カタログスペックには記載されていないVARICAM LTの魅力を再発見

VARICAMLT_userinterview_2394

VARICAM LTは、NAB2016のパナソニックブースに出品され注目された。小型軽量ということもあり、ドローンにに搭載されていた

今年の3月に発売となったVARICAM LTは、VARICAM 35と同じMOSセンサーを搭載しており、14+ストップのワイドレンジかつ広色域で4K解像度の映像を収録可能なカメラだ。今回、VARICAM LTユーザーである撮影監督 倉田良太氏と、パナソニック株式会社 AVCネットワークス社 イメージングネットワーク事業部 商品戦略企画部の岡林孝志氏に、カタログスペックに記載していないVARICAM LTの魅力的なポイントを交えてお話をお伺いした。

VARICAMLT_userinterview_4110

写真左:撮影監督 倉田良太氏、写真右:パナソニック VARICAM担当 岡林孝志氏

――VARICAM LTの特徴やVARICAM 35との違いについて紹介をお願いします。

岡林氏:VARICAM LTは、VARICAM 35と同じスーパー35mm MOSセンサーを搭載しています。これにより、14+ストップの広ダイナミックレンジと広色域のほか、ISO800/ISO5000のデュアルネイティブISOを実現しています。またシリーズで初めてEFレンズマウントを標準採用し、オプションでPLレンズマウントにも対応しているほか、IRフィルターが着脱できるようになっており、闇夜での生態撮影や幻想的なIRフォトグラフィーなどにも対応できるようになっています。

VARICAM 35との違いとしては、4K/120p記録や4K出力ができないことと、メイン記録のexpressP2カードスロットが1つで、プロキシ記録用のSDカードスロットが1つになっているところです。

――EFマウントのデジタルシネマ用のレンズもありますし、映画の業界では特殊となるような広角レンズや望遠レンズ、スチル用レンズなど、リーズナブルな価格のレンズも使えますね。

倉田氏:ほかにもCarl ZeissのOtusやMilvusなども魅力的です。何をどう撮るかによりますが、選択肢の幅が広がりますね。

――EFマウントのレンズなら何でも使えるのでしょうか?また、超広角が使えないなどの制約はありますか?

岡林氏:特に制約はないですが、制御に関してはレンズに依存する部分もありますので、動作確認済のレンズをWebにて公開していますので、そちらを確認していただくとよろしいかと思います。

VARICAMLT_userinterview_4271

標準仕様のEFマウント

VARICAMLT_userinterview_4270

オプションのPLマウントはユーザー交換が可能

――アイリスのコントロールはカメラ側で行うようですが、どのくらいの精度でしょうか。

倉田氏:レンズ側の対応にもよりますが、実際に操作した感じではマニュアルとほとんど遜色のないスムーズな操作が可能だと思います。

――PLマウントにも交換できますがこれはユーザー交換可能ですね。IRフィルターがかなりセンシティブな微妙な部分なので、ファクトリー交換でしょうか。

岡林氏:IRフィルターもユーザー交換対応です。ネジ3本で簡単に着脱できるようになっています。

倉田氏:作業自体は単純なんですが、センサー部分なので、細心の注意が必要ですね。ドライバーの先でセンサーを傷付けたりしないかとか、特にホコリは気になります。工場のようなクリーンルームではありませんからね。

岡林氏:センサーの前に保護フィルターがあるので、クリーンルームは必要なく、通常マウントを扱うのと同等の注意で大丈夫です。

VARICAMLT_userinterview_IR

IRフィルターは3本のネジで着脱可能

VARICAMLT_userinterview_1130061

赤外線カットフィルター(左)を取り外し、赤外線撮影用フィルター(右)と交換することで、赤外撮影対応カメラになる

――4K出力ができないということはRAWには対応していないということでしょうか。

岡林氏:2つBNCの出力コネクターがあり、これを利用してRAW出力に対応する予定です。2016年9月に対応ファームウェアのリリースを予定しています。

――どのようなフォーマットですか?片方からG、もう片方からRBでしょうか。Gの出力をつかってモニターできるといいですね。

岡林氏:SDI信号上に弊社独自の形式でRAWデータをマッピングしている為、直接モニターする事は出来ません。

倉田氏:モニターが4K RAW入力に対応し、4Kモニタリングできたらいいですね!

VARICAMLT_userinterview_4290

2つのHD-SDI出力が装備されており、この端子を使ってRAW出力に対応するという

――ISO800とISO5000のデュアルネイティブISOということですが、このセンサーは賞を受賞したセンサーですね。

岡林氏:2015年度の米国HPA(Hollywood Post Alliance)優秀技術賞(Engineering Excellence Award)を受賞しました。画素ごとにISO800用とISO5000用の2つのアンプを搭載していて、ISO5000でも優れた描写が可能です。

――デジタルカメラのセンサーは1つなので、フィルムカメラでいうと1種類のフィルムしか使えないというイメージですが、2つの独立したアンプをセンサー内に搭載しているということはISO800とISO5000の2種類のフィルムを搭載しているのと同じようなものですね。ISO800とISO5000では描写に違いはないのでしょうか。

倉田氏:通常感度のフィルムとISO5000の高感度フィルムを1台のカメラで使い分けできるといっていいと思います。描写はわずかにISO5000の方が柔らかい印象で、個人的には好みの描写です。感度5000という高感度として考えるとノイズも少なく(粒状性も良く)高感度で撮影する事に躊躇わなくていいと思います。

VARICAMLT_userinterview_sensor1

画素ごとにISO800用とISO5000用の2つのアンプを搭載することで、ISO5000でもノイズの少ない優れた描写が可能

――ISO5000ならほとんど照明なしで撮影できますよね。

倉田氏:確かに高感度=照明のない暗い所で撮影できる、ということではありますが、それよりも低照度でのライティングという、今までとは違った世界が広がるように思います。

――大きな照明器具からLEDライトのような小さな照明器具でライティングできるので省エネとかそういう物理的なこと以外にということですね。

倉田氏:小さなLEDライトでもカメラの感度が高いので相対的に大きな照明器具に匹敵する光量となりますので、ライティングの自由度は計り知れないのではないでしょうか。

――今までとは違ったライティングテクニックが駆使できるということでしょうか?

倉田氏:映画撮影では通常照明部と共に明るさやバランス、コントラストなど、イメージした画になるように作っていきますが、その場合の画作りの概念が変わるといった感じですかね。

――場明かりを利用しつつもより緻密なライティングが可能になり、今まで不可能だったライティングを追及できる可能性がありますね。フィルムカメラと違って波形でレベルとかも確認できますし。

倉田氏:今回OLEDのVFを使いましたが、その画像を見るだけでも最終の画像がわかります。正確な描写がVFでどこまでできているかわかりませんが、最終的な画像がわかるほどの情報量として表示できているように思いますね。

VARICAMLT_userinterview_4259

大型アイピースを採用しており視認性に優れたVF

岡林氏:OLEDによる再現性のほかにも大型のアイピースレンズを採用して見やすさにも配慮しています。カメラとはSDI接続できるようになっていて、他社の製品をVFとして利用することもできますし、小型モニターを接続することもできるようになっています。あと、SURROUND VIEW機能が追加され、有効領域外の映像をビューファインダーに表示できるようになっています。実際に記録される画像の周辺もVF内で確認できるというものです。

倉田氏:確かに見やすいですね。それと視度調節や光学ズームのリングが大きくて操作しやすいです。視度調節にはメモリも振ってあって親切ですね。

VARICAMLT_userinterview_4304

アイピースは視度調節やズームなどが可能で、操作性も良い

――このVFはVARICAM 35用のものとは違うのでしょうか。

岡林氏:外観や機能性能は同じですが、インターフェースがSDIになっているところが違いますね。価格もそうですが、カメラマンさんによってVFというかモニターに関しては色々あるようなので、ユーザーの好みで選択できるように配慮しています。

――ショルダータイプとか手に取って撮影する以外にも、リグに乗せたり、ステディカムを使って撮影したりと、ユーザーの要求に合わせて(考慮して)カメラが小型化されているんですね。

岡林氏:カメラ上部の取っ手の部分と底部は平らになっていて、リグなどに装着する場合の自由度を考慮した設計になっています。

倉田氏:ショルダー目線より少し低い目線での撮影が好みなんですが、カメラのバランスも良いので、ホールド感というか、抱えるような体制での撮影すごくしやすいですね。

VARICAMLT_userinterview_4226

リグへの搭載のほかショルダーや抱えるようにカメラをホールドする場合でも重量バランスが良い

――有線・無線LAN接続ができるようになっているので、リグなどに装着してのリモートもできますね。

岡林氏:オプションのリモートオペレーションパネルで様々なカメラコントロールが可能なほか、インカメラグレーディングやプロキシファイルのアップロードにも対応しています。

――シーンファイルに追加されたV-Look(VARICAM Look)というのはV-Logと何が違うのでしょうか?

岡林氏:いずれも14+ストップのダイナミックレンジを生かすという部分では同じですがV-Logはグレーディング前提となっているのに対し、VARICAM Lookはグレーディング無しでも映像表現が可能です。

倉田氏:Rec.709のようなビデオ系のレンジは狭いのですが、VARICAM Lookだと広いダイナミックレンジを生かしながらもRec.709でも自然な感じで撮影できます。

VARICAMLT_userinterview_Log

VARICAM LTに搭載されたガンマカーブ。VARICAM Lookにより、グレーディングなしでも広いダイナミックレンジをRec.709で表現可能

――絵柄によって変わってきませんか?

岡林氏:いくつかモードがあるので使い分けすることが可能です。

――4K60P対応ですがHDだと240pのオーバークランク撮影が可能ですね。

岡林氏:センサー駆動を2K領域にクロップする事で240pまで対応可能な仕様になってます。

VARICAMLT_userinterview_sensor2b

イメージセンサーの画素数。センサーの撮像可能領域はS35mm画角の有効撮像領域である4Kよりも広くなっており、SURROUND VIEW機能により、有効領域外の映像をビューファインダーに表示できる

――P2viewer plusってVARICAMにも対応していますね。

岡林氏:VARICAMで導入されたCINE形式のFILE NAME STYLEに対応していて、カメラインデックスやリール番号、クリップ番号と記録日付で構成されるファイル名に対応しています。

倉田氏:VARICAMで撮影したクリップの記録フレームレートやISO感度、ホワイトバランスなどの情報も記録されるので、後であの時どんな設定で撮影したかなどの記録としても重宝しますね。もちろんサムネイル表示や再生プレビューなどもできますから、クリップの整理に非常に便利です。

岡林氏:また、DPXデータの書き出しや変換、メタデーターの編集などにも対応しています。

http://www.pronews.jp/pronewscore/wp-content/uploads/2016/08/VARICAMLT_userinterview_P2ViewerPlus.jpg 記録したクリップの確認や整理に便利なP2viewer plus
※画像をクリックすると拡大します

VARICAM LTセミナー情報

prn_160810_varicam625x469
「Panasonic 4Kデジタルシネマカメラ VARICAM LTセミナー」

2016年9月7日に、東京・半蔵門のPROGEAR半蔵門セミナールームにて「Panasonic 4Kデジタルシネマカメラ VARICAM LTセミナー」が開催される。

同セミナーでは、倉田氏を講師に迎えて実際の使用感や他機種に対してのメリット解説や、パナソニック株式会社の岡林氏からVARICAM LTの機能・特徴の概要説明が行われる。セミナーの詳細・参加申し込みはこちらより。

WRITER PROFILE

編集部

編集部

PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。