5月31日、東京・港区のナックレンタルにてARRIのカメラスタビライザー「TRINITY」と、デジタルシネカメラ「ALEXA SXT W」のハンズオンセミナーが行われた。両製品とも実機が国内で初公開されるとあって、大勢の受講者が集まっていた。2つのセミナーのうち、NAB2017で発表されて話題となっているALEXA SXT Wのハンズオンセミナーについて紹介しよう。

ALEXA SXT Wのセミナーの講師を担当したのはARRIのアレクサ・プロダクトマネージャー、フレデリック・メルテン氏。メルテン氏はスライドを使ってALEXA SXT Wの特長を解説した。

ALEXA SXT Wの「W」はワイヤレスのことで、最大の特長はカメラに低遅延のHDビデオトランスミッターとWi-Fiモジュールを搭載しているところです。ARRI以外にビデオトランスミッターを搭載したしたカメラをリリースしたメーカーは1つも存在していません。それでいて、レンズコントローラやWi-Fiの混線がないというのがアドバンテージとなっています。

ARRIのアレクサ・プロダクトマネージャー、フレデリック・メルテン氏

HDビデオトランスミッターとレシーバーとの伝送距離は見通しで600メートル。非圧縮かつ遅延は1マイクロ秒以下で、BNCケーブルの伝送と品質も変わることはない。また、セキュアな伝送のために128bit AESで暗号化がされており、仮に第三者が受信機を持参しても無断で受信はできない。受信機は、基本的に1個のトランスミッターごとに最大4つのレシーバーと組み合わせて使用することができる。このあたりのレシーバーの数については国の法律によっても変わることがあるということを紹介した。

また、Wi-Fiを搭載することによってPCからワイヤレスカラー管理やALEXA Web Remoteを使ってカメラのリモートコントロールをすべて無線で行うことが可能。例えば、カメラがクレーンの上にあったり、リグでカメラがガチガチに固めて触れない状態になっている場合でも、カメラに触れることなく設定を変えることができるという。

カメラにトランスミッターを納めたALEXA SXT W。カメラにWi-Fi、レンズコントロール、ビデオトランスミッターのアンテナを搭載している

競合メーカーにあってARRIにない機能についての解説は興味深い話だった。

他社の製品で3D LUTをレシーバー内で当てられるものがありますが、これに関してARRIは懐疑的です。ARRIのカメラの中にはすでに3D LUTのモジュールがあり、カメラ側で当てることができます。逆に、ディレクターの観ているモニターで、3D LUTを当ててしまうと、それはもうカメラ側の映像の履歴に残らないので、実際そのときに監督がどのような画を観ていたのか後から調べることは不可能になってしまいます。ARRIのシステムに関しては、メタデータにそういった3D LUTの情報が残るので、後からそれを読みだしてあげれば、カメラの中で一元管理することもできるし、ポストプロダクションまで付随して搬入できます。

また、HDMIを搭載していない理由については、プロフェッショナルの現場であまり使われていません。ほとんどの場合はSDIが使用されているからです。

ALEXA SXT Wのリリースは第三四半期。今年の夏から秋にかけて発売予定

ALEXA SXT Wのリリースは第三四半期を予定。国内の価格については改めて案内をするとのことだが、ALEXA SXTと値段は変えずに据え置きの方向で考えているとのこと。ARRIとしては値段を上げてユーザーへ届きにくくなるようなことは避けたいという。また、ALEXA SXT plusやALEXA SXT EVはALEXA SXT Wにアップグレードが可能。アップグレードに関しては、サービスセンターに問い合わせてほしいとのことだ。