ステージデモや展示で4Kに強いアドビを強烈にアピール
メインステージには4Kスクリーン2面が配置されていて、30分ごとにAdobe Creative Cloudビデオ制作ツールのデモやユーザー事例講演が行われた
アドビブースの今年のテーマは「4K」だ。メインステージには84インチの4Kスクリーン2面を設置して、「知らなきゃ損するAdobe Premiere Pro CC」や「AE手品」というAfter Effects CC最新アップデート紹介のほかに、「4K映像制作を現実に」といった4K関連のデモや講演も多数行われていた。
インテルの最新テクノロジーを搭載した4K制作ソリューションにAdobe Creative Cloudをインストールして展示していた
ステージ背面では共同出展のインテルデモコーナーが設けられていて、インテル社製品のCPUやSSDを搭載したBTOパソコンメーカーなどによる4K映像制作対応のハイスペックPCの展示が行われていた。それらのPCでAdobe Creative Cloudを体験できるようになっていた。例えば、サードウェーブであれば、インテル Xeon プロセッサー E5「E5-2687W v2」、インテル製のSSD「SSD 910」800GBモデル、グラフィックはNVIDIA Quadro K4000の3GB搭載で100万円を切るといったモデルを展示していた。マウスコンピュータはQuadro K4000を2枚搭載したマシンにシャープの4Kモニタをつなげての展示だった。組制作会社に向けて「2014年の4K放送はぜひアドビとこのシステムで」と強烈にアピールしている印象のコーナーとなっていた。
10月のメジャーアップデートでAdobe Premiere Pro CCはCinema DNG、ソニーRAW、Phantom Cine、XAVC Long GOP、AVC-Ultra Long GOP、RED 6Kなど新たなフォーマットのネイティブ編集に対応。ブースでは、4KスーパースローカメラPhantom Flex 4Kの素材をPremiere Pro CCで編集して4K対応液晶テレビ「ブラビア」でプレビューするというデモが行われていた
ソフトの体験コーナーでは10月のメジャーアップデートで強化されたポイントを実際に体験できるようになっていた。Premiere Pro CCは10月のアップデートでXAVC Long GOP(XAVC S)やRED 6K(DRAGONセンサー対応)、ソニーRAW、Phantom Cineなどにネイティブ対応するようになった。ブースでは早速Phantom Flex 4Kの素材をAdobe Premiere Pro CCでネイティブ編集して、ソニー4K対応液晶テレビ「ブラビア」でプレビューするというデモが行われていた。
映像制作の協調映像制作を支援する「Adobe Anywhere for Video」
Adobe Anywhereのデモ。Premiere Proを使っているところで外見は通常のPremiere Proとなんら変わるところはない
ブースで見逃せなかったのはAdobe Anywhere for Videoのデモだ。11月13日にアドビは、「Adobe Anywhere for Video 1.5」を日本で発売。協調映像制作を支援するサーバー製品を12月中旬より提供開始予定というプレスリリースを発表した。そのAdobe Anywhereのデモがブースで行われていた。まずは、Adobe Anywhereとは何か?というところから聞いてみた。Adobe Anywhereとは、言葉通りどこでも編集ができる協調制作と、共有素材による制作を実現するというものだ。デモの場合では、クライアントPCは幕張、サーバーはサンノゼにあり、そこのコンテンツにアクセスして編集をすることができるようになるとのことだ。もちろん撮った素材をサンノゼのサーバーにアップするといったことも可能。
メニューをたどってAnywhereサーバーにログインできる
実際にAdobe Anywhereを利用する方法だが、まずAnywhereサーバーにログインする。Adobe Anywhereは、Windows版とMac OS版のAdobe Premiere Pro、After Effects、Preludeのユーザーインターフェイスに直接組み込まれていて、メニューからたどって「Adobe Anywhere」→「サインイン」を選択するか、スタートアップスクリーンからサインインが可能だ。そのためAdobe Anywhereを使うにはサーバー環境のほかにライセンスが必要だ。
もう1つの方法で、スタートアップ画面からもAnywhereサーバーにログインすることが可能
Adobe Anywhereの世界では、プロジェクトファイルを使わないで「Anywhereプロダクション」というものを使う。Adobe AnywhereはPreludeやAfter Effects、Premiere Proに対応していて、すべてのプロジェクトやメディアを「Anywhereプロダクション」という1つのバケツで管理することからそう呼んでいるとのことだ。サインインをしてAnywhereプロダクションを開くと、幕張のブースからサンノゼにあるサーバーの中のAnywhereプロダクションを読み込んで編集を行うことができる。この場合のデモではAVC-Intra 100の素材を使ったAnywhereプロダクションを読み込んだ。
こちらがAdobe AnywhereにログインしてPremiere Proで編集をしている画面。通常のPremiere Proと変わるところはない
あとは普通のPremiere Proと同じだ。ポイントとしては、Adobe Anywhereはプロキシを使わないで低解像度のHDのファイルとしてくる。また、クライアントには負荷がかからず、クライアント自体はなんでもOKとのことだ。操作性に関しても、Adobe Anywhereだからといって新たに編集操作を習得する必要は何もない。あとは普通のPremiere Proそのもので、再生も普通にできているし、JKLなどでスクラブも可能。1フレームずつ動かすといったこともできる。ローカルで編集しているのと変わらないような感覚で作業が可能だという。このあたりのパフォーマンスはネットワーク環境によって左右される部分とのこと。
デモに使った素材のプロパティを開くとこのような感じだ
Adobe Anywhereのもう1つの特徴である協調作業の様子も見せていただいた。まずは一つのAnywhereプロダクションを一人のエディターで更新していく場合の例だが、この場合に何かプロダクションを更新した場合は「変更内容を共有」の機能を使い、「共有」をクリックして今のシーケンスに対してコメントを入れることができるようになっている。他のエディターは、更新をしたAnywhereプロダクションを開くと、「何をしたのか」「今の時点で起こっているのか」という情報を受け取れる仕組みになっている。
Adobe AnywhereのPremiere Proには「変更内容を共有」のボタンがある
また、2人のエディターが同じシーケンスを開いて同時作業をした場合は、エディターAが何かを変更して共有すると、エディターBは「何か変更されましたよ」というサインが届くようになっている。最新の変更点を取得したい場合は「取得する」、さらに「今のバージョンをキープしますか?」などとコンフリクトにならないよう、いくつかの選択肢をくれるとのことだ。
コメントを入力して共有内容を他の人に知らせるようになっている
今回はエディターの視点からAnywhereの使い勝手を紹介したが、Adobe Anywhereはサーバー製品だ。Adobe Anywhereのシステム構築などに関してはアドビのWebサイトなどを参照してほしい。
After EffectsとCINEMA 4Dの連携にも注目
右がCINEMA 4Dでシーンを作成している画面で、左がそのシーンファイルをAfter Effectsで読み込んだところ。After EffectsのタイムラインにCINEMA 4Dのシーンファイル「c4d」のファイルがあるところに注目だ
マクソンは、今年4月に「CINEMA 4DとAdobe After Effects間における新しいライブ3Dパイプラインを発表」というニュースを発表した。After EffectsにCINEMA 4Dの簡易版「CINEMA 4D Lite」が搭載されるようになり、CINEMA 4Dシーンファイルを取り込んで一般のムービーファイルと同じ扱いのように作業をすることができるようになるというものだ。「After Effectsは3Dが弱い」と言われ続けてきたこともあり、大変話題になった。ブースでは、そこで発表されたAfter EffectsとCINEMA 4Dの連携の様子を紹介していた。
ちなみにブースのスタッフにCINEMA 4Dユーザーの傾向についても聞いてみると、最近は圧倒的に映像系のユーザーが多いという。マクソンはアドビのCS 5.5の時点でAfter EffectsのコンポジションをCINEMA 4Dに書き出せ、CINEMA 4DからAfter Effectsに戻すことができるプラグインをリリースしたが、その頃から映像制作で使われることが多くなってきたという。今年の春にCINEMA 4D Liteが搭載されるようになってからは、さらに映像制作の現場でも使用される事が多くなってきたという。