デジタルサイネージジャパン2010(DSJ 2010)が6月9日から3日間、千葉市幕張メッセで開催された。昨年から、同時開催のIMC TOKYOの1部門から独立して専門イベントとして開催されたDSJだが、今年は初日午前中から展示フロアに来場者があふれ、カンファレンスも満席になるなど、昨年以上にデジタルサイネージへの関心が高まってきていることをうかがわせるものとなった。

今回のDSJは昨年までとは大きく変わり始めたように感じた。昨年まではサイネージ機器やソリューションを中心に、サービスの提供スタイルを紹介しているものが多かったが、今年は実際にサイネージ運用が始まったり、試験提供に向けた具体的な提案であったりと、機器そのものよりもサービス/運用面をアピールする提案が多くなっていた。サイネージ環境をどう構築するのかではなく、サイネージを設置する場において、どのようなサイネージでどのようなコンテンツを流すのが効果的か。来場者がビジネスに沿って検討しやすいような具体例を紹介し始め、デジタルサイネージ市場が成熟期を迎え始めているようだ。

それでは会場内で目についたものを紹介していこう。

大規模サイネージや次世代型の関心も高まる

●シャープ

DSJ 2010の会場で、最も大きなサイネージを出展したのがシャープだ。インフォメーションディスプレイPN-V601は、ディスプレイ間フレーム幅6.5mmを実現した60V型ワイド液晶パネル。i3Wallとして、横6面×縦5面の壁面30面と、横6面×奥行4面の床面24面での表示を組み合わせてデモを行った。パネル1枚の最大解像度は1,366×768だが、壁面30面では8,196×3,840解像度での表示が可能になる。このパネルを使用して、NHKが制作したスーパーハイビジョン8K映像を表示していたが、生々しさが伝わって来るものだった。

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●SCALA

SCALAは、自由度の高いサイネージ表示をアピール。サインウォールとして展示したのは、斜めに配置した小型の液晶ディスプレイ18面を使用して、連続したサイネージが出力出来ることをアピールしていた。ディスプレイの解像度や配置方法に依存しないサイネージコンテンツを構築できる


●日本サムスン

日本サムスンは、エヌジーシーと共同で出展。ブース正面には46型ディスプレイを縦置きで菱形状に9面配置してサイネージ表示していた。また、縦横3面合計9面に配置したマルチディスプレイシステム「Samsung UD(Ultra High Definition Display)」を使用して、共同ブース出展の製品/ソリューション紹介を行った。ディスプレイ間フレーム6.7mmで、階段状の配置などにも対応していることを紹介した。このほか、52型裸眼立体液晶ディスプレイも参考出展した。

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●デジタルサイネージ特設ラウンジ

インテル、マイクロソフトが協力したデジタルサイネージ特設ラウンジには、世界に3台しかないというインテル インテリジェント・デジタルサイネージが設置され、関心が集まった。縦置きHDパネルと半透明のホログラフィックパネルの組み合わせで、サイネージ上部にあるカメラでサイネージ前に立つ人の特徴を解析、性別や身長などに応じてホログラフィックパネルに表示される情報をコントロールする。ホログラフィックパネルの先に見える製品をジェスチャーをもとに認識、詳細情報を表示することもできる。

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運用例が報告され始めた展示会場

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●エヌジーシー

エヌジーシーは、自社ブース以外にSCALAブースにも協力出展していた。タッチパネルディスプレイを使って実現したデジタルサイネージコンテンツは、福岡パルコが導入した「パルコタッチビジョン」。顔認識を行い、画面の前に人がいるときにだけ視聴者に訴求するためのタッチパネルコンテンツを表示する。トップページ各コンテンツは、フロアガイド、レストラン&カフェ、イベント&ニュース、PARCOカード、施設案内、モバイルタッチポイントの6種類。実際に画面にタッチしながら操作出来るようにしていた。


●日立製作所

SCALAブースで日立製作所は、コンビニエンスストアのローソンの店舗を模した展示を行った。6月9日午後のキーノート・パネルディスカッションで村井純氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)が「コンビニの店頭ガラス面は、雑誌が表に向けられているだけということも多い。これはサイネージにも有効なスペース」と話していたが、これを実現した展示だ。日立製作所のMediaSpaceと組み合わせて、都内300店舗のローソンで『東京メディア』を開始したことをアピールした。

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●大日本印刷

大日本印刷は、「巻き込まれ型インタラクティブサイネージ」を参考出展した。ビデオカメラが撮った自分の映像に広告が重なって表示されるものとなっていた。人物を切り抜き、別の映像の背景に重ねることも可能。デジタルサイネージ広告の前を通った自分が、広告に<巻き込まれる>ことでアイキャッチを演出する仕組みにより、人の足を止めさせて広告視聴を増やす誘導型の取り組みだ。

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●NTT

NTTは各種デジタルサイネージシステムを「ひかりサイネージ」シリーズとして展開。その中のLite Z-Fシリーズは、7型デジタルフォトフレームを活用したお手軽サイネージシステムだ。このサイネージに活用可能なデジタルフォトフレームを開発したのがジークス(東京都千代田区)だ。通常のデジタルフォトフレームは、動画再生に制約があることが多いが、AVI、MPEG1/2/4、DivX、Xvid、H.264、WMV9のビデオと、MP3、WAV、WMA9、AAC、AC3のオーディオを扱うことができることが特徴。iPadのブラウザからWi-Fiを使用してコントロール可能なことをデモしていた。シークスでは、iPadのサイネージアプリケーションも開発中とのこと。今後は、WindowsのスレートモデルやAndroid端末などのサイネージアプリケーションにも取り組んでいくという。

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小型PCのデジタルサイネージ利用を提案

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●アスク

アスクは、デジタルサイネージ向け小型PCプラットフォームにZotac製ミニPCを活用することを提案した。インテル製CULV(コンシューマ向け超低電圧版)デュアルコアCPUのPentium SU4100とNVIDIA製ION GPUのGT218を搭載したモデル

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に加え、インテル製Atom D510とインテルチップセットGPUのGMA3150を搭載したモデル、Atom D510とGT218を組み合わせたモデル、AMD製CPUのAthlon Neo X2 L325とATIテクノロジー製GPUのRadeon HD 3200を搭載したモデルを紹介した。いずれも、B5サイズ程度の小型ボックス筐体の省スペースタイプPCであり、ディスプレイの背面にも取り付けることが可能な大きさだ。NVIDIA製ION GPUを活用することで、フルHD再生可能なことを示した。


●エーキューブ/日本AMD

エーキューブと日本AMDは共同でブース出展。リモートデジタルサイネージと1PC多画面デジタルサイネージについて紹介した。リモートデジタルサイネージは、ATIテクノロジー製リモートグラフィックソリューションFirePro RG220で実現。ドライバによるダイレクトマッピングサポートを用いて2D/3D性能を保ったままネットワーク越しバーチャルマシンに直接接続してサイネージ表示できる(フルHDの取り扱いは2枚のカードが必要)。近日発売のグラフィックスカードとして紹介したのはATI Radeon HD 5870 Eyefinity 6だ。1枚で最大6画面の出力が可能になる。

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●コンテック

コンテックはSCALAブースで、ボックスコンピュータBX950/BX951を展示した。BX950/BX951は、FANレスCoreDuoプロセッサ搭載の組み込み用コンピュータ。厚み25mmのBX950は、幅35mmのスペースに設置可能。Windowsの組み込みOSを採用し、システムブート可能なコンパクトフラッシュカードスロットを2スロット搭載している。ゼロスピンドル設計であり、0~50度の環境温度範囲で使用出来る。BX951は現在開発中のモデルで、HD動画に対応したデジタルサイネージプレイヤーとして利用可能。冷却効果を高める放熱板を上面に配置している。

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S3Dのデジタルサイネージ利用の模索も始まる

●ピーディシー

デジタルサイネージへのステレオスコピック3D(S3D)活用への模索も始まった。ピーディーシーは、パナソニックが発売する二眼式カメラレコーダーAG-3DA1を使用して、3Dサイネージプロモーションへの取り組みを紹介した。デモは、AG-3DA1の映像を3D対応ディスプレイに表示させ、来場者に奥行き感を確認してもらう簡単なもの。AG-3DA1の視野にはコンパニオンとブース来場者が入っており、奥行き感がつかみやすいようになっていた。来場者はパンフレットをカメラの前にかざしたり、手を振ったりして、立体感の確認をしていた。

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●富士通

DSJ 2010と離れてしまうが、富士通も同時開催のINTEROPスペースで、S3Dに関連した出展を行っていた。参考出展ではあったが、「3D&映像検索技術を活かした映像蓄積/共有サービス」として紹介していたのは、コンテンツ共有や音声/テロップ検索といったメディア共有サービスの付加機能として、ダイジェスト作成、2D/3D映像変換、3D伝送をクラウド上で行うものだ。2D/3D映像変換、3D伝送部分についてはアストロデザインが協力している。マシン負荷の大きい2D/3D変換処理はクラウド上で行うことで、より手軽に3D映像がデジタルサイネージに活用できる可能性が出て来た。

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[IMC Tokyo 2010]▶

WRITER PROFILE

秋山謙一

秋山謙一

映像業界紙記者、CG雑誌デスクを経て、2001年からフリージャーナリストとして活動中。