さくら映機株式会社は、12月14日、4K HDRリアルタイム編集システム「4K Prunus」の発表会を開催した。本日より受注開始しており、発売は2018年3月下旬となる。希望小売価格は4K/2Kモデルが税別6,000,000円、4Kモデルが税別5,000,000円。
冒頭で同社の吉田智晃代表取締役はさくら映機のコンセプトを紹介。「これまでの製品はストレスなくモニタリングでき、ファイル出力、テープ出力、待ち時間なくリアルタイムが可能なリニア編集と変わりのない作業ができるような商品を目指しました。4K PrunusでもHDと変わらない操作性を実現して、編集ができるものを開発しました」と吉田氏はコメント。
さくら映機株式会社 代表取締役 吉田智晃氏
最初に制作現場の声として、4K映像素材はPCで扱うにはとにかく重い。HDでオフラインをするワークフローを採用したり、レンダリングや書き出しに時間がかかる。その一方で、制作コストだけがどんどんとかさんでいる状況が続いているという。
4K Prunusは、4K60p、HDRであってもネイティブに素材が扱えて、HDと同等のレスポンスで複数トラックの状態でもリアルタイム再生を確保できる。ファイル書き出しも実時間で書き出し可能。4K実用放送を目前に控えた今、コンテンツ制作の増加が見込まれる現場で高品質なHDR編集ができるシステムと紹介。
4K Prunusは、12G-SDI入力が1系統搭載し、カメラの回線などからのデジタイズに対応。12G-SDI出力は2系統搭載し、4Kモニターや民生用モニターに出力してモニタリングが行える。また、Thunderbolt3搭載により、外部ストレージと繋いでのリアルタイム編集や、XQDカードやSxSカードをUSB3.0で繋いでダイレクトにメディアから編集が行える。また、EVSサーバーに直接ダイレクトで覗いて収録中の素材でも、ダイレクトに編集を行うことが可能だ。
HDR編集のリアルタイム処理を実現するためのキーコンポーネントとして自社開発の「SKR-12GIO/EXP3」を新規開発。12G-SDI入力が1系統、12G-SDI出力を2系統搭載しているのが特長だ。SKR-12GIO/EXP3には、色情報の変換処理やXAVCのハードウェアエンコード機能を搭載。専用ICチップを使わずFPGAをベースに設計しており、将来的に新しい圧縮フォーマットが登場した場合でも、このFPGAを書き換えるだけで変更可能となっている。
また、さくら映機で8Kのリアルタイム編集機を昨年のリオオリンピックで実戦投入しており、そこで開発した機能を今回の4K Prunusにダウンサイジングした結果、4K60p HDR 2ストリーム+テロップのリアルタイム再生、または4K60p HDR XAVCファイルのリアルタイム書き出しが実現可能になったという。
新開発の12G SDIボードにより4K実用放送を前提としたシステムには欠かすことのできない正確な色情報でのモニタリングを実現している
4K Prunusで特に特長的な機能は、部分差し替え機能だ。制作現場でよく言われるのが、完パケをタイムラインに書き出した後にテロップの1箇所に変更があるという話で、この場合、これまでは頭からタイムラインの書き出しが必要とされた。大手ポストプロダクションでは、30分の尺の書き出しでも3時間エンコードの書き出し時間がかかっているという。部分差し替え機能を使えば手直しが短縮され、制作フローの効率化を実現できる。
追っかけ編集も4K Prunusの特長的な機能だ。12G-SDIからデジタイズされた収録素材をそのまま収録しながら編集が可能。収録中であっても、収録していない場合とまったく同じ操作が行え、書き出しにも対応する。EVSなどのサーバなどを置けないような現場や、小規模なシステムでもワークステーション1台でダイジェスト編集が行えるのも特長だ。
アイコンの赤丸は今コピーをしているという表記。コピー中でも再生は普通にでき、編集も可能
ラインナップは、4K/2Kが両方使えるモデル(税別600万円)と、4Kのみの対応モデル(税別500万円)だが、従来の2K版も4K版の発売に合わせて価格を改定する。4K Prunusだけでなく、2K版のPrunusバージョン4などをワークフローの中でうまく盛り込めるフローを提案していきたいとしていた。