ATENジャパンブース 360°全天球動画

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ATENジャパンブースレポート

ATENジャパンといえばKVMスイッチが有名だが、今年は待望の4K対応IP KVMエクステンダーや、4K対応マトリックススイッチャーが登場。これらの機材で、多彩な映像表現が可能となり、注目を引くビデオウォールの表現が可能になる。ATENジャパンの取締役 企画本部長のJovi Chan氏に新しいKVMエクステンダーのポイントや導入事例を中心にお伺いした。

4K対応のIP-KVMエクステンダーがついに登場

ATENジャパンの取締役 企画本部長のJovi Chan氏

――注目は待望の4K対応のIP-KVMエクステンダーだと思いますが、今回の出展の見どころを教えてください。

Jovi Chan氏(以下:Jovi氏):4Kマルチキャスト対応IP-KVMエクステンダーや4K対応マトリックススイッチャーを展示しています。去年の時点では一部でしか実現できなかった4K対応製品が、今年は全て揃ったところが見どころです。

ATENジャパンはIT業界出身のメーカーで、IT業界の中ではKVMスイッチのリーディングカンパニー的な存在ですが、映像業界では進出して間もないメーカーです。そこでブースの展示では後発メーカーとして何か差別化できないか?と考えた結果が「映像とITの融合」です。IT出身のメーカーでしかできない「映像とITの融合」というテーマを前面に押し出して、ATENだからご提案できるシステムを意識した展示を行っています。

――改めて「KVM」とは何の略称か教えてください。また、現在のKVM業界のシェアをどれぐらい占めているのでしょうか?

Jovi氏:KVMは「キーボード」「ビデオ」「マウス」の略称です。KVMスイッチの世界シェアとしては6割以上を弊社が占めており、日本国内の市場でもほぼ6割が弊社製品で占めています。というのも自社ブランドだけでなく、他社メーカーからOEMの委託も承っております。大手のサーバーベンダーや、一般的なコンシュマー向けサプライヤーのKVMスイッチには、弊社の製品やボード自身が内蔵しているものも多いです。

――最近のKVMエクステンダーはLANケーブルを使ってコンソールを延長できるIP方式が一般的ですが、IP方式の特徴を教えてください。

Jovi氏:従来のKVMスイッチは単体運用となっておりますので、どうしてもユーザー数自身に制限がありました。しかし、IP-KVMエクステンダーでは、入力側のサーバーと操作側のコンソールを増設するだけで拡張可能です。例えば、初期段階で4名のユーザーと10台のサーバーであれば、4台のユーザーステーションと10台のトランスミッタの投資で実現できます。

その後、社員数が増えたり、サーバーが増えた時点で必要なトランスミッターやユーザーステーションを買い足すだけで対応できます。ATENジャパンのIP-KVMエクステンダーは、柔軟に対応できる拡張性が高く評価されています。

待望の4K対応を実現した送信機側の「KE8952T」と「KE8950T」。受信機側の「KE8952R」と「KE8950R」

――すでにオムニバス・ジャパンで導入されているようですが、映像業界ではどのよな現場でKVMエクステンダーの導入が進んでいるのでしょうか?

Jovi氏:もともとKVMスイッチというのはIT業界の製品で、いわゆるサーバー等の管理のために求められる製品でした。しかし、最近は映像業界での導入も次第に増えてきています。特に多いのがテレビ局の中でのサーバーと編集室間の延長であったり、聞くことが増えている放送局とスポーツ現場の中継を遠隔操作するリモートプロダクションの現場でも使われています。

ポストプロダクションの例を紹介しますと、ポストプロダクションには編集室が複数点在しており、キャラクタージェネレーターなどの機材は一部の編集室だけ設置している場合がございます。その場合は、キャラクタージェネレーターを使いたくても設置している編集室が空かなければ使えません。そこで、キャラクタージェネレーターをサーバー室に配置してトランスミッタを設置し、各編集室にユーザーステーションを設置していただければ、空いている各編集室からキャラクタージェネレーターにアクセス可能となります。高解像度でほぼ遅延のないレスポンス、IPで延長されている感覚なしでご利用いただけるところで高い評価をいただいております。

上の四角がサーバールームのイメージ。2台のサーバーがあり、2台の送信機を取り付ける。下の四角が編集室のイメージ。2台のコンソールがあり、2台の受信機を取り付ける

――IP-KVMエクステンダーは実際にどのように使用するのでしょうか?

Jovi氏:まず、IP-KVMエクステンダーには複数の動作モードを搭載しています。「エクステンダーモード」はパソコン1台のキーボード、マウス、モニターをIP化して延長します。製品の一番の特徴でもある「KVMスイッチモード」は、コンソールとサーバー間にスイッチングハブを入れることによってn対n、「マトリックスモード」はn対1の接続を簡単に組めるのが特徴となっています。

KVMスイッチモードかマトリックスモードを選ぶと、まず最初にOSDで表示される管理画面にログインをしていただくことになります。「接続画面」の「チャンネル名」を見ていただくと、3台のPCの名前が表示されています。10台接続されていれば、10台分のリストが表示されます。この中から操作をしたいPCを選択します。

OSDの管理画面でログインし、PCの切り替えの設定が可能

――実際にIP-KVMエクステンダーを体験すると、マウスカーソルが遅れたりすることは感じず、4Kでも画質が悪いとか遅延を感じるということがありませんね。スイッチングハブは市販のスイッチングハブにも対応可能でしょうか?また、映像制作の現場では、素材をメディアに保存して持ち込み、各クライアントで作業することになると思いますが、ストレージをマウントするためのUSBも延長できるのでしょうか?

Jovi氏:スイッチングハブは市販のものを利用することができます。ただし、フルHDや4Kは結構帯域を必要とし、レスポンスの良さは帯域の確保がポイントになっています。そのため、n対nや1対nで使用する際には、データスループットの低下を防ぐためにIGMP対応のハブを使う必要がございます。

IGMP機能とは、ネットワーク上の設定上で、さまざまなネットワークを利用している独立のネットワーク網を配備できる機能です。IGMP機能のルーターがあれば、あまり遅延等も影響しませんし、逆に弊社の製品がほかのネットワークに影響することもありません。

また、延長できるのはコンソールだけではありません。USBのデバイス自身は限定されますが延長可能で、機種によっては音声の延長もできます。IP-KVMエクステンダーにバリエーションがございまして、そこも1つの強みかと思っています。

――この展示会では、遠隔のコンピューターを操作して編集を行うAvidの「Media Composer | Cloud VM」のようなツールも展示されています。こういったネットを使った遠隔操作に対してのKVMエクステンダーの利点は何でしょうか?

Jovi氏:リモートデスクトップは基本ソフトベースです。つまり、ソフトベースに対して、KVMエクステンダーはハードベースになります。ソフトベースの場合は、システム自身にソフトウェアをインストールする必要がありますが、その際に2つ問題が発生します。

まず1つが、ソフトウェアの遠隔操作というのは処理が重くなることです。重たいソフトをシステム自身にインストールしますので、システム自身も重くなります。もう1つは、遠隔で操作するためにネットワークにつながっています。すると、外部からの侵入のリスクを伴います。

一方でハードベースのKVMエクステンダーですと、まずネットワークにつながっているのはあくまでエクステンダー自身です。そのエクステンダーと実際の操作システム自身の間は、コンソールとしての接続になります。コンソールは、キーボード、マウス、ディスプレイの信号のやり取りだけです。

また、システム自身のソフトを入れる必要はありません。あとは、差し込んだだけですぐに使えますし、ネットワーク上で切り離して使えます。いわゆる操作システム自身のほうは、内部のネットワークで、IP-KVMエクステンダーだけは外部のネットワークにつなぐことができれば、どんなに技術の高いハッカーでもシステムの侵入が物理的にできません。そこが、ハードベースとソフトベースの一番の大きな違いです。これは、IT業界でKVMスイッチ自身が広く知れ渡って使われている最大の要因でもあります。

ビデオマトリックススイッチャーをタブレットで操作できるソリューションを展示

――4Kに対応したビデオマトリックススイッチャーをタブレットで操作可能なソリューションを展示しています。どのようなソリューションなのでしょうか?

Jovi氏:ビデオマトリックススイッチャーには32入力、32出力の「VM3200」を使用しています。もともとマルチインターフェースに対応しているスイッチャーでして、HDMI、DVI、SDIといったあらゆる出力に対応しています。4K解像度は去年の時点では対応していませんでしたが、今年は4K対応の解像度のほうに全部アップグレードして、それに対応したボード自身のほうも全てございます。本体はモジュール式で、フルHDバージョンや4Kバージョンなど、実際のご利用の環境に応じて選択していただけます。

コントロールシステムには「VK2100」を使用しています。一般のPC等の映像の入力だけでなく、シリアルやリレーも一括に制御できるもので、オーディオ機器も一括管理できます。Windows、Android、iPhoneなどの端末からコントロール可能です。

計測機能搭載で温度センサー対応のPDU「PE5108A」も使用しています。電源管理ができるユニットで、iPadのほうから電源のON/OFFができます。ON/OFFを実行すると、こちらの信号受信もいったんコントロールシステムに流れ、そこからコントロールシステムのPDUにコマンドが流れます。こちらで「ポート一番に電源を落としてくれ」という仕組みで動くようになっています。

マトリックススイッチャー「VM3200」を使ったソリューションを展示

「VM3200」を使えばビデオウォールの出力が可能で、表示レイアウトも容易に設定できる

VM3200のコントロールはiPadから行うことができる。例えばテレビ局でチャンネルを一括表示し、なにか感心のある番組が放映されたときにiPadで拡大表示。終わったらiPadで戻すなどの使い方ができる