FIFAワールドカップ(W杯)では4K中継放送のほかにも様々な工夫を凝らす放送が試されている。W杯の全試合をABC、ESPN、ESPN2で中継放送するほか、マルチデバイスへのライブ配信も行っているESPNは今回、視聴者側の視点で更に放送を楽しんでもらうための“視聴者エクスペリエンス”の向上として、グーグル検索と中継を結ぶ仕組みを取り入れた。

グーグルでも現行進んでいる中継と連携させるのは初めての試みだという。グーグルはW杯開催中でのチーム名、選手名から試合のタイムラインといったクエリの結果をESPN側に結び付ける。

ESPNが行っているのは、視聴者がグーグル検索の結果から即座にリプレイビデオや現在行われている試合の中継ストリームをWatchESPN TVのOTTサービスで観戦できるという仕掛けである。

グーグルはESPN FCサイトにリンクをはり、逐次更新される試合進捗のレポートや試合ハイライトのビデオクリップと、現在ESPNのアプリから観られる中継ストリームをつなげて、試合の模様を現地とリアルタイムで観戦できるようにした。検索エンジンであちこちと探し回っていらだつヒートを省くというわけだ。

市場調査会社のニールセンの調査によると、ESPNでの視聴者数は、ブラジル対クロアチアで440万となり、4年前のW杯オープニング戦(南アフリカ対メキシコ戦)の視聴率よりも55%アップ(286万)した結果となった。WatchESPNでのビューワー数は172%増の110万ユニークユーザー数という過去最多数を記録し、すべてのデバイス数での視聴時間は合計で5000万時間以上になった。インターネット上で観戦中継を楽しむ視聴トレンドと視聴慣習の傾向が数字となって表れている。

(山下香欧)