さる10月30日、東京・秋葉原のローランドイベントホールにおいて、来週11月13日から開催されるInterBEE2013への新製品出展製品についての発表が行われた。6月に開催された内覧会で披露された製品のほか、マルチフォーマット・ビデオ・プレゼンターやオーディオ・レコーダーといった製品が今回のInterBEEで初披露となる。
PR-800HD
マルチフォーマット・ビデオ・プレゼンターPR-800HDは、3G-SDIやHDMIに対応した非圧縮1080p対応となっており、いわばPR-80がHD対応になったものといえそうだ。操作などのUIもPR-80譲りの直感的なものとなっており、PR-80ユーザーは移行してもすぐに操作できるだろう。デモでは実際に操作してみたが、クリックしてからの出画レスポンスは素晴らしく、瞬時に映像が出てくれる。コンサートやスポーツなどのイベントなどタイミングに合わせた出画を要求されるシーンも多く、こうした要求に応えたものと思われる。現状ではサムネイルに画像が表示されないといったバグもあったものの、全体としての完成度は高いものであった。イベント映像はパネルやプロジェクターなどディスプレーの発展もあり、大型かつ複雑化している、マルチで4Kあるいはそれ以上のレゾリューションへの対応も必要な時代だ。PR-800HDは、複数台同期(TCおよびリファレンス)運転することで、4K8Kはもちろんそれ以上も対応可能だ。また、映像素材のインポートもUSB3.0対応なので、高速転送可能なほか、SDIやHDMIからのインジェストも可能となっている。
AR-3000SD
オーディオ・レコーダーAR-3000SDは、1993年のAR-1000から始まったARシリーズの最新機種で、LANポートの標準搭載やプログラム・タイマー機能、編集機能などを搭載することで、より柔軟なシステムを構築することが可能になった。すでにARシリーズはショッピングモールや空港・駅などの施設で自動アナウンスやBGM再生などで多くの導入実績があり、信頼性などで定評があるが、SDメモリーカードと従来機との互換性のあるCFカードスロットを備えている。施設関係の設備機器は接点やRS-232CからLANによる一括管理が進みつつあるが、AR-3000SDは、MIDIを含め標準で様々な制御が可能となっている。なお、プログラム・タイマー機能はスタンドアローンで時間単位でのスケジュールプログラムが可能なほか、週間および年間でのスケジュールもできるようになっている。
こうした新製品のほか、今回のInterBEE出展で特徴的なのは、他社とのコラボレーションによるシステム提案がより積極的になったことだと思う。たとえば、VR-50HDによるインターネット配信ソリューションを紹介するコーナーでは、パナソニックのカメラのほか、MIDIからタリー接点信号に変換するトモカ電気のインターフェース、さらには北海道日興通信のニクサスVR-50HD専用のテロッパーとのコラボレーションが展開されていた。InterBEEでもこうした他社でのブース展開も行われる模様で、他社製品との組み合わせ運用が必須となる業務用分野へより積極的な展開を図っていくようだ。
ローランドは毎年オーディオとビデオの2か所にブースを出していたが、今回1か所に集約されている。InterBEEの会場図を見るとプロオーディオと放送機材の境界線上にはローランド以外にもオーディオとビデオのソリューションをもつメーカーがこの境界線上周辺に出展しており、他社も含めInterBEEへのブース展開も変化の兆しがみられる。
インターネット配信ソリューションコーナー。パナソニックのカメラとMIDIからタリー接点信号に変換するトモカ電気のインターフェース、北海道日興通信のVR-50HD専用テロッパーとの組み合わせてのデモの様子。パナソニックではこうしたシステムをスターターパックとして文教やCATVなどの販売をしたいとのこと
トモカ電気開発のタリーインターフェース。現状多くのビデオ機器と同様接点出力だがケースの形状を含め導入先へのカスタマイズも可能という
カメラに仮設置されたタリーランプ。シューマウント固定やランプなど装着するカメラなどに応じた変更は可能
VR-50HDによるインターネット配信ソリューション。VR-50HDは、3G/HD/SD-SDI/HDMIのほかRGB/コンポーネント、コンポジットさらにはUSB3.0インターフェースを装備しており、様々な入出力に対応したマルチフォーマット対応となっているほか、各映像入力にはスケーラーが装備されているのが魅力の一つとなっているが、放送業務用としてはタリーがないなどスタジオ運用には欠点もあった。今回トモカ電気が開発したタリーインターフェースにより、VR-50HDのMIDIからタリー接点出力が可能になり、会場ではカメラにタリーを付けたものがデモされていた。なお、このタリーインターフェースは試作品で、タリーランプの形状やインターフェースボックスなどは今後変更の可能性があるという。
朋栄のテロップシステムと組み合わせたプロダクションシステムのデモ。学校や企業、地方局など小規模な放送システム運用を想定したシステムの提案。将来的には朋栄のテロップシステムからVR-50HDをコントロールできるようになる模様。こうした放送を前提としたシステムとなるとTバーなどもほしくなるが、MIDIからのコントロールによりオプションとしての可能性はあるという。
ライブミキシングコンソールM-200i。今年になってREAC Driverやシステムプログラム、V-Mixer DriverのほかPCからプロジェクトファイルを編集したりM-200iをリモートコントロールするアプリケーションソフトウェアM-200i RCS Ver.1.020 for Mac OS XおよびM-200i RCS Ver.1.020 for Windowsなど様々なソフトウェアバージョンアップが完了したHDビデオワークステーションDV-7HD。キー合成や各種効果の追加のほかラウドネスメーター、ボイストランスフォーマーなどバージョンアップにより機能強化された
スキャンコンバーターVC-1-SC。3G/HD/SD-SDI、HDMI、RGB/コンポーネント、コンポジット入力を3G/HD/SD-SDI、HDMIへ変換出力可能なコンバーターで、スケーラーを搭載しており、アップ/ダウン/クロス/スキャンコンバート、フレームレート簡易変換、I/P変換、アスペクト変換に対応している
別室で行われていたスキャンコンバーターVC-1-SCの機能性能比較。VC-1-SCはUSBで接続したPCから画面位置や画像のレベルなど細かな設定を行うことが可能で、ビデオ機器だけでなく規格が厳密でないPCなどの映像出力でも正確な画面位置調節や色飛びなど細かな設定を行うことができる
業務用でこうした機器を使用する場合に問題になりがちなDC入力ジャック。抜け止めの工夫はねじ止めのほか、本体にインシュロックを通せる穴があけられている。なお、ラックマウント用のパネルもオプションで用意されており、VC-1-SCだけでなくVCコンバーターシリーズをラックマウントすることが可能