旅のお供にOsmoは最適

先日からリリースが始まったDJI社Osmo。手持ちジンバルカメラとして一躍名を馳せている一品である。今回は、イタリアへの出張があったため、ミラノとベネチアでテスト撮影を行なってみた。なお収録時に使用したものは、発売前のOsmo試作機であり製品版とは異なるが、出荷直前だったためかなり仕上がっていたものだと思われる。このことを踏まえてイタリアで納めてきた作例をいくつか見ていこう。

カメラとして優れた基本性能も着目すべき

これはこの時期には貴重な快晴のベネチアで水上バスに乗った際の動画である。サンタルチアの駅からリアルト橋近くまでを船縁から撮影しているが、船舶特有の大きな揺れを見事に吸収し、とても見やすい映像になっている。01:45あたりから大きめの船とすれ違うのだが、航跡のうねりをものともせず、画面の中、路面の高さがビシッと張り付いたかのように見える。

そうした機能に目を奪われてしまいがちだが、高いコントラスト、嫌みの無い解像度感など、カメラとして優れた基本性能も着目すべきポイントである。また、最後03:00を過ぎたあたりから画面右側の多くが暗くなるのだが、これに引きずられることなく風景の明るさが一定となっており、明るさの制御もまた撮影者の意図と合致した動きになっている。

水平方向の動き制御が優秀

次は“ため息橋”から周囲を撮影した動画である。スイッチによる自動的な回転ではなく、撮影者自身がゆっくりと回転しているが、それを感じさせないのは水平方向の動き制御が優秀な証であろう。はじまりから画面内に朝方の太陽がそのまま映ってしまっており、デジカメならば露出補正をしないと難しい画面であるが、とても適切な明るさの絵に仕上がっている。露出の制御も素晴らしいが、逆光がこのように綺麗に撮影できるのは、画像処理エンジンだけでなくレンズそのものも優秀なのだろう。

00:20をすぎるあたり、画面から太陽がはずれると徐々に画面全体が明るくなる。遠くの鐘楼に注目してみて欲しい。滑らかで違和感のない露出制御の様子が判る。

次はその“ため息橋”をくぐるゴンドラの様子である。やはり気にしなければ気がつかないが、繊細な露出制御によりとても見やすい映像になっている。またコントラストの高い映像は、建物の壁面の明部、暗部の美しさを引き立てている。色の傾向や色ノリはある程度画像処理エンジンで辻褄を合わせる事が出来ると思うが、こうした映像は地道に優秀なレンズでないと実現はできない。

次の動画は大型客船が入港してくるところを撮影したものである。こちらでは撮影者がOsmoを横に向けて水平に移動してみたものである。00:40から十数秒ほどになるが、水平線はきっちり張り付いたかのように安定しているものの、撮影者の移動に伴う上下動が影響し、近くの桟橋で少し上下の揺れが目立ってしまった。原理的にいたしかたない部分ではあるが、慣れてくるとすり足でかなり軽減ができ、また、FPVのゲームの画面に慣れている場合は却って違和感がないかもしれない。

次の動画はサンマルコ広場のむこうに夕日が沈んで行くところを手持ちで2分ほど撮影したものである。少し暗い水面の質感がなまめかしくて見入ってしまうが、サンプル機のせいか、すこしおかしな挙動も目についた。撮影者はパンに相当する操作をしていないのだが、動画の最初、左端に見えていた杭が、16秒ほどで見えなくなってしまっている。

更に1分も過ぎると左端に見えていた街灯も左側に消えて見えなくなってしまった。水平方向の向きはジャイロセンサーや加速度センサーだけでなく地磁気センサーの情報を拾っているためだろうか、徐々にドリフトしていく現象が見られた。上下方向ではこうしたドリフトがないことから、地磁気センサーが原因かもしれない。2度ほどジンバルのキャリブレーションをしてみたが、現象は改善されなかった。

もうひとつ気になった点は、パン操作をしてOsmoを90度回したとき、最後の10度から15度の回転が非常にゆっくりとしており、加速のパラメーターをいじっても改善されず、また最終的に90度まで到達しなかったことである。その時点でトリガーをダブルクリックするとすぐに前方に向くため、これは地磁気センサのドリフトといった問題ではなさそうである。緩やかに回転を止める仕組みが過剰に働いてしまっているのかも知れない。ともに些細なことではあるが、商品版で改善されていることを期待したい。

優秀な露出制御に期待

ここからはミラノ周辺で撮影した動画である。これはミラノで有名な教会堂(ドゥオーモ)を地下鉄の中から歩きながら撮影したものである。徐々に教会堂が見えてくるに従い、優秀な露出制御が仕事を始め、また近くの階段の揺れも目立たなくなる。

02:00前後では手近に物体がないため、歩行による上下動が目立たず比較的安定した画面になっている。歩きながら撮影する場合は、こうしたシーンを選ぶのもテクニックのひとつになるだろう。

また02:43あたりからOsmoを左に振る動作に変わるが、これも違和感のない動きになっている。Osmoに限らずこうした動きは視聴者が酔いやすい絵になりがちだが、通常のムービーよりも格段に気遣いが少なくてすむのはありがたい。

なお、詳細設定で水平方向の加速のパラメータを小さくすることで急激な変化をOsmo自身が避けてくれるようになる。スポーツなどの動きの速い被写体を追う場合を除き、視聴者に優しい映像を得るためにこのパラメータをいじってみることは有意義だろう。

注意点としては、あまり加速を落とした状態でゆっくりすぎるパン操作をすると、何かの相性が災いし、少し滑らかさに欠けるパンになってしまう。そうした場合は加速のパラメータをもう少し上げるか、自らがパンする速度をすこし早めると良い。

これは教会堂を横から撮影したものである。壮大さに感動し、広角のデジカメで撮影をしても、その壮大さが伝わることは少ない。もちろん技術の問題もあるが、Osmoを使い、なめるように見上げながら撮影した動画のその壮大さの再現性は技術を超えて、Osmoならではの醍醐味ではないだろうか。

この動画は夕日が沈んだ直後で結構あたりは暗いのだが、画像が荒れたり解像度が落ちたりすることもなく、素晴らしく綺麗な映像になっている。Sony製の優秀なCMOSによるところも大きいと思われるが、トータルでこうした映像を作る力はドローンメーカの製品とは思えない仕上がりだ。

Osmo初撮影の結果は…

次の動画は順番が逆だが、撮影者がはじめてOsmoで撮影した映像である。歩く際に気を遣わず、すり足もマスターしていないため、ぴょこぴょこした上下動が見づらい。また、パンの速度が早すぎたり、左右と上下の動きを勝手気ままに組み合わせるなど、視聴者が疲れる映像となっている。

従来のムービーでも同じことだが、パンもチルトもゆっくり、視聴者が予測できる動きをすることに徹すれば、Osmoは有能なアシスタントとして働いてくれるだろう。最初に撮影したものから先に上げた作例映像を見るとその上達具合がわかるだろう。少しコツを掴めば誰でもワンランク上の映像が手に入るのである。

静止画は、どうだろう?

タイトル画像にも使用した一枚写真のサンプルについても言及しておこう。サン・マルコ広場から鐘楼を見上げたところであるが、動画で感じた滑らかさとは異なり、若干ざらざらした感じを受けた。デジカメによっては塗りつぶしたように綺麗で滑らかな空になってしまう場合もあるが、このあたりは好みが分かれるところであろう。

なお、DNGフォーマットに対応しているため、Photoshopなどでいじれる方はこちらを利用すると良い。若干コントラストを控えめにして現像すると、少し過剰におもえたエッジ処理が軽減され品が良い感じになる。同時に少し色が浅くなるため、簡単には併せて彩度を上げると良いだろう。

最後に付け加えておくと著者は、プログラマーであり映像に関しては門外漢である。そう一素人でしかない。しかしこの映像の完成度は目をみはるばかりだ。少しのコツをつかめば、これまで大規模な機材で、一部の人のみしか撮影できなかった技術が、一人で行えることになるのは驚くべきことではなかろうか?ぜひ旅のお供にOsmoを携帯することは言うまでもない。

Osmo公式サイト:DJI
Osmo購入サイト:ePROSHOP

WRITER PROFILE

編集部

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。