去る5月18日、代官山ヒルサイドプラザにおいてNAB 2012で発表された新製品の説明会「Avid Post NAB 2012」が開催された。Avidが掲げる今年のトレンドは「3スクリーンへの期待」。テレビ、PC、携帯など新しいメディアへの展開が高まり、コンテンツを各メディアに同時にプッシュするニーズが出てきているという。そういった背景から、時間を短縮しスピードが求められる時代となった。いかに低コストで具体的な形にしていくか、Avidはそれぞれのワークフローに合わせたソリューションを提案する。

今回のNABでは「Media Composer 6.1」「Symphony 6.1」と「NewsCutter 10.1」がテクニカルプレビューという形で発表された。今回発表のあった新機能を引き継いだ新しいバージョンの正式リリースは、2012年秋頃に予定している。

気になる追加機能は、AS-02フォーマットをサポートした事が大きい。さらにJPEG2000、DNxHD100を新しく追加した。これまでDN×HDは145というのが最高圧縮であったが、それよりもさらにビットレートを上げ、圧縮した100メガというものを発表した。こちらはスポーツ市場向けとして開発されたという。そして、アクティブフォーマットディスクリプションも追加された。これは、メディアの中のデータにアスペクト比を埋め込むことができるもので、送出機側で自由に調整が可能になる。

AS-02とはApplication Specification No.2の略で、いろんなメディアを一本化し、そのバージョンを管理することができるフォーマット。例えば、英語の映画で、スペイン語のバージョン、フランス語のバージョン…と増やしていきたい時に、映像は全く変わらないのに音のシーケンスデータだけを増やすことができる。メディアをどんどん増やす必要がなく、バージョンを効率よく管理できる。

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アビッド テクノロジー株式会社 アプリケーションスペシャリスト 西岡 崇行氏より新製品についての説明

次に注目したいのは、「Interplay Sphere」というシステムソリューション。Sphereとはクラウド編集ができるシステムで、インターネットファンクションがあればロケ先などでも自由にデータを引っ張ってきて編集ができる。Sphereがあれば、バックグラウンドで自動でデータが転送されるので、ユーザー側は何もしなくてもデータを送り続けてくれる。ここで使うMedia ComposerやSymphonyはSphereが対応しているバージョンが必要で、実際に使用できるタイミングは、対応バージョンがリリースされる秋くらいだという。

その他のクラウドソリューションは昨年発表された「Interplay Central」がある。こちらはソフトウェアは必要なく、webを立ち上げれば作業が可能。こちらはジャーナリスト向けのインターフェイスになっており、ニュースの素早い作成、配信を実現するために必要な機能が搭載されており、原稿を書いて映像を貼付けたりするなどの簡易編集が可能。NABでは新しいバージョンの1.2が発表され、ディゾルブを追加できる機能とマーカーを貼付ける機能が追加された。

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AirSpeed 5000の筐体

以前から収録サーバーとしてあった「AirSpeed Multi Stream」からNAB 2012で進化を遂げて発表された、「AirSpeed 5000」。特長は、P2 HD/AVC-Intra、XDCAM/EX HD、DNxHD120/145、SDの4チャンネル同時収録・再生、あるいはDNxHD185/220の2チャンネル収録・再生が可能。AirSpeed5000サーバーはXDCAMとP2デッキ、サードパーティー製のサーバーや編集システムと直接ファイルを交換できる。NewsCutter、Media Composer、あるいはSymphonyといった編集機やISIS共有ストレージを利用すると、Frame Chase機能によって収録と編集の時間が仮想的に取り除かれ、接続された編集機は転送開始から数秒後に素材にアクセスすることができるので、編集が終了すると、クリップはワンクリックでAirSpeer 5000に送られ、複数チャンネルのプレイリストが作成され再生を自動化し、よりスピーディーな制作が可能となる。

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Avid Motion Graphicsの筐体

最後の新製品としては、「Avid Motion Graphics」。この製品は一言でいうと、リアルタイムテロッパといえるだろうか。2D/3Dレンダリング・エンジンと、最新GPUおよびI/Oテクノロジーを搭載した次世代ツールセットを使用することにより、リアルタイムにテロップを作成したり、外部でつくられた3Dモデル、アニメーションをインポートすることができる。リアルタイムの映像に対してオーバーレイすることも可能で、報道、スポーツなど即時性があるものに向いている。

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Powderhouse Productions ポスト・プロダクション部門 シニアVP ロバート・キルワン氏のプレゼン

イベントではアメリカ、マサチューセッツ州に本社を置き、テレビや最新メディア機器といったマルチ・プラットフォーム向けのオリジナルエンターテイメント制作会社「Powderhouse」から、ポスト・プロダクション部門のシニアVPであるロバート・キルワン氏を迎え、実際にAvid製品を使った制作ワークフローについての事例が説明された。「美味しくて身体に良い」をモットーに番組を制作しているというPowderhouse。ポストプロダクション事業の拡大に際し、オリジナルコンテンツの開発において、新たな改革に取り組んでいるという。急増するデジタル・アセットのフローを管理、追跡するため、同社では、昨年、Avid Interplay Productionアセット・マネージメントおよびAvid ISISネットワーク・ストレージ・プラットフォームを導入した。これらを導入したことで、プロジェクトやシリーズのデジタル・アセットと付随するメタデータへのアクセスを必要とする全ユーザーがアクセス可能となり、劇的に制作フローがレベルアップし、エディターを始めスタッフそれぞれが、得意とする本来の業務だけに集中することができるようになったという。