25年に一度のカトリック行事「慈悲(いつくしみ)の聖年」が2015年12月8日から始まった。本来は25年おきに1年間にわたって続くイベントなのだが、今期はフランチェスコ教皇により発表された特別聖年である。今期はバチカン市国サン・ピエトロ大聖堂の聖なる扉Porta Santa開門の儀式から開始された。
この特別イベントはバチカンテレビセンター(Centro Televisivo Vaticano、CTV)からハイダイナミックレンジ(HDR)の4K映像で中継された。注目される中継技術として、今回HLG(ハイブリッドロングガンマ)方式で試されたことが挙げられる。
技術支援として制作プロダクションのDBWコミュニケーションズ、ライブプロダクションのグローブキャスト、機材メーカーにソニー、NTTコミュニケーションズ、そして衛星事業者ユーテルサットが背景にいる。
オンサイトではソニー社製4K/HD対応システムカメラHDC-4300をメインに、4Kライブカメラシステムによって撮影された。オンサイトでの4Kカメラはソニー社製のPMW-F55やHDC-4300、合わせて19台が揃えられたという。
カメラ側のOETFを外部コンバーターでHLGとBT.2020定義の広色域(WCG)へリマッピング処理する。ライブプロダクションはグローブキャストの4K中継車によって運ばれ、ユーテルサットの衛星8WBで伝送された。
今回、新しくNTTエレクトロニクスが開発している4K/60p 4:2:2 10bit対応のH.265/HEVCコーデック「HHC11000」が試験的に採用され、信号をHEVC(main10)のビットレート30Mbpsにして伝送している。ストリームはユーテルサットのランブイエ・テレポートで受信された後、同社衛星HOTBIRD 13EでのDTHチャンネル“ユーテルサット4K1”のほか、TivuSatやEutelsat 5WA経由でFransatから伝送された。さらにユーテルサット113WAを経由してアメリカ、ユーテルサット8WB経由でアフリカ、中央および西ヨーロッパ、MENAとブラジル、そしてユーテルサット172A経由でアジア・オセアニアにも伝送されている。
同様の技術的実験は、スカパーJSATがInterBEE会期中に行っていた。同社の4K放送サービスにおいてHDRへの取り組みを深めていくという
HLG方式は、BBCとNHKが共同で開発されARIBで標準化されている(ARIB STD-B67)。BBCとNHKでは今後、ITUとSMPTEでも承認規格となるよう活動を進めている。
HDR方式の比較。総務省資料参照
(山下香欧)