米国最大のケーブルプロバイダーであるコムキャストは、iPadとモトローラ製「Xoom」のタブレットでテレビ番組が観られるサービスの準備を進めている。コムキャストの加入者数は米国で約2400万人。今月末までに2地域で試験的に始める予定だが、地域名は挙げられていない。コムキャストはこの新サービス「AnyPlay」を初めに発表していたが、サービス開始時期については明らかにしてなかった。

タイムワーナー、ケーブルビジョンやDirecTVでは既に同様のサービスを始めており、これらのサービスは、Wi-Fiネットワークを介して屋内のみの限定となっている。コムキャストの新サービスの場合も、他CATV社サービスと同じく家の中で観られる。ただしセットトップボックスと接続するWi-Fi用ボックスが必要なため、限定地域から徐々に対応していく。オンデマンドビデオやリモートコントロールが可能な現在のiPadアプリは、ライブ番組観賞用にアップグレードされる。

「現時点では、どこのテレビネットワークも屋外にコンテンツを持ちだす環境に賛成の色を見せていない」と、コムキャスト社のXfinity TVデジタルプラットフォーム担当のシニア・ディレクターであるトム・ブラックスランド氏は説明している。技術的に可能にする唯一の方法としては、スリングメディア社のSlingboxをセットトップボックスに接続すれば、テレビ信号を独自のリモートアプリから受信できる。コムキャストは、家から離れている時でもオンラインでテレビ番組が観られるサービスを検討すべきと、スリングメディア社の幹部であったジャーミー・トーマン氏は語っている。

米国一般家庭ではテレビ番組は家の中で観る慣習に留まっている。テレビ番組を外に持ち出したいという消費者側のニーズは高まっていないため、コムキャストなど主要コンテンツプロバイダー側でも、現時点のマルチスクリーンTVサービスの拡張は、早急の検討材料にしていないと、リサーチ会社のニールセンは見做している。同社がこの夏に発表した調査内容によると、タブレット所有者の78%が家の中でビデオを観賞しており、米国一般家庭の過半数はビデオをオンラインで観ているという。「現在のマルチスクリーンTVサービスはまだ、テレビ観賞エクスペリエンスを完全にリプレースできているものではない。 我々は人々が道路を歩きながらiPadでオンラインビデオを楽しむと想像していたが、今は家の中で消化されてしまっている」とブラックスランド氏はCNNからのインタビューで語っている。

(山下香欧)