米メディア大手の21世紀FOX(FOX)が、米放送大手シンクレア・ブロードキャスト・グループとの間で、地方放送局10局を買収する方向で交渉しているということが1月12日、欧米メディアで一斉に報道された。条件や金額などは明らかになっていない。この動きは、シンクレアが米同業大手トリビューン・メディアを買収する動きを助けるだけでなく、21世紀FOXの経営戦略にも肩を貸すものとしてみられている。

シンクレアは昨年5月に米同業大手トリビューン・メディアを40億ドル(約4440億円)で買収する意向を発表し、現在、連邦通信委員会(以下:FCC)の審査を受けているところである。そのFCCから承認の条件として、シンクレアは同社の資産の一部売却することを求められている。シンクレアは、既に米国の72%を占める223放送局の所持する、米国で最大の放送局オーナーだ。

FOXのアプローチにシンクレアが合意すれば、切り離す資産の一部をFOXが取得することになる。FOXは昨年12月、ウォルト・ディズニーに映画やテレビなどのエンターテインメント部門を、総額661億ドル(7兆4000億円)で売却することで最終合意に至ったところ。エンタメをそぎ落とした「新生FOX」は、スポーツや報道に注力することを掲げている。

シンクレアが切り離す地方局には、NFLで有力なシアトルやデンバーといったパワフルな放送局が含まれており、新生FOXの経営戦略と合致する。さらに買収に成功すれば、同社が保持する地方テレビ局の割合が全体の30%に増加する。FOXは現在、17の市場で28のチャンネルを所有している。

一方、FOXが「そぎ落とす」部分は何だろうか。FOXがディズニーに売却する資産に含まれるのは、映画スタジオとテレビコンテンツ。20世紀フォックステレビ、FXプロダクション、フォックス21、FXネットワーク、ナショナルジオグラフィック・パートナーズ、フォックススポーツ・リージョナル・ネットワークス、フォックス・ネットワーク・グループ・インターナショナル、スター・インド、スカイ、タタスカイ、エンドメル・シャイン・グループ、そしてディズニーと共に筆頭株主になっているHulu。Huluがディズニー傘下になることで、今後のHuluの立ち位置に疑問符が付くだけでなく、ストリーミングメディアを扱うOTT市場にも大きな波紋を広げることになるだろう。

(ザッカメッカ)