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2025年4月にニコンより「NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ」が発売された。NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZ(以下:本機)はニコンが動画撮影の現場で求められる操作性と機動力を追求して開発した、Zマウント対応のフルサイズ用パワーズームレンズである。

編集部より本機とZ9、リモートグリップMC-N10が送られてきたのでNIKKOR Z 28-135mm f/4 PZをメインにインプレッションをお届けしたいと思う。まずは本機の特徴・仕様から。

概要と特長

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NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZは、フルサイズ28mmから135mmまでの焦点距離をカバーし、ズーム全域で開放F値F4を維持する設計となっている。これにより、広角から望遠までの撮影を一本で対応可能とし、特にドキュメンタリーやワンマンオペレーションでのロケーション撮影など、撮り直しが難しく機動力が求められる動画撮影において、高い操作性と機能を提供する。

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NIKKOR Zレンズとして初めて電動ズームレバーを採用し、滑らかなズーミングを実現。ズーム速度は11段階を可変で動かす方式。またカメラ本体側ではボタンのアサインにより任意な速度を割り当てることも可能となっている。表現用途に合わせた多彩な映像演出が可能である。

また、ズーミング時のフォーカス位置のずれや重心の移動を最小限に抑える設計となっており、ジンバルに搭載しての運用時など焦点距離を変えて撮影することが多い現場でも前後バランスのずれが生じにくいので撮影現場での取り回しは良いと感じる。

さらに、NX Tetherを使用してPCから、SnapBridgeやNX Fieldを使用してスマホ・タブレットから遠隔でズーム操作が可能である。

光学性能においては、EDレンズ3枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ4枚を含む13群18枚のレンズ構成を採用し、フォーカスブリージングが起きにくく、高精細で美しい8K動画の撮影を実現。また、ニコン史上最高の反射防止効果を持つ「メソアモルファスコート」により、ゴーストやフレアを大幅に低減し、クリアな映像表現を可能にしている(ニコンHPより)。

主な仕様

マウントニコン Z マウント
焦点距離28-135mm
最大口径比1:4
レンズ構成13群18枚(EDレンズ3枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ4枚)
画角75°-18°10′(撮像範囲FX)、53°-12°(撮像範囲DX)
最短撮影距離撮像面から0.34m(焦点距離28mm時)~撮像面から0.57m(焦点距離135mm時)
最大撮影倍率0.25倍(焦点距離55~135mm)
絞り羽根枚数9枚(円形絞り)
フィルターサイズ95mm
寸法約105mm(最大径)×177.5mm(長さ) ※レンズマウント基準面からレンズ先端まで
質量約1,210g(三脚座を含む)、約1,120g(三脚座なし)

Z9との組み合わせで感じたこと

Z9にこのレンズを装着し、実際に撮影を行った際、開放F値がズーム全域でF4に固定されていることの利便性を強く感じた。引きから寄りのショットまで、明るさの変化を気にすることなくスムーズに撮影が可能で、特にドキュメンタリーやイベント撮影など、シーンの変化が激しい現場での撮影において、その効果は絶大である。

またZ9のハイレゾズーム機能を使用することにより4K動画撮影時、最大135mmの望遠端から、ハイレゾズームにより最大2倍(約270mm相当)の画角までズームすることが可能。センサーサイズの小さいビデオカメラでは20倍、25倍といったズーム倍率はあるのだが、ことフルサイズセンサー用ズームレンズで超高画質F4通しの10倍レンズ+電動パワーズームというのはかなり実用性が高いと感じた。

今回使用したZ9と本機との組み合わせではフランジバックがしっかりと取れていたため、マニュアルフォーカス時にズーム操作をした時にピントがずれる現象、いわゆる"引きボケ"がほとんど認められなかった。この辺りはニコンの設計、組立精度の素晴らしさが感じられる。

フォーカス・ズーム・アイリスリングの操作感はグリスの粘りが効いているような滑らかさがちょっと足りないという印象。動き出しが少し硬い印象があるが、動いてしまえば問題ないように感じた。まあ構造的にENGレンズの機構とは違うのでこの点は致し方ない。

電動パワーズームはマニュアルでのリング操作と本体についているスライドスイッチによる可変速での操作、及びZ9本体の+-ボタンの操作による一定速(11段階の速度を割り当てる)のズーム操作となる。

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一定速ズームは+-ボタンで可能

可変速ズームの操作はレンズ本体横に上下にスライドするスライドスイッチで行う。ズームの速度を可変で行いたい場合、このスライドスイッチ部分に指を当て上下にスライドする必要がある。

また、メニュー画面でこのスライドスイッチに11段階の任意の速度を上限とするモードがある。例えば、-5に設定するとスライドスイッチは最大までスイッチを移動させても最低の速度となる。メニュー内のズームスピードを設定する画面は1から11段を選ぶのとは違い、-5から+5の数値から選ぶ仕様になっている。この辺りは写真撮影時のAE補正のような感覚で操作できるのには文化の違いを感じた。

側面のスライドスイッチの上げ下げによりズーム方向とスピードを変える方式なので、実際問題、撮影中にこのスライドスイッチを使うとなるとブレの問題が出てきてしまう。ぜひこの部分はLANCリモコンのような三脚のパン棒に付けられるズームコントローラーの開発を行っていただきたい。

LANCの規格では速度変化量は7段階程度となっているためどうしてもスピードの変化が階段状になってしまう。本機は11段の速度規格なのでそのままLANCを持ち込むことは勿体ないので、11段に対応したズームデマンドをぜひ用意してもらいたい。

今回お借りしたリモートグリップMC-N10はあくまでもZ9のボディ右手側の操作系を独立させたアイテムとなっているため、ズームデマンド機能は搭載されていない。そもそも発売時期が違うのだから言うまでもないが…。

 

ズームスピードと可変速のサンプル

MC-N10でのズームはグリップについている拡大縮小ボタン+-にそれぞれズーム速度をアサインして使用する。特に圧力センサーを搭載したゲーム用パッドとは違いON、OFFのみなので指定された速度で動くことになる。

便利な機能として、SnapBridge等Wi-FiまたはBluetooth接続により、スマートフォンなどのデバイスからズームやアイリス、フォーカスなどをコントロールできる。

今回はボディにZ9を使用したが、実際に使用してみて、Z9との組み合わせで気になった点がいくつかあった。この点についてニコンに質問し、回答を得たため、そのカメラ設定を紹介する。

  • 自動電源オフ機能の改善:撮影中に一定時間操作がない場合、カメラの電源が自動でオフになる設定がある。撮影の合間にこの機能が意図せず作動し、電源が切れてしまうことがあった。今回、LCD画面を記録するためにATOMOS SHOGUNをZ9のHDMI端子へ接続し記録を行ったが、カメラ本体での記録を行っていないため、一定時間で映像出力が途切れるという事象が発生した。この問題に対し、ニコンからはC3[半押しタイマー]を「制限なし」に設定することで、結果的に自動電源オフ機能を無効にできるという回答を得た。
  • メニュー構造の簡素化:ニコンのカメラを日常的に使用しているユーザーにとっては、メニュー構造に問題はないのかもしれない。しかし、他メーカーのカメラを使用している者からすると、その操作は若干戸惑う印象を受けた。この点について、ニコンからはiメニューでの設定変更に加え、よく使う項目をマイメニューへ登録し、集約できると回答を得た。
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レンズフード下にはPLフィルターや可変NDを操作するための窓が付いている

NIKKOR Z 28-135mm f/4 PZレンズは、Z9との組み合わせにおいて、動画撮影の現場で求められる操作性と機動力を求めたレンズであり、特に1人での撮影や機動力が求められる現場で、今までにない高画質・高倍率ズームをフルサイズで得られるという新たなステージを開拓することが期待される。

WRITER PROFILE

猿田守一

猿田守一

企業、CM、スポーツ配信など広範囲な撮影を行っている。PRONEWSではInterBEE、NAB、IBCなどの展示会レポートを行った経験を持つ。