解像度でインターフェースはHD-SDI Dual Link×4、マウントはFマウントと公表された。

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JVC・ケンウッド・ホールディングスの単版4kカメラ。3840×2160の4k解像度でインターフェースはHD-SDI Dual Link×4とDVI-D Single Link×4を搭載。マウントはFマウントとPLマウントに対応しており、写真はPLマウントレンズを装着したもの。

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パナソニックは昨年に引き続き890万画素のCMOS撮像素子を採用した単板式のハイビジョンカメラを出展。写真はPLマウント使用のもので、今回は色補正回路を付加し、nanoFlashをビルトインして単体で撮影できるようにしていた。

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撮像素子を3層構造にした有機撮像ディバイスを採用した単版カメラのプロトタイプ。RGBそれぞれに感度を持った有機光電膜を組み合わせることで、3板式のカメラのようなプリズム光学系を必要としないため小型化が可能となる。昨年も出展されていたが、今年は高感度化を実現している。

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裏面照射型超高感度CCDを採用することで、最大100万枚/秒で撮影することができるウルトラスローモーションカメラ。

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遮蔽物があっても撮影することができる電波テレビカメラ。60GHz帯の電波を採用し、ベニヤ板などの遮蔽物があっても撮影することが可能。昨年も出展されていたが、今年はリフレクトアレーアンテナを採用することで、毎秒撮像コマ数の向上と信号処理回路などの刷新が図られている。

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4096×2048ドットの3D映像を撮影することができる2眼カメラで、撮像素子には890万画素のCMOSを採用している。12bitのRAWデータを約12分記録可能で、PCベースの制御システムを採用している。このカメラは近日中にビュープラスから1600万円ほどで販売されるという。

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裸眼で3D映像の視聴ができるインテグラル立体テレビ。微小なレンズを多数並べたレンズアレーを撮影と表示で使用することで立体視を可能にしたもので、今年は画面歪みなどを改善し、画質向上を図っている。原理的に調節と輻輳(ふくそう)の矛盾が起りずらいので、目が疲れない3Dディスプレーが実現可能としている。現状のものは、立体映像の解像度が低いので、実用化にはもう少し時間がかかりそうだ。

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フレキシブル有機ELディスプレー。有機EL発光ディバイスやフィルム液晶、表示素子を駆動するための有機TFT素子などを組み合わせて実現したもので、将来的にはポスターのように壁面などに貼り付けて使用できるディスプレーを目指しているとのことであった。

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視聴者の挙動や反応などを認識する技術を活用することにより自動的にコンテンツを選択表示させるユーザーインターフェース。視聴者の意図をその挙動などから判断して表示映像に反映させるというもの。

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次世代アーカイブシステムとして、1つのカートリッジに薄型の光ディスクを100枚収納できるようにしたもので、1枚のディスク片面で25GBの容量がある。1つのカートリッジで2.6TBのストレージか可能だが、両面記録が可能になれば、1つのカートリッジで5TB以上も実現可能という。実用化にはディスクの歩留まりや耐久性などの課題があるという。

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番組制作用有機EL照明器具。発光が面光源のため、まぶしくない人に優しい照明で、構造上薄く作ることが可能。すでに、キャスターライトとしてバンクーバーオリンピックで使用した実績がある。写真奥は小型ベースライトとしてユニットを4×4に配置したもの。

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弾性を持つポリウレタン高分子膜を用いた超軽量スピーカー。ポリウレタン高分子膜の両面に導電性を持つ高分子を塗布することで、コンデンサースピーカーのように磁石やボイスコイルなどが不要。写真は16cmの円形で約60gの質量となっているが、形は自由に設定できるので、四角形や三角なども可能。信号処理回路を付加することで、80Hzから15kHzまでの再生が行える。

WRITER PROFILE

稲田出

稲田出

映像専門雑誌編集者を経てPRONEWSに寄稿中。スチルカメラから動画までカメラと名のつくものであればなんでも乗りこなす。