EIZOブース 360°全天球動画
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コントラスト比100万:1、輝度1000cd/m2のハイスペックを実現
EIZOといえば老舗のモニターメーカーである。特にデザインやグラフィックス業界の人にはお馴染みのブランドではないだろうか。ここ数年は4096×2160のDCI 4KやRec.2020、DCIのカラーモードなどに対応した映像制作向けモニターも充実されており、「DCI 4K対応で高品質なモニターを選びたいならばEIZOが最有力」という雰囲気もできつつあるようだ。
そんな今年のEIZOブースでは、映像制作の確認から編集、CG制作とカラーグレーディングまでのワークフローを提案する「次世代HDRワークフロー」を展示。メインの展示は、12月18日に発売が決定した31.1インチのHDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」だ。CG3145は100万:1のコントラスト比と、1000cd/m2の輝度を実現しており、HDR最終出力の色味と明るさを正しく確認・評価できる。4月のNAB Showや、その後のAfter NAB Show Osaka/Tokyoでは試作機で展示をしていたが、今回のInter BEEでは色域や対応するHDRのガンマの設定などを確定させた出荷前の最終形態に近い製品を展示していた。
CG3145はNetflixやBlu-rayが採用している「PQ方式」や放送向けの「Hybrid Log Gamma方式」など、複数のHDRガンマをサポートしており、それらのコンテンツ制作に対応できるモニターとなっている。さらに、2020年の東京オリンピックを控えて、4K HDRのライブ中継のコンテンツ制作もターゲットにしたいとのこと。
EIZOのHDRリファレンスモニター「ColorEdge PROMINENCE CG3145」。最大1000cd/m2の高輝度を実現したモニターで、デモ映像の輝度の高さには驚かされた
REC2020、REC709、DCI、PQ_REC2100、PQ_REC709、PQ_DCI、HLG_REC2100などのカラーモードに対応。専用のソフトウェア「ColorNavigator NX」を使用することで任意のカメラLogを設定可能
少しわかりづらいのが、EIZOはCG3145のことをリファレンスモニターと呼んでいるところだ。映像業界では、最終評価に使用するモニターのことをマスターモニターと呼ぶのが一般的だが、「EIZOでは海外でも通用する呼称を採用しており、リファレンスモニターと呼んでいます。しかし、マスターモニターと映像制作の最終確認用という位置づけは同じです」とのこと。入力端子は、DisplayPort端子とHDMI端子を各2系統搭載し、AJAのSDIからHDMI 2.0へのコンバータ「Hi5-4K-Plus」をアクセサリとして用意している。「SDI端子を搭載していないのは、当社がもともとCGI・VFXの分野から放送業界に参入した経緯があるからです。しかし、SDIコンバータを用いた運用でSDI信号入力にも問題なく対応できます」と紹介していた。
ブースではBlackmagic DesignのDaVinci ResolveとCG3145を組み合わせたカラーグレーディングの作業現場を再現。ワークステーションからCG3145への接続方法は、ThunderboltでBlackmagic Designの「UltraStudio 4K Extreme 3」に接続してSDIを出力。AJAの3G-SDIからHDMI2.0に変換するコンバータ「Hi5-4K-Plus」でHDMI 2.0に変換をしてモニターに映像を入力していた。その隣では、AutodeskのFlameとCG3145を組み合わせたデモも行っていた。
DaVinci ResolveとFlameの編集画面用のモニターにはPQ方式表示に有償アップグレードできるColorEdge CG318-4Kを使うことで、編集段階からHDRプレビュー可能というメリットをアピールしていた。
Blackmagic DesignのDaVinci ResolveとCG3145を組み合わせた展示。左のモニター「CG318−4K」でHDR(PQ方式)の簡易プレビューを、右のモニター「CG3145」でHDR最終リファレンスを行う
有機ELパネルのモニターよりも安定した表示を実現しつつ、価格は安い
PQクリッピング機能も便利だ。設定した輝度よりも高い輝度をもつ領域を色で警告してくれる機能。輝度は、300、500、1000、4000cd/m2から選択可能
CG3145は液晶モニターながら、有機ELと遜色ない表示が期待できる。また、CG3145には他の4K/HDRのリファレンスモニターにはない大きな特徴が2つある。まず1つが、どのようなコンテンツであっても輝度は変化せず、色変化も起こらない。望み通りに表示できるところだ。有機ELを用いたHDRリファレンスモニターの場合、表示コンテンツが一定量以上の明るさや面積になると輝度が下がる仕組みになっている。その際に、階調や色も変化してしまうのが問題となる。一方、CG3145の液晶パネルは画面全体が明るいシーンになった場合でも輝度を下げることなく、最大1000cd/m2までを、安定して表示できる。
もう1つは液晶パネル採用のHDRモニターと比較して、「ハロー現象」と呼ばれる問題を抑えていることだ。通常の液晶パネルを採用したモニターは、バックライトをエリア(ブロック)単位で分割制御することで高いコントラスト比を達成している。しかし、これが原因で明暗比が大きい部分の輪郭がにじんで見える「ハロー」と呼ばれる現象の発生が問題となっている。CG3145は、バックライトをドット制御可能な新型の高輝度バックライトユニットを採用しているため、ハロー現象を抑えつつ、高いコントラスト比を実現している。また、有機ELは液晶パネルと比べて寿命が短いとも言われているのも気になるところだ。CG3145の液晶パネルはそのような心配はないという。
EIZOでは、購入から5年間の製品保証を用意している点も心強い。使用時間30000時間以内であれば、製品の修理に関する費用は無償だ。さらにCG3145の場合、輝度保証も設けており、使用時間10000時間以内は色温度6500K、輝度800cd/m2以上を維持できる。
Inter BEEの会場では、すでに2000cd/m2を実現したHDR対応4Kリファレンスモニターが複数のメーカーから展示されている。そうなると、1000cd/m2のCG3145はスペックで劣るのでは?と思いがちだが、そのようなことはないとEIZO 映像技術開発部 吉原亨氏はコメントしていた。
吉原氏:他社が展示している4K/HDRの液晶モニターは、LEDの発光量をエリア(ブロック)ごとに制御するローカルディミング技術を使って2000cd/m2まで出しておりますので、ハローの発生は避けられません。その点、CG3145は液晶パネルを採用していますがローカルディミングを使っていないのでハロー発生に悩まされることはありません。
気になるCG3145の価格はオープンで、同社直販価格は税別285万円。SDIコンバータ込みの税別価格でも300万円はいかない。2020年の東京オリンピックや、2018年12月1日から開始する4K/8K実用放送が近づき、HDRのリファレンスモニターの導入を考えている放送局やプロダクションには注目のモニターだといえるだろう。