東京港区のグランドプリンスホテル新高輪において、キヤノンが5年ごとに開催しているCanon EXPO Tokyo 2010が11月10日から12日の3日間開催された。会場はホテル内のほか、国際館パミールを貸切り、「くらし」「環境」「しごと」「あした」をテーマにビデオカメラやデジタル一眼などの映像機器のほか、プリンター、医療機器や環境配慮技術、企業向けソリューションなどの新製品や研究開発技術などキヤノンが取り組んでいる全てを披露する形になっている。来場者は招待者のみで一般の入場はできないが、連日多数の入場者があった。なお、Canon EXPOは、ニューヨーク、パリでも開催されており新製品を始めとした展示のほかセミナーなどなどで構成されたイベントとなっている。

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ビデオ関係の製品としてはXFシリーズやデジタル一眼レフカメラEOSシリーズ、放送用のレンズなどが出展されたいたが、今回のレポートでは通常目にすることができないコンセプト展示や技術出展、試作品などのうち映像関係にフォーカスして紹介していこう。

大型CMOSイメージセンサーが映し出す世界を覗いてみると…

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すでに新聞などで発表となった大型CMOSイメージセンサー。半導体製造では直径300mmのウェハにいくつものチップを生成するが、このセンサーは300mmのウェハで1つのセンサーを構成しており、世界最大のサイズ(20cm角)となっている。ちなみに、画素サイズもフルサイズのデジタル一眼に採用されているセンサーの約600倍の大きさとなっており、1Lux以下の照度でも撮像できる。0.4Luxの照度で60コマの撮像が可能。天体望遠鏡などのセンサーのほか、フィルムなど透過型の被写体をセンサーに密着させて読み取るなどの用途が考えられている。

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APS-Hサイズの1.2億画素CMOSセンサー。人間の目の受光細胞に匹敵する画素数とのことで、画素数は世界最高画素でサイズは2.2μm。一般に画素サイズが小さくなると感度が稼げなくなるが、実用感度をクリアするための技術が投入

APS-Hサイズの1.2億画素CMOSセンサーを搭載したカメラ。静止画から一部分をタッチして指定することで、その部分のHD画像を動画表示したり、高倍率電子ズームへの応用などが期待される。

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2/3型CMOSセンサーを搭載した4K解像度(約4,000×2,000ピクセル)のマルチパーパスカメラ。60fpsでの撮影が可能なほか、スロー撮影にも対応している。レンズは交換式ではないが20倍のズームレンズを搭載している。コンセプトモデルとのことだが、外観の完成度が高く発売間近とも思われたが、カメラ下の四角い箱状の中にはインターフェースなどが組み込まれており、記録系は内蔵されていないということで、製品化はまだ先とのことであった。

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ワンショットマルチバンドカメラ。通常のカメラはRGBの3色で撮像するが、このカメラは可視光を6色で撮像する。センサーは5000万画素で解像度と色判別能力を両立させている。色フィルターはベイヤーに似た配列で、このカメラ専用の処理回路でモニターなどへ出力している。正確な色情報の伝達や保存などが必要な用途への応用が考えられるとしている。

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  水平360°パノラマカメラ。半球状の非球面ミラーの映像を5000万画素のCMOSセンサーで撮影し、展開したものをディスプレーしていた。同様な形式のパノラマカメラはすでに商品化されているが、半球ミラーを非球面化したことと5000万画素のセンサーにより高画質化を実現している。

高精細ディスプレイの進化

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30型の8MピクセルLCDディスプレー。広視野角と色域、諧調表現など映像制作やデジタルシネマ分野での業務用途として活用可能。バックライトはパワーLEDを選別して採用しており、LEDの分光ピークやLCDの色フィルターなど最適化を図っているという。Adobe RGBとデジタルシネマ色域をサポートしている。

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17型業務用フルHD液晶ディスプレー。独自の画像処理エンジンにより高精細、広視野角、広色域、高階調性能を実現。SMPTE-C、ITU-R BT.709といった放送規格にも対応している。試作品のため、HD-SDI入力のみだが、商品化に当たってはHDMIなどの入力や波形・ベクトル表示機能、コンパネなどまだ課題が多いという。バックライトはLEDだが、どのくらいの輝度が必要かなど盛んにリサーチしていたので、意外に商品化は近いのかもしれない。

MR(ミックスド リアリティ)技術の活用とは?

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カメラウォークイン。MR(ミックスド リアリティ)技術の活用事例として、3D-CADで設計されたデジタルカメラの内部を自由な視点で観察できるというもの。仮想現実だが、実際の映像との重ね合わせが行えるので、よりリアルで現実と仮想をシームレスに体験できる。

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MR技術を応用したオフィスや作業のデモンストレーション。来場者が体験できるようになっていた

MR技術のキーとなるHMD。仮想現実を投射するディスプレーのほか、位置情報を検出するセンサーやカメラなどが組み込まれている。一般のHMDと異なるのは実際の映像もスルーで見ることができることであろう。視野角は水平41°、垂直31°で1280×960ピクセルの表示解像度、専用のHMDコントローラーや独自開発のMRソフトウェアなどで構成されている。

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カメラを置くだけで、カメラへの充電と収録された画像や動画の取り込みが自動的に行うことができるメディアステーション。収録された画像や動画は顔認識による分類や日時、場所などを元に自動的に分類整理されるようになっている。

メーカーとして製品技術は重要だが、所詮は人が使う道具である。操作性やデザインなどマンマシーンインターフェースなどもプロダクトの良し悪しを決定する重要な要素となる。イメージクリエーションのコーナーでは、こうしたコンセプトデザインのモックが展示されていた。

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ワイヤレスMR HMDコンセプト。左は3Dカメラとイメージパレット

SLRスタイルコンセプト

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