レッズの本拠地グレートアメリカン・ボールパーク(米・オハイオ州、シンシナティ)で行われたMLBオールスターゲーム。FIFA女子サッカー、全米ゴルフオープンと、この夏は大きなスポーツイベントが続いており、どのライブプロダクションも担うFOX Sportsは、今回の国民的スポーツイベントでも画期的な撮影趣向を凝らした。

注目の1つは、MoVI M10三軸ジャイロスタビライズカメラジンバルで、トラッキングショットをシネルックに捉えたことだ。これはFOX Sportsオランダがエールディヴィジサッカーリーグの放送で採用したテクニックから学んで実施。FOX Sports 1の番組「MLB Whiparound」とプリゲームショー時に、スイーピングムーブのロングショットやローアングルのハンドヘルドショットをこなした。

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ダートカムはイナーシャ・アンリミテッドが開発したRFリモートカメラで、FOXではこの数年間MLBオールスターの中継で採用している。ダイヤモンドカムとも呼ばれていた時期もあり、名前のごとくホームベースの脇の地面に埋め込まれる。2mm程度だけ地面から顔を出し、ピッチャーや審判の様子をとらえる。今回、進化したダートカムはホームベースに加え1塁と2塁にも設置され、パン、絞り調整のリモート制御を実現。盗塁やベースへのスライディングといった選手の活躍を今までにない角度からのシーンとしておさめた。

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スポーツ放送技術に特化したコミュニティSports Video Groupが取り上げたところ、今年の中継では5台のハイスピードカメラシステムがスタジアムに設置されている。全てイナーシャ・アンリミテッドが用意。Phantom 4K Flexシステム(1000fps)をダグアウトの外側、X-Mo Phantom(2000~3000fps)をそれぞれのダグアウト(一塁、三塁側)に設置した。残り2台の従来から使っているX-Moカメラシステムはミッドレンジの位置で撮影。さらにソニーのHDC-4300も出動し、センターフィールドにて8倍速のスローモーションで運用された。

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Phantom 4K Flex

ちなみにMLBオールスターの放送権はFOXネットワークが2021年まで独占で保有している。FOXがMLBに対して支払う放映権料は年間5億ドル(日本円で約618億円)といわれている。

(山下香欧)