シグマは2022年8月8日、フルサイズミラーレスカメラ用レンズ、「SIGMA 20mm F1.4 DG DN|Art」と「SIGMA 24mm F1.4 DG DN|Art」の新製品発表会をYouTubeにて実施した。
オンライン発表会には、同社代表取締役社長の山木和人氏が登壇。新製品のレンズ2本の魅力を解説した内容をお伝えする。
山木氏が発表したのは、「SIGMA 20mm F1.4 DG DN|Art」と「SIGMA 24mm F1.4 DG DN|Art」の2本。どちらのレンズも、フルサイズミラーレスカメラ用として設計されており、Lマウント用とソニーEマウント用をラインアップ。
これら2本の広角レンズの登場により、「SIGMA DG DN Art F1.4」シリーズのラインアップは、「SIGMA 35mm F1.4 DG DN|Art」と「SIGMA 85mm F1.4 DG DN|Art」を含め、4本となった。
コンパクトでクラス最高の光学性能の実現した20mm F1.4 DG DN|Art
山木氏は20mm F1.4 DG DN|Artから紹介。Artラインの製品なので、クラス最高の光学性能の実現を目指し、その目標は達成できたと考えていると語った。このレンズは、最高の光学性能を目指して設計されており、非常にコンパクトだという。元々フルサイズのデジタル一眼レフ用として設計された20mm F1.4 DG HSM|Artと比べると、焦点距離と開放F値が全く同じであるにもかかわらず、はるかに小さく、軽量だとアピールした。
レンズのサイズと質量の比較して、新製品20mm F1.4 DG DN|Artは従来の20mmよりもはるかに小型だとし、質量は635gと40%の軽量化がされているという。このレンズの小型化には、ミラーレスカメラの短いフランジバックが大きく貢献しているといい、後ほど詳しく説明する他のArt基準の最新技術も、この素晴らしい携帯性を実現するのに役立っているとした。
同社の従来製品20mm F1.4 DG HSM|Artは、フルサイズカメラ用20mmレンズとして初めて開放F1.4を実現した製品であり、現在市場にあるレンズの中で唯一無二のスペックを持つとした。2015年の発売以来、その優れた光学性能により、非常に高い評価を受けているという。例えば、lenstip.comは、「画面中央の性能については、とても言葉でその印象を説明できません」とコメントし、その光学性能から受けた感銘を表現したと紹介。しかし、今回この20mmの光学性能を更に高めることができたという。
従来商品20mm F1.4 DG HSM|Art(画像左)と新製品20mm F1.4 DG DN|Art(画像右)のMTF曲線を比較。どちらのレンズも、画面中央の光学性能が非常に優れているが、右側の新製品20mm F1.4 DG DN|Artでは、周辺部についても性能が大幅に改善されていることを示した。こうした性能は、風景や天体写真を撮影するときに、非常に重要になるとした。
実際に、同社の20mm F1.4 DG HSM|Artは多くの星景写真家に愛用されていることから、ミラーレスカメラ・ユーザー向けの新製品20mm F1.4 DG DN|Artは、さらに良いものにしたいと考えていたという。わずかな収差も写真に影響してしまうため、天体写真に最適なレンズを作るのはとても難しいと話した。特に、暗い背景に明るい点があると、サジタルコマフレアと呼ばれる収差が目立つという。しかし、このレンズの光学設計者は、この難題に果敢に挑み、画面全域で明るい点光源を非常に精密に再現することに成功したと語った。
20mm F1.4 DG DN|Artは3枚の非球面レンズを使用。いずれも両面非球面レンズで、前面と後面に効果的に配された2枚の非球面レンズが、画面周辺部の光学性能の向上に貢献するとともに、レンズ全体をコンパクトにする上で役立っているという。同様に、中央の非球面レンズは、中心部の光学性能を高めているとした。
このレンズには、2枚のSLDガラスも用いられており、これらに高屈折率ガラスを数枚組み合わせることにより、倍率色収差と軸上色収差を軽減しているという。新製品の20mmで撮影した、輝く星の点像を見事に捉えた写真を紹介し、熱心な星景写真家であればこの性能を気に入っていただけるものと確信していると語った。
天体撮影に役立つ20mm F1.4 DG DN|Artの特長
また、このレンズに取り入れられた天体撮影に役立ついくつかの特長を紹介。ひとつは、フロントフィルターもリアフィルターも装着可能であること。星景写真家の多くは、星の点像がより大きく見えるようにソフトフィルターを使用するが、フロント側にソフトフィルターを使用すると、星の像が放射方向に引き伸ばされてしまうという。そのため、こだわりを持った星景写真家は、ソフトフィルターをリア側に取り付けているとして、フロントにスレッド、リアにホルダーと、前後2か所にフィルター装着が可能なことにより、柔軟性が大幅に高まるとした。
例えば、フロント側に光害カットフィルターを、リア側にソフトフィルターを使用すれば、品質の高い撮影に大いに役立つと紹介した。
もうひとつの重要な特長として、同社がレンズに初搭載した新機能「MFLスイッチ」を取り上げた。星景写真家の多くは、ピントを無限遠に合わせた後、合焦位置が変わってしまわないよう、フォーカスリングをテープで固定しているといい、これは暗闇の中で撮影中にテープを使わなければならず、完璧な解決策とは言えないという。このMFLスイッチは、フォーカスリングの機能を無効にするため、無限遠に合わせた後、MFLスイッチをオンにすれば、誤ってピント位置がずれる心配がないという。
星景写真家に向けたもうひとつの特別な機能として、レンズヒーターリテーナーを紹介。星景写真家の多くは、低温環境下での撮影時、レンズの結露を防止するために、レンズヒーターを使用するという。このレンズヒーターリテーナーは、レンズ前面にある出っ張りで、ヒーターを正しい位置に保持。これにより、ヒーターが前方にはみ出し、写り込む可能性を排除するという。これらの機能は、天体写真だけでなく、風景など他の種類の写真撮影にも役立つとし、多くの写真愛好家にこうした機能を気に入っていただければ嬉しいと語った。
汎用性が高い24mm F1.4 DG DN|Art
続いて、こちらもフルサイズミラーレスカメラ用に設計された24mm F1.4 DG DN|Artを紹介。20mm F1.4 DG DN|Artと同様、このレンズも最高の光学性能を実現すべく設計されているが、元々一眼レフカメラ用として設計された24mm F1.4 DG HSM|Artに比べると、はるかにコンパクトだとアピールした。
24mm F1.4 DG DN|Artの長さは95.5mm、最大径は75.7mm。従来の24mm F1.4 DGHSM|Artに比べると、長さが16%短く、11%スリムになっているという。質量は520gで約 30%軽量化されているとした。
従来の24mm F1.4 DG HSM|Art(写真左)と新製品24mm F1.4 DG DN|Art(写真右)のMTF曲線を示し、どちらのレンズも、画面中央の光学性能が非常に優れているが、新製品24mm F1.4 DG DN|Artでは、周辺部についても性能が大幅に改善されていると話した。
新製品20mm F1.4 DG DN|Artの光学性能は、従来の20mm F1.4 DG HSM|Artよりも大幅に向上しているが、新しい24mm F1.4 DG DN|Artにおいても、従来製品と比べ同様の性能向上が見られるという。
24mm F1.4 DG DN|Artは、4枚の非球面レンズと2枚のFLDガラス、1枚のSLDガラスで構成されている。前面と最後面の非球面レンズは、画面周辺部の光学性能の向上と、ディストーションの補正に役立っているという。このレンズは、これら2枚の非球面レンズによって「ゼロ・ディストーション」を実現、他の2枚の非球面レンズは、レンズの中央部の性能強化に役立っているとした。
FLDガラスは、蛍石と全く同じ光学特性を持っており、1枚のSLDガラスと組み合わせることで、倍率色収差と軸上色収差の補正が行われると説明。また、このレンズで使用されている数枚の高屈折率ガラスは、像面湾曲とサジタルコマの補正に有効だという。これらの特殊ガラスにより、24mm F1.4 DG DN|Artは、驚異的な光学性能を実現していると語った。
20mmレンズは、最も要求の厳しい星景写真家がレンズに求める性能要件を満足させることを目的に設計されており、24mmレンズもまた、素晴らしい夜空を描き出すことができるものと確信しているとした。
24mm F1.4 DG DN|Artで撮影した写真を示し、星が瞬く風景写真を撮影する場合は、より広く景色を捉える「20mm F1.4」を好む方が多いかもしれないが、この「24mm F1.4」も星景写真家が選ぶ1本に十分適していると紹介した。24mmという焦点距離の方が、汎用性が高く、様々な写真に利用できることを考えると、24mm F1.4 DG DN|Artは多くの写真家にとって、極めて魅力的なレンズだと言及した。
24mm F1.4 DG DN|Artが備える基本的機能
20mm F1.4 DG DN|Artと同様に、この24mm F1.4 DG DN|Artも、フロントフィルターとリアフィルターの両方に対応するほか、フォーカスリングの機能を無効にするMFLスイッチも搭載。新製品の「20mm F1.4 Art」および「24mm F1.4 Art」は、ともに「SIGMA DG DN Art F1.4」シリーズに共通する基本的機能を備えているという。
第一は防塵・防滴に配慮した設計、第二に両方のレンズともに、絞りリング用のクリックスイッチを搭載していると紹介したデクリックモードは、動画撮影時に非常に便利だという。
また、両方のレンズともに、フォーカスモード切換えスイッチとAFLボタンも備えており、AFLボタンを押すとフォーカス位置をロック可能で、カメラのボディが対応していれば、このボタンに任意の機能を割り当てることもできるという。オートフォーカスは、静止画と動画いずれの撮影においても、高速、スムーズかつ正確に機能するとした。
ソニーEマウントについては、α7 IV、FX6、FX9など、ソニーの新しいカメラのAFアシストモードに対応。この機能を使用すれば、動画AF中、フォーカスリングを操作してマニュアルでフォーカスを合わせた被写体に対して、フォーカスリングの操作を止めた後も、フォーカスを自動で合わせ続けることができるという。将来的に、同社のレンズはこのAFアシストモードに対応していく予定のほか、既存のレンズについても、ファームウェアのアップデートよって、徐々に対応していく予定だとした。
レンズにはフードが付属しており、ともに広角レンズであるため、耐逆光性能が非常に重要になるという。同社の優れたゴースト防止機能により、両レンズともに、卓越した耐逆光性能を実現したと語った。
レンズの選び方
シグマのミラーレス専用設計の製品ラインアップには、「SIGMA 20mm F2 DG DN|Contemporary」と今回の新製品「SIGMA 20mm F1.4 DG DN|Art」の2種類の20mmレンズがある。コンパクトで軽量のレンズがお好みの場合は20mm F2がお勧めだという。大口径のF1.4が必要な場合は、今回の20mm F1.4が良いとしている。
ミラーレス専用設計の24mmのレンズには、「SIGMA 24mm F3.5 DG DN|Contemporary」と「SIGMA 24mm F2 DG DN |Contemporary」、そして今回の新製品「SIGMA 24mm F1.4 DG DN|Art」の3つの選択肢がある。とてもコンパクトで軽量のレンズが必要な場合は、撮影スタイルに応じてIシリーズの「24mm F3.5」か「24mm F2」を選ぶのを勧める。新製品の「24mm F1.4 DG DN|Art」は、明るく、可能な限り最高の光学性能が得られるように設計されているとした。
20mm F1.4 DG DN|Artの希望小売価格は税込152,900円、24mm F1.4 DG DN|Artは税込132,000円。