フランスの通信衛星運営企業であるユーテルサットはCES2013の開催を狙い、史上初のウルトラHDチャンネル(UHD)の伝送を開始した。現在はプロダクション企業や放送事業者に向けてのデモンストレーションを目的としている。
新チャンネルは3,840×2,160(4K:50p、60p)をATEMEのエンコード技術を用いてMPEG4(40Mbps)にエンコードされてして伝送する。使用されているのは、同社のEUTELSAT 10A衛星(東経10°:DVB-S2)。衛星側はUHD伝送に対応するための調整は必要なく、トランスポンダごとに4つのクワッドHDTV(UHDTV向け)をトランスポートしている。
同社では、消費者側へのUHDテレビセットの浸透は、2015年までに行われると予測している。衛星伝送は中期的に配信する方法になる可能性が高いと見られるが、地上波では高解像度信号を放送することが目の前の大きな課題となっている。新圧縮規格HEVCの実装によって4K放送の実現が促進されることも期待される。
CES2013では昨年のS3Dフィーバーを拭って4Kが市場フィクスチャーとして現れたが、実際のサービス化としてのコンテンツ配信に必要なプールが欠けていた。今回のユーテルサットの先駆けた行動は、供給者側のイベントNABおよびIBCへの予行とも受け取れる。また最大の市場競合相手SESへのメッセージでもある。
ユーテルサットの人工衛星は2500以上のテレビ局、1000以上のラジオ局の放送に使われ、1億6400万世帯がケーブルまたは衛星放送として受信している。人工衛星運営企業の売上高では世界3位。そして世界2位のSES(本社:ルクセンブルク)ではHDTV1200chを含む5200ch以上のTV、1000を超えるラジオ局に使われている。52個の静止地上観測衛星を運用し、世界人口の99%が利用可能だとしている(ウィキペディアより)。両大企業ともヨーロッパ市場を超えて世界展開を行っており、産業開発の先駆者同士として、放送市場での4Kインフラ構築にて争いを持ちかける意気込みだ。
(山下香欧)