WELT TVスタジオは、IPベースの照明技術をARRIの技術によって実現している
ARRIは、新たなサービス部門である「ARRIソリューショングループ」を開設した。新しい部門では、グローバルな映画・TV番組製作業界向けに、カメラや照明機材、レンズ、アクセサリーの製造・レンタルで知られるARRI社が総合的なソリューションを提供するという。
ARRIソリューショングループが主にフォーカスするのは、デザインや、カスタマイズされたインフラエンジニアリングで、例えば、複合現実を活用した撮影環境や最先端の技術を採用したTVスタジオなどのソリューションを提供する。
ARRIからエンジニアリングに関する経験・知識を有するグローバルチームとプロジェクトマネージャーのサポートを提供することで、クライアントがさらに安心して利用できるようになる。同サービスが実現できたのは、ARRIが地域、プロジェクト、サービスにおけるさまざまな要件にマッチする、多くの専門家とパートナーシップを築いているためだとしている。
ARRIグローバルセールスおよびソリューションゼネラルマネージャーのStephan Schenk氏は、同新サービスについて次のようにコメントしている。
ARRIがハードウェア製造以外の分野に進出してから、⻑い年月が経ちました。ARRIソリューショングループの専門家たちが、コンサルティング、コンフィグレーション、またはターンキー実装などのさまざまな分野において、映画や放送業界の要件にマッチする柔軟なソリューションをお届けします。そのためには、他製品やサービスを提供する外部企業との協力も非常に重要となります。
ARRIのミックスリアリティソリューション
ARRIソリューショングループが最初に行ったミックスリアリティプロジェクトの1つに、ドイツ・ベルリン近郊にあるバーベルスベルクに最近できた「DARK BAY Virtual Production Studio(ダークベイバーチャルプロダクションスタジオ)」がある。
ヨーロッパでバーチャルフィルムを制作する大規模な常設LEDスタジオの1つであるARRIソリューショングループは、必要な技術の全体的なプランニングと、全コンポーネントの実装調整を行った。クオリティ実現のために、クライアントとパートナーが一体となって協力し、ハードウェアとエンジニアリングパフォーマンスを融合させることでシステムを実現。このプロジェクトは、ARRIのカメラ機材、照明、レンタルの3部門が、ARRIソリューショングループによるプロジェクト管理と調整の下で連携し集中的に進めたという。
DARK BAY GmbHのマネージングディレクターであり、Netflixオリジナルミステリーシリーズ「1899(原題)」のプロデューサーでもあるPhilipp Klausing氏は次のようにコメントしている。
2021年春、私たちはStudio Babelsberg AGの敷地内に、たった3か月という短い期間で高性能のLEDスタジオを建設しました。LED、ライト、カメラ、データテクノロジーなどの幅広い知識を持つ、垂直的に統合された数少ないサービスプロバイダーの1つである「ARRIソリューショングループ」のチームが、全体的な計画を請け負いました。
スタジオで完璧な録音を行うためには、ディレクタ―、カメラ、照明、VFXからのすべての要望をバランスよく取り入れる必要がありました。ARRIグループ全体の優れた結束力のおかげで、このようなハイクオリティなスタジオが実現したのです。
現在DARK BAYでは、設立者Jantje Friese氏とBaran bo Odar氏によって「1899」の撮影が行われている。出演者たちは、⻑さ55メートル、高さ7メートルで、270°に湾曲したLEDウォールをバックに撮影を行っている。この撮影では、ALEXA Mini LFカメラと「1899」のために特別に開発されたARRIレンタルレンズが使用されているという。
このLEDウォールにはARRIのLEDパネル型ライト「SkyPanels」を70台使用しており、インタラクティブなライティングを実現。幅広い技術支援パートナーシップと、ミックスリアリティテスト環境を確立することで、ARRIは製品、ワークフロー、ソリューションの開発を推進。ロンドン近郊のアクスブリッジでは、ARRIおよびARRIレンタルが2021年6月に複合現実スタジオを開設。これらのスタジオは、商用目的およびデモで使用される予定だ。
追加で実施されるテストおよびデモステージは、ロサンゼルス近郊のバーバンクとミュンヘンにあるARRIによって運営されている。今後はさらにたくさんの複合現実スタジオプロジェクトが開設される予定。ARRIはバーベルスベルクにある、ヨーロッパで最初のボリュメトリックスタジオである「Volucap」の株主として、2018年のスタジオ開設以来、仮想現実と拡張現実を活用した録音技術の開発に取り組んできた。
ARRIのカメラと照明機材、およびアクセサリーは、ウォルト・ディズニー製作の「スター・ウォーズ」実写ドラマ「マンダロリアン」などの複合現実映画製作ですでに実用されている。
ARRIブロードキャストソリューション
ARRIソリューショングループの設立により、これまで放送および照明ソリューションに特化していたベルリンを拠点とするARRIシステムグループの組織再編が行われたという。責任を拡大したこの部門は「ARRIソリューショングループ」という新たな名称の下、現在、映画市場向けのコンサルティングやプランニング、視覚化、設計、実装、トレーニングなどのソリューションや専門知識の提供を行っている。今後は、SkyPanelやOrbiterなどの照明機材に加えて、AMIRA Liveなどのカメラ機材も検討の予定としている。
最近実施されたプロジェクトの中でも注目すべきものは、ベルリンに新しく建設されたアクセルシュプリンガービルに、WeltN24のために設置された2つの最先端のTVスタジオ。放送会社WELTの2つのニューススタジオは、スポットライトに至るまで、イーサネット/IPをベースにした照明技術だけを備えた初めての放送スタジオ。ARRIのSkyPanel 100台と他の照明器具と組み合わせることで、柔軟な照明デザインを提供するという。
WeltN24の最高技術責任者であるThorsten Prohm氏は次のようにコメントしている。
高度な専門知識とグローバルな経験を持つARRIは、私たちがTVスタジオで世界を代表する革新的な照明システムソリューションを活用することに大きな貢献を果たしています。非常に大きな責任を持ってこのプロジェクトに参加していただいたことで、ニュース放送局としての特別な要件を満たすと同時に、予算を最適化するワークフローをチームとして開発することができました。実装やインストールを含む、非常に高レベルな製品管理が行われました。
ARRIのスタジオソリューションを併用しているクライアントには、ARD、Al Araby TV、CBC、Epic Games、NENT、クウェートTV、オマーンTV、RTCGモンテネグロ、RTVセルビア、RTLグループ、SBAサウジアラビアなどがある。
ARRIリモートソリューション
コロナ禍でARRIは他の総合的なアプローチを開発し、現在はARRIソリューショングループの傘下で継続しているという。最高水準で安全に映画製作を行うためのARRIリモートソリューションとしている。ネットワーク化され、リモート制御可能なARRIカメラ、照明、リモートヘッド、アクセサリーにより、ARRIのリモートソリューションは運用や技術の柔軟性を維持し、出演者や撮影スタッフ、およびスタッフ同士で安全な距離を保ったワークフローを可能にするという。
Stephan Schenk氏は以下のようにコメントしている。
すべてのアプリケーションには、クライアントによって、その地域ごとの要件を遵守する必要があります。その要件は同じ地域のパートナー企業ごとに異なることもよくあります。ARRIではソリューショングループと共に、各クライアントに最適なソリューションを見つけられるよう努めています。