VENICEやFX6と同じ共通ワークフローを実現
ソニーは、Cinema Lineカメラ「FX3」のメジャーアップデートVer.2.00を公開した。アップデート方法はこれまでと同じで、ソニー公式WebページからPCにダウンロードして、カメラ本体とUSBを接続することでアップデートが可能になる。アップデートの概要は以下の通り。
■カメラ内部でLUTを当てたSLog3撮影に対応
- 「Cine EI/Cine EI Quick/Flexible ISO」モードを搭載(新機能)
- プリセットLUTとユーザーLUTを使用可能(FX6搭載)
■操作性の向上
- 新たに「メインメニュー」を搭載(新機能)
- 撮影画面のアイコン配置・Fnメニューの呼び出し操作を改善(新機能)
■その他撮影・編集アシスト機能の拡充
- AFアシスト機能を搭載(FX6搭載)
- マルチカメラ運用時に必要なタイムコードシンクに対応(新機能)
それでは各設定を詳しく紹介していこう。
カメラ内部でLUTを当てたSLog3撮影に対応
アップデートの目玉は、カメラ内部でLUTを当てたS-Log3撮影だ。モニタリングLUTをカメラの液晶モニターや外部モニターに表示可能となり、ポストプロダクション時の最終的なルックを確認しながら撮影可能となる。
モニタリングLUTに関しては、プリセットLUT(S-Log3、s709、709(800%))に加えて、最大16個のユーザーLUTをインポートが可能。また、S-Gamut3、S-Gamut3.Cineの2種類のワイドカラースペースから選択が使用可能になる。
さらに好みのLUTでモニター映像を表示しながら撮影ができるlog撮影モードを搭載した。
「CineEI」モードは、ベースISOは標準基準感度の800と暗所環境用の高感度12,800の2つから選んで、ISOを固定した状態での撮影モードになる。15+STOPのダイナミックレンジを確保して、より幅広いダイナミックレンジを確保することで、後から編集をする際の幅を広げて対応しやすくなる。撮影時には、新たにEI(Exposure Index)を調整することでモニタリングLUTの露出を変更することができる。
「CineEI Quick」モードは、CineEIモードで撮影をするより簡単にCineEIモードを使用可能になる。仕組み自体はCineEIと変わらないが、カメラが自動的にベースISOの800、もしくは12,800から切り替えてくれる。ベースのISOを意識せずにEI値を調整するだけで撮影を進めることが可能となる。
「Flexible ISO」モードは、従来のS-Log3の撮影と同様にISOを調整しながら撮影をするモードになる。ISOの調整で、モニタリングLUTの露出を変更することができ、同時に設定されたISO感度は映像にも記録される。
新しく搭載したCineEIモードは、FX3のワークフローを大きく変える存在だ。これまでのS-Log3に関しては、例えばISO800で撮影をすると、本体内部でLUTを当てられず、ローコントラストな画を見て適正露出で撮るのは難しかった。また、LUTを当てるには外部モニターが必要で、ISOを変えた露出調整でノイズが増えてしまうリスクがあった。
これに対して、今回のCineEIモードを使うと、例えばISO800のまま映像ファイルとして収録をして、収録時の本体モニターのところでEIを適用し、LUTを当てることが可能。最高のダイナミックレンジを確保したベースISOで記録が可能で、ポストプロダクションの 柔軟性を最大限確保することが可能としている。
名称 | FX6 | FX3 Ver.2.00 | α7S III | α7 IV |
センサーサイズ | 35mmフルサイズセンサー | |||
画素数 | 約1290万画素 | 約1210万画素 | 約1210万画素 | 約3300万画素 |
フレームレート | 120P/60P/30P/24P | 120P/60P/30P/24P | 120P/60P/30P/24P | 30P/24P |
ファインダー | × | × | 〇約944万ドット | 〇約368万ドット |
ズームレバー | 〇ズーム速度2段階 | × | × | |
XLRハンドルユニット | 同梱 | 同梱 | × | × |
冷却ファン | ○ | ○ | × | × |
動画RAW出力 | 4.2K 16bit | 4.2K 16bit | 4.2K 16bit | × |
ピクチャープロファイル | S-Log3、HLG、S-Cinetone | S-Log3、HLG、S-Cinetone | S-Log3、S-Log2、HLG、S-Cinetone | S-Log3、S-Log2、HLG、S-Cinetone |
モニターLUT | ○ | ○ | × | × |
AFアシスト | ○ | ○ | × | ○ |
タイムコードシンク | ○A/Bカメ | ○Bカメ | × | × |
メニュー画面に「メインメニュー」を追加
操作性の機能機能の面では、メインメニューが追加された。フレームレートやホワイトバランス、LUTの情報をタッチ操作でクイックにアクセスができるようになり、VENICEやFX9、FX6、Cinema Lineシリーズと同じ操作性を実現できるようになった。今回のFX3のメインメニューの追加で、動画専用機としての操作性をさらに向上してきている。また、動画撮影時の待機画面で、設定情報やアイコンを映像とオーバーラップすることなく表示することが可能。ヒストグラムを表示しても、他のアイコンとかぶらず表示可能で、このあたりはVENICEやCinema Lineシリーズのカメラで得た知見を活かしているという。
Fn(ファンクション)メニューに関しては、右手でXLRハンドルユニットもしくはグリップをしっかり持った時に、親指がファンクションメニューまで少し使いづらい場合でも、カメラ液晶モニターを上方向へスワイプアップすることで呼び出すことができるようになった。
また、新たにAFアシスト機能が搭載される。FX6に搭載されている機能と同じもので、オートフォーカスで記録中でも、瞬時にマニュアル操作が可能になる。また、FX3では顔選択アルゴリズムを最適化することで、リアルタイムAF/顔検出、AF時にはオートフォーカス中もフォーカスリングを使って複数の人物の中から直感的に特定の人物にフォーカスを合わせることも可能になる。
最後に、FX6やタイムコード供給源となる出力機器とFX3を専用ケーブルを接続することによってタイムコードを同期ができるようになる。BNCケーブルを直接FX3につなぐことはできないので、USB端子変換ケーブル「VMC-BNCM1」(別売)が必要になる。こちらのケーブルに関しては、ソニーの業務用修理受付窓口からリペアパーツとして購入可能としている。
FX3が本格的なシネマカメラに仲間入りするアップデート
今回のアップデートにより、FX3はCinema Line上位機種と共通ワークフローの実現やVENICE、FX9、FX6のサブ機として使用できたり、Cinema Lineの上位機種へのステップアップがしやすくなる。動画専用機としての存在感をさらに高めるアップデート公開で、FX3への注目度はますます高まりそうだ。