Blackmagic Designの発表によると、インドのデジタルシネマデザイナー兼カラリストのG・バラジ氏が、インドのヒット映画「AADAI」と近日公開予定の「Andhaghaaram」のグレーディングにDaVinci Resolve Studioを使用したという。

これまでに数十にも及ぶインド映画およびテレビ番組を手がけてきたバラジ氏は、映画のエディターとして、この業界でのキャリアを開始し、次第にDITおよびカラリストの仕事に移行していったいう。同氏は、2015年以来、30作以上の映画において、ポストプロダクションのカラーコレクションおよびオンセットでのデイリーにDaVinci Resolve Studioを使用している。

大ヒットを収めたスリラー作「AADAI」は、2019年にインドの映画館で上映が開始され、同年に世界的なストリーミングがリリースされた。同作は、自由奔放なカミニの姿を追う物語。カミニは、いたずらビデオをインターネット上で公開して有名になる。ある晩、遅くまでパーティーに興じていた後、廃ビルに裸で取り残されたカミニは、自分自身の過去に向き合わせられることになる。

作品自体はダークスリラーであり、気味の悪い廃屋で危険な状況に晒されているにも関わらず、主人公を鮮やかでカラフルにグレーディングするように同氏は依頼された。同氏は、特にカミニのスキントーンが廃ビルの灰色と対照的になるようにしつつ、極めて危険で敵意に満ちた状況にカミニが置かれていることを感じられるようにするのが重要だったと語る。

バラジ氏:本作では、撮影監督の思い描くルック、スタイル、意図に可能な限り忠実になるように仕上げる必要がありました。ソフトなコントラストと鮮やかなカラーにより、壮大な何かがあるように感じられるようにグレーディングしました。

本作での最大のチャレンジは、主人公の顔と体のルックに一貫性を持たせることでした。これを実現するには、主人公の肌を際立たせる必要があったので、ティールとオレンジのルックを使用することにしました。肌をオレンジのゾーンにし、灰色のビルはティールのゾーンになるようにしました。

主人公の鮮やかなルックを作成するために、DaVinci Resolve StudioのOpenFXプラグインであるフェイス修正が多用され、顔をソフトにし、目が際立つようにし、スキントーンに一貫性を持たせる作業が行われた。同機能は顔の輪郭と構成を検出し、主人公の顔を自動的に分析・トラッキングするため、シーンの他の要素と区別して顔の部分だけ個別にグレーディングすることができた。

カミニのルックを決める以外にも、グレーディングで薄気味悪い雰囲気を作り出すことも同氏は依頼された。

フィルムルックをエミュレートするエフェクトで、カーブを使用して、危機感を感じられるルックを作成しました。カーブエディターではすばやく作業でき、主人公のルックとは異なる感覚の暖かいルックを作成する上で完璧なコントロールが得られました。ルック用のノードを1つ作成し、DaVinci Resolve Studioのキー出力レベルを調整して各ショットがマッチするようにしました。これには、大変助けられました。

本作で、バラジ氏はインドに対する人々の固定観念を打ち破りたいと感じていたと語る。

インドは鮮やかな色に満ちた国です。それを強調して見せたかったんです。「Aandavan Kattalai」という映画を以前に手がけたのですが、その際は極めてわずかな形でしかカラーに手を加えませんでした。それと比較して、本作では鮮やかさを強調する作業を行いました。両作ともに、幅広い青、赤、オレンジが含まれており、DaVinci Resolve Studioの色相vs彩度カーブと内蔵カラー波形を使用して、突出した色をチェックし、必要に応じてコントロールできました。

バラジ氏は、DaVinci Resolve Studioを近日公開予定のダークドラマ「Andhaghaaram」にも使用した。同作は、盲目の魔法使いの苦闘、将来の見込みのないクリケット選手の解放、孤独な精神科医の更生を追う物語。偽り、失望、悪意により、それぞれの人生が蜘蛛の巣のように絡み合い、難解な迷路に彼らを誘い込む。

これらのプロジェクトを個別の映画としてアプローチするのではなく、異なるカラーパレットの違うジャンルとして扱おうと心がけました。自然を基本とする視覚的要素、ティールとオレンジ、深いシャドウのディテールなどに焦点を置いて作業しました。DaVinci Resolve Studioでは、様々なルックを作成する上で必要となるツールが多数搭載されています。また、レビュー用のFrame.ioのサポートにも助けられています。調整クリップでは、複数のクリップ用の特定のルックを一括で作成でき、エディットページのスタビライズやNeural Engineのフッテージのアップスケール機能は、本当に便利ですね。

DaVinci Resolve Studioによって、私のようなインディーズの映像作家が、編集からデジタル映画、そしてカラリストに移行できるようになりました。アクセスのしやすさ、価格帯、サポートしているツール数の多さは、他のソフトウェアでは考えられないですね。