
ライカやハッセルブラッドのレンズを作っているドイツの老舗光学メーカーのシュナイダー社と韓国の光学メーカーLK SAMYANGから高画質で軽量な超広角ズーム「SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」が発売になる。
ドイツの老舗光学メーカーとのコラボで14-24mm F2.8の超広角ズームレンズが登場
2025年2月末のCP+で突如発表になり、話題沸騰なのが韓国サムヤン社とドイツの名門シュナイダー社の提携により開発された「SAMYANG AF 14-24mm F2.8 FE」だ。このクラスのレンズは各社からも出ているが、非常に大きく重たいのだが、このAF14-24mm F2.8 FEは軽量で445g、サイズも88.8mm×84mmとコンパクトだ。ちなみに他社では、シグマの「14-24mm F2.8 DG DN | Art」は795g、ニコンの「NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S」は約650gである。

これほどまでコンパクトでありながら、光学性能は非常に良い。
作例でもわかるように、開放から隅々までシャープだ。さすがドイツレンズのスペックと言える。カメラボディのシャープネスに頼ることなくクリアに描写できるので、動画では高いグレーディング耐性を備えていると評価できる。
開発にあたり、サムヤンが製品コンセプトと全体の設計を行い、シュナイダーが光学スペックを監修しているとのこと。一方、実際の設計には日本人技術者が加わっており、日独韓のコラボにより完成したレンズと言える。ドイツの緻密な光学スペック、日本の高度な設計技術、そして韓国の高い美意識と柔軟な開発環境がうまくマッチしたと言える。
詳しい描写については後述するとして、撮ってみたインプレッションを先に紹介しよう。

とにかく高画質でF2.8通しの超広角ズーム。445gで普通のフィルターが使え、実用バッチリだ
まず、とにかくコンパクトで軽い。前述のように445gと、大口径ズームとしては最軽量といえる。移動を伴うロケや旅では、このサイズはありがたい。実際に浅草寺で2時間くらい歩きながら撮影したのだが全く苦にならないし、一脚で行脚したのだが、前に重量が偏らないので非常に楽だった。
さらに、ズームリングは滑らかで、適度な粘りがある。動画でも使えるレベルだと言える。

操作系では、リングはピントリングとモード切り替えスイッチ、カスタムボタンが配されている。ピントリングはパソコンとUSB-Cで繋ぐことにより、シネマモード(回転角を大きくできる)と通常モードの切り替え、さらに絞りリングに変更することも可能だ(専用アプリによる)。モード切り替えスイッチはAF/MFの切り替えに使う。このスイッチにより、AF時にはリングを絞りに、MF時にピントにするということができる。


特筆すべきは、ズーム全域で最短撮影距離が18cmでマクロ的な使い方もできることだ。ただし、24mm側でマクロ倍率はx0.26だ。さらに、大口径の超広角レンズではレンズの前玉が飛び出す「出目金」が当たり前だが、このレンズは前玉が飛び出しておらず、普通の丸型フィルターやプロ用の角形フィルターが利用できる。

実際、筆者はH&F社のマグネット式角形フィルター100mmを使っているが、PL内蔵+フィルター2枚装着でも問題なかった。ただし、角形フィルターを回転したとき、スチルモード(4:3)では四隅にケラれが出た。動画の16:9では全くケラれないので、これは非常にありがたい。
AF動作は全く問題ない。非常に静かなレンズであり、高速にAFが動作する。MF操作も快適だった。手ぶれ補正も問題なく動作する。ただし、これはカメラボディーの問題なのだが14mmでは激しく動かすとローリングシャッターが見られた(ZV-E1の場合)。
そのほか、このレンズは防塵防滴のリーリングが施されており、ネイチャーフォトや映画などの過酷な撮影現場でも安心して使うことができる。
超精細な解像力と豊かな発色。星系写真でも使える高度な光学補正がすごい
超広角で大口径でありながら、14mmでも隅々まできっちり描写してくれるのがこのレンズの特徴だ。メーカーからも星系写真に使ってほしいとのことだが、筆者の専門である映画でも、実際に使ってみた。歪みが非常にうまく補正されており(ボディ内補正を含む)、いわゆる標準レンズと混ぜて編集しても違和感がない。歪みが残ったレンズでパンすると不自然な描写になるのだが、それも感じられない。


つまり、映画でも活躍するレンズだと言える。筆者は普段、ソニー「FE 14mm F1.8 GM」を使っているのだが、描写においては甲乙つけ難い。極端な背景ボケを必要としないのなら、こちらのレンズの方が小さく軽く、普通のフィルターが使えるので圧倒的に便利だ。
サムヤンのレンズ全般の特徴なのだが、レンズコーティングが非常に良いことを付け加えておこう。同社の研究室のトップであるリー氏に聞いたところでは、レンズは入ってくる光のうち波長の短いものほど、レンズ素材に吸収され減衰される。つまり、紫外線に近い青い光ほど光量が減るわけだ。その結果、レンズ枚数が増えるほどに、レンズを通った光は黄色っぽくなる。
そこでサムヤンではこの光の特性を補正するコーティング技術を投入しているとのことだ。結果的に、サムヤンのレンズは「白は白に」描写できる。つまり、ホワイトバランスに頼ることなく、自然な発色になる。また、花の描写が非常に美しい。

筆者は、この描写やレンズを変えても発色が統一されているのが好きで、所有するレンズの多くがサムヤン製だ。というのは、映画ではレンズ交換時の描写特性の違いが問題になる。
つまり、編集時にカラーコレクションをしなければなくなる原因が、レンズごとの発色の違いなのである。ところがサムヤンのレンズは、発色傾向がどのレンズの同じ傾向なので、極端な言い方をすれば、後のカラーコレクションが必要ないのだ。その代表が同社のV-AFシネマAF単焦点レンズだ。筆者の映画の中では、最も多用されている。


まとめ
画質に関して言えば、映画の大スクリーンでも、全く問題ない。映画ではフィルターワークが必須となるが、このレンズは通常のフィルターが使えるため、特殊な専用マウントを使うことなく撮影に臨める。また、歪みがほぼみられないため、映画でも安心して使える。また、日頃のスナップでもこのサイズはありがたく、これ一本で街歩きしたくなるレンズと評しておく。
気になる価格だが、16万9,800円と非常に低価格だ。安いからといってチープではなく、外装や部品、装飾に至るまで高級感に溢れている。今回はソニーFEマウントのみの発売だが、他のマウントの計画もあるとのことだ。
スペック
製品名 | AF 14-24mm F2.8 FE | ||
WIDE | TELE | ||
絞り範囲 | 2.8~22 | ||
レンズ構成 | 構造 | 11群15枚 | |
特殊レンズ | 非球面3枚、HRレンズ5枚、EDレンズ3枚 | ||
コーティング | UMC | ||
最短撮影距離 | 0.18m(0.59ft) | ||
撮影倍率 | x0.17 (1:5.84) | x0.26 (1:3.92) | |
絞り羽根枚数 | 9枚 | ||
フィルターサイズ | ⌀77 | ||
最大径 | ⌀84 | ||
マウント | Sony FE | ||
画角 | Full Frame | 114.2° | 84.1° |
APS-C | 91.7° | 62° | |
長さ | 98.63mm/3.9in | 88.8mm/3.5in | |
重量(キャップ、フード別) | 445g | ||
ウェザーシーリング | 〇 | ||
AF/MF モードスイッチ | 〇 | ||
AF モーター | リニアステッピングモーター |
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