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「DJI Mavic3 Pro」が2023年5月に発売されてからちょうど2年、待望の新フラッグシップ機が登場だ。

筆者は前モデルのMavic3 Pro(cine)を発売から2年ほど使用していて、その性能にほぼほぼ満足していた。今後新作が出てきてカメラ性能が多少上がったとしても、このまま3 Proで戦えるのでは…?という考えもあったが、やはりDJIの開発力は想像を超えてきた。

Mavic3 Pro発売からの2年間で、DJIはMini4 Pro、Air3S、Flipなど様々なドローンを発表してきたが、今回の「Mavic4 Pro」はそれらの機体の要素技術を詰め込んで進化した機体になっていると思う。

本記事ではMavic3 Proと比較しつつ、Mavic4Proの性能を紹介していく。

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今回レビュー用にお借りしたのは、「DJI Mavic 4 Pro 512GB クリエイターコンボ」(DJI RC Pro2付属)。

内容は以下のとおり。

  • Mavic4 Pro本体
  • DJI RC Pro2
  • インテリジェント フライトバッテリー×3
  • バッテリー充電ハブ
  • 240W対応充電器
  • 充電器用AC電源ケーブル
  • 予備プロペラセット×2(撮影漏れ)
  • 10Gbps 高速データ転送ケーブル
  • ショルダーバッグ

360°回転インフィニティジンバル

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Mavic4 Proの最も特徴的な機構がこの360°回転するジンバル(インフィニティジンバル)だ。従来のチルト、パンのみ可能なジンバル構造からロールの動きを加えた大幅なアップデート。

もちろんロール回転の動きもプロポから手動制御することができるので、従来からあるFPVモードでは出来ないような動きができる。さらにチルトは70°上向きまで動作可能になり、ドローン映像の表現の幅が広がりそうだ。

ただし、チルト角が-20°~+9°では最大440°までロール回転させることができるが、これ以上チルトを振っているときは機体の映り込み防止のため回転角度に制限がかかる。

またインフィニティジンバル搭載に伴い、新たにクイックショットに「回転」が追加された。前進、後退しながらジンバルを回転させるといった、今までにないショットを撮影できる。

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左がMavic3 Pro、右がMavic4 Pro

3眼仕様は変わらず、焦点距離が微変化

Mavic3 Proと同様に3眼カメラを採用。Mavic3 Proでは24mm/70mm/166mmの3種だったが、Mavic4 Proは28mm/70mm/168mmと微妙に変化あり。

望遠の166→168mmに関してはほとんど誤差範囲レベルだが、Hasselbladメインカメラが24→28mmとなったことでFOV(視野角)は84°→74°となり、目に見える変化だ。

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Mavic3 Pro 24mm
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Mavic4 Pro 28mm

3眼の画質の一貫性向上

Mavic3 Proで少し不満だったところとして、3眼カメラの画質に一貫性がなかったところが挙げられる。

3 ProではHasselbladメインカメラのみがD-logに対応、中望遠・望遠ではD-logMのみの対応となっていた。しかし今回Mavic4 Proでは、3眼すべてがD-logに対応した。

また望遠レンズでは、

  • 開放F値がf3.4→f2.8へ明るく
  • センサーサイズが1/2インチ→1/1.5インチに大型化

さらにメインカメラ以外も4kスローモーション撮影(中望遠4k/120fps、望遠4k/100fps)に対応した。

これらのアップデートにより一貫性が改善され、3眼を切り替えながらの撮影がより実用的になった。

Hasselbladメインカメラがさらに強化

HasselbladのメインカメラはセンサーサイズはMavic3 Proと同じ4/3型だが以下のように強化されている。

  • 100MPセンサー搭載
  • 6k/60fps撮影対応
  • f/2.0~f/11絞りで低照度にさらに強く
  • 16ストップのダイナミックレンジ

デザインを一新したプロポ

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Mavic4 Proクリエイターコンボでは最新のプロポ、「DJI RC Pro 2」が付属する。Mavic3 Pro用のハイエンドプロポDJI RC Proとの違いを挙げるとこのような感じ。

DJI RC Pro DJI RC Pro 2
折りたたみ ×
縦動画対応 ×
モニターサイズ 5.5インチ 7インチ
輝度 1000nit 2000nit
出力端子 Mini HDMI HDMI
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左がRC Pro、右がRC Pro 2

Pro 2は輝度が上がったことに加え、モニターの位置が高くなり、傾きの調整もできるようになったため、視認性がかなり向上した。

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モニターを折りたたむ際にジンバル部も連動するため、スティックエンドを外す必要がないのがありがたい。またモニターの折りたたみとスリープ機能が連動しているため、頻繁に移動しながらの撮影もスムーズに行うことができる。

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Mini HDMI→HDMIに変更され、さらに扱いやすくなった

完全な縦動画撮影に対応

インフィニティジンバルを使った、カメラを90°傾けての完全な縦動画撮影が可能。これまではDJI Mini4 Proのみが対応していた機能で、単なる横動画からの切り出しではなくイメージセンサーをフルに使用した縦動画の撮影が可能になった。

そして便利なのがRC Pro 2モニターとの連動だ。モニターを90°傾けるだけですぐにジンバルも連動して縦動画モードに入ってくれるのでとても直感的。

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クリエイターコンボはALL-Intra収録対応

Mavic4 Proでは3 Pro cineモデルで対応していたProRes収録から替わって、ミラーレスカメラでよく用いられるALL-Intra収録に対応した。

ProResと同様にフレーム間圧縮率が低く編集に特化したデータを収録可能であり、プロフェッショナルニーズに応えるものになっている。

  • H.264 標準ビットレート:90Mbps
  • H.265 標準ビットレート:180Mbps
  • ALL-I ビットレート:1200Mbps

Mavic3 Pro Cineと同様、10-bit 4:2:2はこの収録方式のみ対応している。

飛行性能について

マルチコプターとしての基本飛行性能もかなり良くなっている。最大伝送距離は最新のO4+伝送により、日本国内15㎞(FCCは30㎞)となった。もはやオーバースペックな気がしなくもない。

バッテリーサイズもMavic3 Proの77Whから95Whへ大容量化し、最大飛行時間が51分となっている。ちなみに95Whは航空機への持ち込みがギリギリ可能なバッテリー容量になっているのでありがたい。

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左がMavic3 Pro、右がMavic4 Pro

機体重量がMavic3 Proから約100g増量して、プロペラサイズもひと回り大きくなっている。前作と比較しても飛行時の安定感が目に見えて向上しているのに加えて、飛行音がかなり改善していた。

簡易測定ではあるがMavic3 Proと比較しても低周波になっており、高周波特有の耳障りな感じは少なく、Miniシリーズレベルの静かさだ。

左がMavic3 Pro、右がMavic4 Pro

夜間障害物検知が大きく進化

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Mavic4 Proは障害物センサーがかなり進化している。Air3Sで採用された前方LiDARセンサーが4 Proにも搭載。Air3Sではカメラ上部に配置されていたが、Mavic4 Proはインフィニティジンバルとの兼ね合いで右アーム部分に配置。

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さらに6つの低照度対応ビジョンセンサーによって0.1ルクス環境でも全方位障害物検知が機能する。0.1ルクスは星明りのレベルらしいが、レビューの事情で夜間撮影ができなかったので室内にて実験してみた。

512GBモデルのデータ転送速度

通常モデルは64GB、クリエイターコンボは512GBの内部ストレージ機能がある。今回お借りしている512GBモデルのみでの検証にはなるが、Mavic3 Pro cineの内部SSDとデータ転送速度を比較してみた。

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結果はほぼ互角。Mavic4 Proの内部ストレージがSSDであるという情報がなかったのだが、おそらく同等のものを搭載していると考えられる。現場でのデータのやり取りが非常にスムーズになる。

ちなみにMavic3 Pro Cineは機体の電源を入れなければSSDにアクセスできなかったが、Mavic4 Proはオフ状態でも可能。これは本当に便利だ。

便利な240W電源&充電ハブ

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バッテリー周辺機器についても進化している。付属の電源、充電用ハブは240wに対応し、バッテリー1本の充電が0-100%を51分で完了する。また最近のDJI製品でいくつか対応しているパラレル充電も可能であり、異なる残量のバッテリーを3本一度に挿すと、それぞれの残量をそろえてからパラレル充電が開始される。3本での0-100%充電は約110分。充電環境さえ整っていればバッテリー3本サイクルで延々と飛ばし続けることも可能かもしれない。

ちなみに充電ハブは最近のDJI製品からの流れを汲み、複数のバッテリーの残量を最も残量の多いバッテリーに集約できる、電力移行機能を備えているのもありがたい。

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また充電ハブは簡易モバイルバッテリーとしても優秀だ。対応するUSB-Cケーブルを使用すれば100Wで出力可能。スマホやPCなどの高速充電にも活用できる。

ハイエンドモデルが少しお手軽価格(?)に

3 Pro、4 Proの価格を比較してみると、通常モデルとフライモアコンボについては微増、ハイエンドモデルについては10%程度安くなっている。

DJI Mavic 3 Pro(DJI RC付属):税込261,800円
DJI Mavic 4 Pro(DJI RC 2):税込277,200円

DJI Mavic 3 Pro Fly More コンボ(DJI RC付属):税込352,000円
DJI Mavic 4 Pro Fly Moreコンボ:税込355,850円

DJI Mavic 3 Pro Cine Premium コンボ:税込563,420円
DJI Mavic 4 Pro 512GBクリエイターコンボ:税込497,860円

ただしこれまでのフライモアコンボ以上に付属していたNDフィルターセットが、今回は付属なしでの価格設定だ。諸般の事情により発表時には付属しないようだが、NDフィルター取り付け部分に意味深な端子が見える….後に発表されるなにかを期待したい。

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各モデルの選び方

今回は通常モデル・フライモアコンボ・クリエイターコンボの3種が発表された。選ぶ際の基準としては、

  • 1現場で50分以上飛ばなくてもいい→通常モデル
  • バッテリーが複数必要→フライモアコンボ
  • HDMI outが必要→クリエイターコンボ
  • 10-bit 4:2:2カラーが必要→クリエイターコンボ

このあたりが判断材料になってくるかと思われる。

また現Mavic3 Proユーザーは、ハイクオリティな縦動画撮影の需要がある、または夜間飛行または室内飛行の機会が多いといった場合、入れ替えを検討するのも良いのではないかと思う。

藤倉昌洋|プロフィール
新潟県在住のドローンオペレーター。株式会社NK2-Tech代表。YouTuber「NANKOTSU」としてドローン初心者向けの情報を中心に配信中。