トリフォーカルカメラシステムに実装されているIndiecam社のマイクロカメラ

ウォルトディズニースタジオがArri Groupおよびフラウンホーファーハインリッヒ・ヘルツ研究所と取り組んでいるトリフォーカル(三重焦点)カメラについて、CES2013で進捗が発表された。今後、ディズニーが制作する主要な作品の収録に採用していく見通しだ。

CES2013では、国際3D協会と3D@ホームコンソーシアムが主催するカンファレンス「3D’s 20/20 Vision」が併催された。セッション「3D Anywhere, Anytime – Theatrical to Tablets」では、LGエレクトロニクスをはじめ、MasterImage 3D、Volfoni、ナショナルグラフィックス・シネマそしてフラウンホーファーの代表が集まり、先進3D技術の商品化やコンシューマから映画産業までの市場動向について、パネルディスカッションが行われた。

フラウンホーファーの3Dイノベーションセンター エグゼクティブマネージャーのキャスリーン・シュレーター女史によると、開発中のトリフォーカル(三重焦点)カメラは、4月の第三テストフェーズを経た後、ディズニープロダクションで本格的に採用される予定という。

システムには1台のArri社製ALEXA Mカメラと、そのカメラ両脇に独Indiecam社製のマイクロHDカメラがリグに実装されている。両脇のマイクロカメラから、トリフォーカル開発のSTANステレオスコピック解析ソフトウェア用のデプス情報をキャプチャする仕組みとなっている。

STANは、DVS社のClipsterポストツールにも採用されている技術という。理論的には、左右眼用2台のカメラを使うことで発生する固有のレンズの位置ずれを意識せずに、3Dコンテンツを生成できるというもの。2D/3Dハイブリッド収録システムを提唱するキャメロン・ペース・グループと同様に、3Dカメラリグを利用せずに2Dと同じワークフローで3Dを収録する環境をコンセプトとしている。

収録している3つの映像情報に基づいた視差推定により、”第二の眼”のビューは仮想軸間距離でレンダリングされ、後で定義される。レンダリングを要するため現在はプロダクション向けではあるが、今後リアルタイムを目指し、3D中継にも対応できるシステムを開発していくという。

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トリフォーカルカメラ技術は目新しいものではない。テクニカラーでも3年前のNABにて参考出展をしている。当時はカメラのサイズも大きく、またアナライズシステムも大がかりなものだった

またフラウンホーファーは、昨年のNAB2012でも同様の技術を参考展示している。2台のIndiecamマイクロカメラ(indieGS2K)でキャプチャした映像データを、技術協力会社である独imcube社のシステムに取り込み、自動的に推定深度マップを調整する三重焦点深度キャプチャシステムで、裸眼3Dディスプレイ用の映像制作に活用できるとしている。

(山下香欧)