Blackmagic Designの発表によると、映画「バクマン。」のエンディングシーケンスにFusion Studioが使用されているという。
同映画の原作となった漫画「バクマン。」は、「DEATH NOTE」の原作者である大場つぐみと、作画担当の小畑健作画が再びタッグを組んだ作品。少年ジャンプで連載された同作品は、2人の高校生が漫画家になる道を目指す様子を描いている。実写映画では、佐藤建と神木龍之介がW主演を果たしている。
実写版「バクマン。」のエンディングには、いつくかのユニークなシーンが用意されている。主演の2人が黒板の前で漫画を描いていく工程はそのひとつで、はじめに描いたあった絵を消して、それを逆再生することによって、役者が実際に黒板に絵を描いてるように見える。
VFXアーティストの井上英樹氏は次のようにコメントしている。
井上氏:まっさらな黒板をバックに絵を書く演技をする主役のふたりのショット、そして原作の作画担当である小畑さんの絵が描かれた黒板のショットと別々に撮影したものを素材として使いました。Fusionでは複数のキーヤーを用いて1枚の線画のデータを抽出しました。そしてGrid Warpで歪みを調整し、トラッカーを使って線画データを何も描いてない黒板にぴったり重ねる用途にも使用しました。
また、同作品のエンディングでは、漫画家の作業机をイメージした実写背景に映画のタイトルが表示されるようになっており、この部分にもFusionが使用されている。
井上氏:背景部分は実写で机の上に紙や定規、ペン、インクなどを配置して俯瞰で撮影していますが、完全に真上から撮影していなかったため、角度が斜めになっています。そこをFusionのPerspective toolを使い、歪みをとってまっすぐにしています。また、クロースアップからカメラをクレーンで引いていって、だんだん机全体が見えるようになるのですが、カメラをまっすぐ引くのが難しいため、歪みの角度が一定ではありませんでした。そのため、アニメーションをつけて常にまっすぐに見えるように調整しました。また、カメラの動きをスムーズに見せるためトラッキングデータをインポートして、スタビライズもかけています。
スタビライズをかけると、画面の中心がずれてきてしまうので、画像を確認しながら中心点を一定にするように調整しました。いくつもトランスフォーム系の機能を使っていますが、Fusionはオリジナルの画像を常に保持した状態で作業できます。たとえば、拡大して画角が変わったとしても、画面から見えない部分がデータとして残っている。そのため位置をずらしても、画が見切れることなく、きちんとある状態なのです。そのため、いくつもの機能を重ねていけるんです。
同作品のエンドクレジットでは、主役の2人の作業場のセットをカメラがドリーしていくと、コミックスがたくさん収納してある本棚が映し出される。それらは、実際のジャンプコミックスの漫画のパロディとなっており、ジャンプの漫画を読んだことのある人であれば、すぐにわかるようなデザインでスタッフのクレジットが記載されるというユニークなもの。本棚と単行本はCGで作成され、実写である作業場の映像と合成された。
井上氏:本棚のCGを作成したときには、実写との合成を想定していませんでした。そのため、手前のCGの本棚と奥の実写の作業場の照明環境が違うため、背景とのなじみがよくありませんでした。そこでCGの本棚の側面部分とカメラをFusionにFBXで読み込んで、リフレクション用の素材をSphere Mapでマッピングすることによって、作業場の明かりがかすかに本棚に反射している効果を与えました。こうすることで、背景とより自然にマッチします。この修正を全てCGで行うと再レンダリングに膨大な時間がかかってしまうのですが、Fusionを使うことでその時間を大幅に節約できました。
Fusionは、様々な状況下においてフレキシブルに対応できるソフトウェアです。本来であれば3DCGソフトウェアに戻って修正しなければならないところを、Fusionで解決できることも多いです。また、様々な3DCGソフトウェアやトラッキングソフトウェアなどと連携できるので、効率的に作業することができます。