VJパフォーマンス〜日本と海外の違い

2015年、12月11日(金)と12日(土)にシンガポールで開催されたアジア最大規模のダンス・ミュージック・フェスティバル「ZoukOut(ズークアウト)」。2013年から同イベントに出演をしているVJ MANAMI氏に、海外を含めたVJシーンについてインタビューを行った。

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VJ MANAMI氏

──ZoukOutはどういったイベントなのですか?

MANAMI氏:シンガポールにZOUKというクラブがありまして、そのクラブが主催しているイベントになります。10年以上の歴史があるフェスティバルで、アジア圏だけではなく色々な地域から2日間で延べ6万人を越える来場者が集まっています。ZOUKが国際的にも評価が高いクラブということもあって、知名度と関係なく、呼ばれるアーティストの質が高いことで有名です。ZoukOutに出演したアーティストは、翌年より大きなフェスに呼ばれたり、話題になったりと、ある種、登竜門的なイベントとしても注目されています。

──日本からも多くのVJが参加していますね。

MANAMI氏:そうですね。特に今回は、海外での活動も多いVJの皆さんが、ZoukOutに集まった感じがありました。海外はしっかりとVJのパフォーマンスをチェックしているので、呼んでもらえる嬉しさと緊張感が同居している感じがあります。

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機材ラックの上など狭い場所がブースとなることも多い

──パフォーマンスをする上で、日本と海外の違いは大きいですか?

MANAMI氏:海外であれ日本であれ、すべてのイベントで全力を出すためにパフォーマンスを行っていますが、海外の方が「そこまで見ていたか」というような反応があって驚かされることが多いですね。クレジット表記含め、VJをアーティストとしてちゃんと扱ってくれているという点では、海外の方が進んでいる部分はあると思います。

──海外でVJを行うにあたっての苦労などはありますか?

MANAMI氏:現地スタッフとのコミュニケーションに関しては、共通の専門用語が多いので技術的な用語や知識があれば、さほど苦労することは無いと思います。どんどん、いろんなVJが海外でパフォーマンスするようになってほしいです。

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ステージに設置された大型LED

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LEDへの映像送出に使用されたRolandのV-1HD

──機材面での苦労などはありましたか?

MANAMI氏:海外の場合は、特にリクエストしたもの以外は用意されないので、しっかりと機材リストや接続図などを準備して、連絡を取ることが重要だと思いました。現地ですぐに買うことも難しいことが多いですしね。今回は、ビデオミキサーとしてRoland V-1HDを持ち込んだのですが、飛行機移動の場合、荷物重量のチェックが厳しいので、機材が軽くて小さいことは大変助かりました。

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会場に設置された変形LEDパネル

──会場の機材構成は、どういったものでしたか?

MANAMI氏:2000ピクセル以上ある特設の大型LEDに映像を流しました。4組のVJが出力した信号をV-1HDにまとめてスイッチングをしました。プロジェクターがメインだった頃は、アップコンバーターでSD素材を使ったりもしていたのですが、最近はLEDパネルが増えてきているので、VJ素材もハイビジョンで作っています。

──ハイビジョンでVJを行う上でのポイントはありますか?

MANAMI氏:VJの場合、レスポンスが重要なので素材やシステム全体を1080/60Pにすることを心がけています。V-1HDは、入出力のディレイも低遅延で、ストレスが無かったのも良かったですね。

──VJ活動以外にも、ファッションショーなどでも映像演出をされていますよね。

MANAMI氏:活動の土台はクラブでのVJにあると思っているのですが、その活動を通じてファッションショーやコンサートなどのオファーを頂くようになりました。映像素材の制作から送出のオペレートまで、1人で行えるのでショーのイメージに合わせて、きめ細やかな演出を行うことを心がけています。

──VJは、いつごろ始められたのですか?またきっかけは?

MANAMI氏:友人に連れて行ってもらったイベントで、VJパフォーマンスを見たときにその場で映像を作り上げていく様子に感動して、2010年ごろから始めました。

──それまでにも映像を作られていたんですか?

MANAMI氏:いいえ、まったく知識が無かったので、VJの人たちに声を掛けて購入する機材から使用するソフトまで、イチから教えてもらいました。とにかく経験をと思って、最初の頃はバイトをしながら週5でVJをしていました。前知識が無い分、貪欲に活動をしていましたね。

──5年の活動で、規模がどんどん大きくなられていますね。

MANAMI氏:自分の中では、一つ一つの現場を大事に活動させてもらっていますが、転機としては、DJのYAMATOとの活動が大きいかもしれません。専属VJとして、サマーソニックなどの大型フェスに参加させてもらったことで幅広い分野での評価につながったと感じています。

──今後の活動について教えてください。

MANAMI氏:色々な国でやってみたいですね。自分でプレイするだけでなく、ほかのVJを見ているのも好きなんです。素材作りや展開の仕方など、プレイの仕方に刺激を受けますし、いろんなアーティストと触れ合っていくことが出来ればと思っています。

──これからVJを始めたいと思っている人にメッセージをお願いします。

MANAMI氏:体育会系なところはあるけど、飛び込んでみたら教えてくれるので気になったVJが居たら声をかけてみると拡がると思います。あと、機材の最低限な知識を入れておくことは、活動を続ける上での重要なポイントになると思います。私自身も最初は、端子の種類などわからないことが多かったのですが、現場を経験していく中で知識を付けられたことが、ファションショーを始めとした色々な現場での役に立っていると思います。まだまだ私も若手ではありますが、VJ業界への恩返しも含めて、いつか入門者向けのセミナーとか体験イベントみたいなことが出来たら良いと思っています。

■Manami Sakamoto / VJ MANAMI

2010年活動開始。数少ない女性VJとして、WOMB、ageHa、VISION,AIR等、主に都内のCLUBで活動。

わずか3年で早々たるDJと共演。海外アーティストは
SVEN VATH,MAURO PICOTTO,DENIS FERRER,HERNAN CATTANEO,OCTAVE ONE,FRANK LOWBER,CASSY,ROBERT DIETZ,PROTO CULTURE,DERICK MAY,KEVIN SAUNDERSON,LEN FAKI,ROMAN FLUGEL,2000 AND ONE,TOBI NEUMANN,GARY BECK,NINA KRAVITZ,DAMIAN LAZARUS,MAGDA
国内でも、
KEN ISHII,SHINICHI OSAWA,TAKKYU ISHINO ,DJ EMMA,SUGIURUMN,DJ NOBU,砂原良徳,A.MOCHI,DJ SODEYAMA,KO KIMURA,Q HEY,MAYURI,SATOSHI OTSUKI, TASAKA,KAITO,DJ OGAWA,GONNO,YAMATO,TOMOKI TAMURA,TAKUYA,KIKIORIX

等と、音楽ジャンルに偏らないスタイルで活動している。エレクトリックミュージックを中心に様々な音楽に触れる事で、その音楽の特徴をヴィジュアル化し、更に全く別の音楽に取り入れる事で新しい科学反応をおこし、個性的で深い表現をスタイルとしている。

2013年、ageHaで毎月行われTechno fanから絶大な人気を誇るパーティ「CLASH」にレジデントVJとして抜擢され、また2013,2014年と続きシンガポールで行われる3万人規模の野外フェスZOUKOUTに出演。

2014年にはイギリス / ロンドンでVJ TOURを敢行し成功を遂げる。 VJ活動と並行して、ラグジュアリーブランド、ファッションショーのショー映像、ミュージックビデオの制作等、映像作家としても精力的に活動の幅を広げている。

http://manamisakamoto.com/

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編集部

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。