小型・軽量・高出力、そしてフルカラーを両立したLEDライト

今回のレビューで紹介するのは、NANLITEのフルカラーRGBライト「FC-120C」だ。NANLITE公式ストアの価格は税込59,400円。

NANLITE FC-120Cをレビュー対象として選定した理由は以下の3点である。

まず、筆者はこれまで数多くのNANLITE製品を使用してきており、そのコストパフォーマンスと光量に対する高い信頼を抱いている。この実績が、FC-120Cを選定する上での大きな要因となった。

次に、現在運用しているZHIYUN MOLUS X100と同様に、FC-120Cが小型軽量でありながら145Wの高出力を実現している点が挙げられる。筆者が求める「最小限のサイズと重量で最大限のパワー」という要件に合致したため、本機を選定するにいたった。

最後に、RGBWテクノロジーによるフルカラーライティング機能が、選定の決め手となった。多様な色彩表現の可能性を秘めており、この点が筆者の探求心を刺激したためである。

NANLITE FC-120Cは、コンパクトかつ軽量でありながら、145Wの出力を持つフルカラーLEDスポットライトだ

今回レビューするFC-120Cの「FCシリーズ」は、NANLITEの製品群においてコンパクトさと高機能性を両立させたラインナップである。NANLITEには優れた性能でバッテリー駆動に対応した「Forza」シリーズ、基本AC駆動中心でストパフォーマンスに優れた「FS」シリーズがあるのに対し、筆者はFCシリーズは高機能と色表現の豊かさに焦点を当てたシリーズだと思っている。

そのFCシリーズには60、120、300、500モデルが存在し、今回紹介するFC-120シリーズにはバイカラーの「FC-120B」と、フルカラーの「FC-120C」が用意される。FC-120Bが価格と明るさを両立する一方、FC-120Cはフルカラーライティングにより、単なる明るさ以上の雰囲気創造や特殊効果演出を可能にする。その汎用性の高さから、あらゆる撮影現場での活躍が期待される。

コンパクトボディと多彩な機能

手元に届いたFC-120Cは、堅牢なスチロール製キャリングケースに収められていた。ケース内には、灯体本体、リフレクター(装着可能)、専用電源アダプターとケーブル、ボーエンズマウントアダプター、そしてマニュアルがきちんと収納されている。

当初発泡スチロール製のケースであると推測されたが、実際の製品は、ラッチ機構やハンドルといった部品が一体成形された専用ケースであった
FC-120C本体や電源アダプター、リフレクター、AC電源ケーブル、ボーエンズアダプターがまとめられている

国内代理店VANLINKSが「手のひらサイズ」と紹介するFC-120Cのサイズは誇張ではない。ライト本体の重量は1.13kgと軽量で、カバンに入れてどこへでも持ち運べる。その軽さゆえに、スタンドへのセットも楽々で、セットアップ時間を短くできる。この重量であればブームアームとの組み合わせも容易なため、機動性を重視するクリエイターにとって理想的な選択肢となるだろう。

ライト本体サイズは3191×115×193mm。手のひらサイズだ

FC-120Cの基本的なスペックは高い。1mの距離からでも12,850lux(リフレクター装着時)という明るさを実現。演色性はCRI平均95、TLCI平均94と非常に優れ、被写体の色を忠実に再現する。色温度は2700Kから7500Kの広範囲で調整可能であり、±150のグリーン/マゼンタ調整にも対応し、様々な環境光に合わせられる。

外観は、ハニカム構造による効率的な放熱を促す天板、アンブレラ取り付け用の穴といった機能的なスタイルを採用。背面には液晶コントロール窓、各種ボタン、USBポートが配置される。

「左ノブ」と「右ノブ」と「ボタン」で4つの照明モードの操作が可能。DC電源ソケットのほかにType-Cポートも搭載する

操作画面はシンプルで、「CCTモード」は明るさ、色温度、グリーン/マゼンタ補正の項目が並ぶ。ダイヤル操作で値を調整し、押し込むことでスキップやオン/オフが可能だ。中央左のMODEボタンでモードチェンジ(CCT、HSI、RGBW、EFFECTモード)が可能であり、右のMENUボタンから詳細設定を行える。

CCTモードの例。左から「輝度」「CCT」「G/M」

実際にFC-120Cを体験すると、単に被写体を照らすだけでなく、演出にその真価を発揮することが強く感じられた。SF的な空間、レトロな雰囲気、特定のブランドカラーの再現など、創造的で多彩な色の表現において、これほど頼りになるツールはない。

フルカラー(RGBWW)対応で、鮮やかな色光を自由に調整できる。背景に色をつけるなどの表現が可能だ

Effectモードの例その1

Effectモードの例その2

FC-120Cという名称ながら、その最大出力は145Wを誇る。フルカラーLED照明はバイカラーに比べ白色光の演色性や明るさが劣ると言われることがあるが、筆者の製品撮影の用途ではFC-120Cの使用で気になることはなかった。

LEDライトの選択肢は100W、300W、500W、1200W、2400Wと幅広いが、FC-120Cの光量が劣っていると思わない。昼間の屋外撮影でも十分な補助光として活用できる。筆者の主要な照明用途である製品撮影やネイチャー系では100Wクラスで昼間の補助が可能であり、ハンドリングを考慮すると「大は小を兼ねる」という原則は必ずしも当てはまらないと断言する。

機動性と多様な電源オプション

FC-120Cは、ACアダプター、Vマウントバッテリー(BT-BG-XLR4II別途必要)、PD給電の3方式に対応する多彩な電源オプションを持つ。

DC電源ソケットとType-Cポートに電源アダプターから電源の供給が可能
AC電源ケーブル付き電源アダプターとライトのDC電源ソケットを接続して運用した例
電源アダプターはVマウント可能な形状を備えているほか、どこかにぶら下げるためのループつき。サイズは規格的に妥当だ

付属のACアダプター運用が主だが、日中のアーケードなど、日陰での撮影が多い現場では外部バッテリーが不可欠となる。PDへの対応は、従来のVマウントバッテリーに加えて活用範囲を拡大させるものだ。

Xiaomi 165W Power Bank 10000mAhとの組み合わせて稼働させてみた。Xiaomi 165W Power Bankは「内蔵ケーブルで最大120Wの出力」のためか、30%の出力にとどまった

USB-C充電器は、PD30W以上の出力で30%の性能を発揮し、PD140W出力に対応する製品では100%の性能を引き出す。140W対応バッテリーが2万円を下回る価格で市場に登場している現状を鑑みると、この技術は撮影現場における電源確保の制約を軽減し、撮影環境の自由度を向上させるものと評価できる。

FC-120Cの照明本体は、BowensマウントではなくNANLITE専用のFMマウントを採用している。これにより、NANLITE純正FMマウントアクセサリーを直接使用でき、ボタン操作とわずかな回転で着脱が可能だ。標準で付属するBowensアダプターを用いれば、市場に流通する多様なBowensマウント対応ソフトボックスの利用も可能となる。

リフレクターの取り付けはFMマウントに合わせカチッと音がするまでライトに表示されている方向に回転させる。取り外しはロックキャッチを押す
AS-BA-FMM ボーエンズ変換アダプター装着状態の様子

本製品の操作設定は、本体に加え、別売りのリモコン、2.4G、DMX/RDM操作に対応している。また、「NANLINK 2.0」アプリを介した操作も可能である。NANLINK 2.0アプリと本体のBluetoothリンクは直感的に実行でき、アプリからは本体で設定可能なすべての操作が行える。

多くの撮影デバイスがアプリに対応している現状において、アプリの完成度は概ね高い水準にある。しかし、撮影現場ではスマートフォンが連絡ツールとして使用されることが多く、複数のデバイスでアプリ操作が競合する状況は課題となる場合がある。

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まとめ

NANLITE FC-120Cは、現代の映像制作や写真撮影の現場が求めるあらゆる要素を凝縮したLEDライトといえるだろう。

FC-120Cの実機検証において特筆すべきは、その静粛性である。ファンを「FULLスピード」設定にしても、発生するノイズはごくわずかであり、筐体の過度な発熱も確認されなかった。この特性は、ライトを手に持って照射するような状況下でも、使用者への負担が少なく、安心して運用できることを示唆している。

本機の安全性と際立った軽量性の組み合わせは、よりダイナミックなライティングの実現に寄与する。具体的には、ライトスタンドへの固定に加えて、ブームアームへの装着や、撮影者自身がライトを保持しながら動き回る運用形態も可能となる。これは、従来の重量があり発熱量の多い照明機材では困難であった運用方法であり、撮影における自由度を大幅に向上させるものと考えられる。

これらの特性から、FC-120Cはクリエイターの表現の可能性を拡大するLEDライトとなり得るだろう。

伊丹迅|プロフィール
人と空の撮影作品について単純な美やテクニックを超越した空撮美学・撮影美学・映像美学を提唱、主宰する写真・映像作家、ドローングラファー。正体は悪魔音楽集団のヴォーカリスト、デーモン獄長。

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PRONEWS編集部による新製品レビューやイベントレポートを中心にお届けします。