9月14、15日の2日間にわたり「環境と3Dソリューション展&新製品発表会」が「Go Beyond!! ~ネクストステージへ~」と銘打って東京有明のパナソニックセンターで開かれた。同展示会では、タイトルにある3Dカメラだけではなく、Panasonicの誇る大判素子レンズ交換式業務用カメラ「AG-AF105」の関連機器やサードパーティ展示なども行われ、活況を呈していた。今回は、一参加者としての視線から、同イベントをレポートして行きたい。

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会場の風景。新製品が並ぶメイン会場は新作カメラを使ってテスト撮影も可能になっていた

3Dカメラの新作「AG-3DP1」

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新型S3Dカメラ「AG-3DP1」。中型ショルダータイプのフルHDサイズ、10bitフル画質カメラだ

まず、話題をさらっていたのは、同イベントのタイトルにもなっている放送用一体型二眼式3Dカメラレコーダー「AG-3DP1」だ。これは、中型のショルダータイプの2眼立体カメラで3,045,000円という、立体視中型カメラにしては挑戦的な値段での新製品発表となった。

AVC-Intraコーデックによるテープレスカメラであり、1920×1080フルピクセル・10 bit 4:2:2フルサンプルの従来はRIG式の2台カメラ体制でしかあり得なかったような高画質3D収録を実現した、高性能S3Dカメラである。これにより、今まではRIGによる2台カメラ体制でしか実現しなかったような場面でのシングルカメラ撮影が可能になり、このカメラが使える場面においては、一気にワークフローの改善が見込めることになる。

もちろん、レンズ間の距離は固定式であるから、従来のRIGによるS3Dカメラの必要性が無くなったわけではないが、例えば、アクションシーンや乗り物上からの撮影、ステディカムによる移動撮影などでは、この「AG-3DP1」の独壇場となる事が予想される。

小型業務カメラの新作「AG-HPX250」

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小型ハンドヘルド機「AG-HPX250」。やはり、定番のこのサイズのカメラは必要不可欠だろう

このイベントでは、8月末に発表されたばかりのP2カード収録ハンドヘルド機「AG-HPX250」も展示されていた。このカメラは、レンズ内蔵型小型ハンドヘルド機ながらもショルダー中型機並みのP2HDによるAVC-Intra収録が可能で、さらに22倍のズームレンズを内蔵。カム式ズーム・フォーカス・アイリスの3リングにより交換レンズに近いマニュアル操作が可能となっている。もちろん、同社特有のシネライクガンマモードも搭載している。価格帯も708,750円とハンドヘルド機とショルダー機の中間的な位置づけだが、値段に合う性能を持ったカメラだと言えるだろう。

Panasonicの業務カメラでは、同価格帯にレンズ交換式単板大型素子カメラの「AG-AF105」が存在しているが、シネマ撮影に特化した「AF105」とは異なり、この「HPX250」は放送業務や取材、記録映像収録への特化を前面に押し出しているのが特徴だ。

サードパーティで盛り上がる「AG-AF105」!

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AG-AF105のサードパーティ機器会場は、大盛況!

イベントタイトルにこそなっていなかったが、今回一番人を集めていたエリア、それが「AG-AF105(米国版AG-AF100)」のサポートおよびサードパーティエリアだ。明るい通路に数多くのブースが並び、周囲はさながらお祭りのような華やかなムードであった。

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ショルダーサポート可能な「GENUS GVCSMK」はAG-AF105ユーザーにとって実に魅力的な製品

サードパーティエリアとは言いながらも、新製品や注目する発表は目白押しであった。たとえば、定番のマンフロットブースでは、AG-AF105に最適の新型カメラサポート「GENUS GVCSMK」が出展されていた。これは、従来のカメラサポートロッドの後部を延長し、そこにショルダーストックとウェイトバランスをつけたもので、そのままではバランスの悪いAF105を、安価に安定性の高いショルダー機へと変えることの出来る魅力的なシステムだ。

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HORSEMANのティルト&シフトレンズコントロールシステム「ホースマンTSプロ」

定番のサードパーティ製品ももちろん健在。定番中の定番とも言えるHORSEMANのティルト&シフトレンズコントロールシステム「ホースマンTSプロ」は、相変わらずの高性能を見せつけていた。

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「AG-AF105」の世界的なブレイクに連れ、続々と、新しいサードパーティ製品が出続けているのも同カメラの魅力をさらにます大きな要因だ。中国ではKIPON社から数多くのレンズマウントアダプタが出され、また日本でも、多くの新進気鋭の企業から数多くのサポートグッズが出されている。その中でも今回注目を集めていたのが、カメラ機材制作ユニット「TV-UNIT」による「AG-AF105」向けの様々な新作機材だ。同グループはカメラ機材に関わる中小企業の連合体で、今回は「MUKカメラサービス」のブースを通じて様々な野心的な展示を行っていた。同グループでは、フランジバックの浅い「AG-AF105」におけるマイクロフォーサーズの特長を生かし、様々なオールドレンズを装着しそれを実用する仕組みを考案する反面、HDMIからのワイヤレス送出などの最新鋭の仕組みにまで挑戦し、多くの人を釘付けにしていた。こうした装備によって「AG-AF105」を放送用ズームレンズ一本でTVカメラライクに運用する事も可能となり、また、新しい表現方法を探求することも可能となるだろう。

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「MUKカメラサービス/TV-UNIT」HDMIからのワイヤレス映像送出が可能だ。近日正式発表予定とのこと

いずれにしても、東日本大震災や福島原発事故に伴う不景気をみじんも感じさせない盛り上がりで、今年は、この「AG-AF105」がロー~ミドルレンジ業務カメラの主役となっていくことは間違いないと確信した(いや、ひょっとすると、装着機器次第ではハイエンドレンジも食えるのではないかとも思う)。筆者の率いる映像制作会社「アイラ・ラボラトリ」でも、どんどんこの「AG-AF105」を使い込み、また、周辺機器を導入して、さらなる活用を進めていこうと強く感じたイベントであった。

WRITER PROFILE

手塚一佳

手塚一佳

デジタル映像集団アイラ・ラボラトリ代表取締役社長。CGや映像合成と、何故か鍛造刃物、釣具、漆工芸が専門。芸術博士課程。