ついにアドビがNABの開催地ラスベガスに戻る日がやってきた。今回Adobeが実施した大幅なアップデートと新機能の数々を紹介する。
これにはApple TV 4K用の新しいFrame.ioアプリ、FiLMiC Pro、Atomos、Teradek、Viviana Cloud、FDXFilmDataBoxと統合されたCamera to Cloud機能、FilmLightのカラーグレーディングシステムBaselightとの新しいネイティブ統合、デジタル著作権管理や2段階認証などの高度なセキュリティ機能が含まれており、すべてのユーザーにとって役立つ内容となっているという。先週発表されたばかりのFrame.io for Adobe Creative Cloudにも適用される。
Camera to Cloudをすべての映像制作者に
Adobeの目標の1つは、使っているソフトウェアやハードウェアに関係なく、映像制作に携わる人すべてがFrame.ioにアクセスできるようにすることだとしている。同様に、映画やテレビから、コマーシャル、企業ビデオ、ライブイベント、ソーシャルメディアに至るまで、ビデオ撮影に携わるすべての人たちがCamera to Cloud(英語)を利用できるように取り組みを進めているという。
Teradek
業界でいち早くCamera to Cloudに対応したTeradekのServ 4Kに最先端のデジタルシネマカメラのオリジナルファイルから、軽量でタイムコード精度の高い10-bit 4K HEVC HDR形式のプロキシを自動作成してFrame.ioにアップロードする機能が追加された。
これは、撮影したばかりの4Kファイルをすぐにカラーコレクションし、デイリーとして共有できるということだ。フル解像度のデータの受け取りの完了とプロキシへの変換が終わるまで待つ必要がなくなり、撮影現場から、場合によっては納品に至るまで、これまでにないレベルのクラウドコラボレーションの道が拓かれる。
Atomos
Atomosとのパートナーシップにより、プロ用ビデオカメラ、ミラーレスカメラ、DSLRカメラもCamera to Cloudワークフローに対応する。Atomos Shogun Connectならびに既存のNinja V、Ninja V+デバイス向けAtomos Connectモジュール(英語)を利用することで、HDMIビデオを出力するあらゆるカメラがFrame.ioのCamera to Cloudワークフローに対応する。これにより、報道チーム、結婚式やイベントのビデオグラファー、企業向けならびにミュージックビデオ制作会社、ドキュメンタリー作家、独立系映画制作者など、何百万人もの映像クリエイターが、よりダイレクトなクラウドコラボレーションの恩恵を受けられるようになるとしている。
この新しいパートナーシップは、厳しい納期からくるストレスも軽減するとしている。撮影データを編集者やレビューアーといった作業パートナーにすぐにでも渡したいとき、カメラカードからのデータのダウンロードやファイルのトランスコードをじっと待つ必要はない。1回のテイクごとにフッテージが自動的に準備されるため、撮影とポストプロダクションを並行して進められる。これらのConnectデバイスは、2022年6月に出荷予定で、近日中に世界中のAtomos販売代理店で予約受付を開始する。
FiLMiC Pro
スマートフォンを駆使して短いクリップや写真の共有以上のことにチャレンジしているクリエイターにとって一番の悩みは、スマートフォンから編集ソフトにフッテージを取り込むプロセスだった。
スマートフォン用の動画撮影アプリFiLMiC ProがCamera to Cloud機能に対応(英語)し、Camera to Cloudが提供するクラウドベースのコラボレーションにこれまでにないレベルのアクセス性がもたらされる。FiLMiC Proで撮影した高品質で軽量な動画ファイルをCamera to Cloud経由でFrame.ioに直接アップロードし、どこにいても、遠隔地の共同制作者と即座にコンテンツの共有ができるようになる。
FDX FilmDataBox
Camera to Cloudは、FDX(英語)のサポートにより、DITDNxHD、AVC-Intra、ProResファイルへのトランスコードに加え、編集・視聴のためにFrame.ioのFixed Folder structureに直接アップロードするまでの一連のプロセスが自動的に行われる。
Viviana Cloud
Viviana Cloudとのパートナーシップにより、Camera to CloudワークフローがWi-Fi非対応のサウンドレコーダーにまで拡張された。SDカードに録音するサウンドレコーダーからもViviana Cloud Box(英語)に搭載されたWi-Fi機能を経由してFrame.ioにオーディオファイルをアップロードできるため、より多くの制作クルーがCamera to Cloudのワークフローを利用できるようになる。また、すべてのSDカードに対応するため、GoProのような一般的なカメラからのファイルのアップロードも可能。
FilmLight Baselight
新しいCamera to Cloudパートナーに加え、業界トップの色補正システムの1つであるFilmLightのBaselightとの統合(英語)も発表する。Frame.ioはパネルや拡張機能を必要とせずにBaselightとシームレスに統合し、ユーザーはマーカーコメント付きのレンダリング済みタイムラインをFrame.ioにアップロードできる。また、アップロードやダウンロードに含めるコメントは選択でき、リストからクライアントノートをフィルターして特定の関係者からの新規のノートだけに集中することもできる。
これらの統合により、カラリストから編集スタジオ、代理店、さらには長編映画やTV・ストリーミング配信用のプレミアムコンテンツに注力するエンターテインメント企業までのあらゆるユーザーに、より充実したエンドツーエンドのエコシステムを提供するとしている。
エンタープライズ向けの新機能
Apple TV 4K用の新しいFrame.ioアプリ(英語)は、企業ユーザーにより大画面かつ高品質なフォーマットで簡素化されたエグゼクティブ向けの視聴環境を提供する。メディア&エンターテインメント企業や代理店の関係者は、オフィスに居ながらにしてデイリーやリリース前のファイナルカットを確認できる。
コンテンツはセキュアなエンタープライズインボックスにアップロードされ、重要な関係者と容易に共有できるほか、高解像度の10-bit 4K HDRコンテンツをAppleTV 4Kデバイスに接続した大画面テレビで視聴することが可能だ。ユーザーは、Apple TVのリモコンから「キューを再生」機能を使って簡単にフォルダ全体を自動再生したり、クリップ間をジャンプすることができる。
加えて、コンテンツのセキュリティ強化のために、デジタル著作権管理(DRM)と2段階認証(2FA)(英語)の、2つの新機能を導入する。DRMは、複数の方式で暗号化された映像ファイルをFrame.ioのwebアプリ、iPhoneアプリ、Apple TV、各種統合機能においてのみ視聴可能にすることで、不正な視聴や海賊版を防止するものだ。
2段階認証は、ログイン時にユーザーの身元を確認するためのセキュリティレイヤーを追加するもの。Frame.io Enterpriseの管理者は、アカウント全体に対して2段階認証を有効にすることができ、チームメンバーは、Authy、Google、Microsoft、Oktaなどの一般的な時間ベースのワンタイム認証アプリ、またはSMSを使用してパスコードを受信できる。
デジタル著作権管理、2段階認証、および透かしIDの組み合わせにより、Frame.ioは、高価値の公開前映像作品にとって最もセキュアなクラウドサービスの1つ(英語)となっている。
エンドツーエンドのソリューション
今回の動画レビュー・承認プラットフォームならびにCamera to Cloudの最新アップデートは、Adobeが取り組んでいる、映像制作プロセスの革命の一環。完備されたエンドツーエンドのエコシステムをユーザーに提供することで、プリプロダクション、プロダクション、ポストプロダクションのいずれにおいても、より効率的なコラボレーションが可能になったという。
価格と提供時期
Camera to Cloudはすでに提供を開始しており、Frame.ioまたはAdobe Creative Cloudの有料メンバーは、Camera to Cloud機能を追加費用なしで利用できる。新しいAppleTVアプリ、FiLMiC Pro、Viviana Cloud Box、およびFDXとのCamera to Cloud統合機能も利用可能で、AtomosおよびTeradek Serv 4kについては近日中に利用可能となる。