ソニーIBC2022出展概要

ソニーは、オランダ・アムステルダムで現地時間9月9日(金)から開催される国際放送機器展「IBC 2022」に出展する。未来の映像制作を再構築する意志を込めた「Architecting the Future of Media」を展示テーマに、撮影から編集、コンテンツ管理・配信まで、クリエイターの創造力を掻き立て、世界を感動で満たす多彩な映像制作をサポートするソリューションを総合的に提案するとしている。

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会場では、クラウド上での効率的なコンテンツ制作・共有・配信を実現する次世代のクラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」、場所や規模を問わずライブ制作の環境を構築するオンプレミスクラウド・ライブプロダクション「Networked Live」を展示。加えて、最新のCinema Lineカメラなど、クリエイターの多様な撮影ニーズに応える様々なカメラ群も展示する。主な展示内容は以下の通り。

Creators’Cloud

Creators’ Cloudは未来の映像制作ワークフローを見据えた次世代のクラウド制作プラットフォーム。クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせて、新たな映像表現や迅速かつ効率的な制作を実現する。今後、様々な配信形態への対応や、共通認証による各クラウドサービスのシングルサインオンや、共通ストレージ、共通の決済方法など、サービス利便性の向上も追求していくという。

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「Creators’ Cloud」で実現する映像制作ワークフロー

多彩なカメラで撮影した映像を、クラウドへ伝送するゲートウェイとしての機能を提供。クラウドカメラポータル「C3 Portal」により、5G対応スマートフォンなどの通信機器を活用し、撮影現場で記録した収録ファイルやライブ映像をモバイルアプリから簡単かつ瞬時にクラウドサービスへ伝送する。

2022年10月末には、新たにショルダーカムコーダー「PXW-Z750」、「PXW-Z450」、「PXW-X400」が「C3 Portal」に対応するほか、既存の対応カメラである「PXW-Z280」、「FX9」と「C3 Portal」との連携機能を拡張するなど、カメラとクラウドサービスとの連携を更に高めていくとしている。

クラウドサービスに展開するツールを組みあわせ、ライブ制作とファイル制作のオペレーションを統合したワークフローを提供する。例えば、スポーツ映像制作において、クラウド中継システム「M2 Live」と新たなAI映像解析サービス「A2 Production」を連携し、ライブ映像制作、リアルタイム性の高い自動ハイライト生成、マルチプラットフォーム配信といった一連のワークフローを提案する。

ソニーが培ってきたAI技術と様々なメタデータを活用したワークフローをクラウド環境で提供する。「Media Analytics Portal」を進化させ、新たにAI映像解析サービス「A2 Production」として、2023年2月以降、SaaSサービスとして提供を開始する。A2 Productionは、ライブおよびファイル映像の取り込み・編集・配信・管理などの制作ワークフローを拡張する。

また、新機能の「AI Rule Engine Maker」により、直感的なGUI操作でAIのルール設定が可能になり、ハイライト映像の自動生成や編集準備工程の自動化、映像・音声解析結果のメタデータ化など、AI技術の活用を容易にするという。

地理的に離れた制作チームのリモート操作・同時作業などの連携を強化する。クラウド中継システム「M2 Live」は、直感的な操作GUIへのアップデートや、外部サービス連携によるリアルタイムCG表示などに、2023年2月以降の新バージョンで対応予定。

また、収録された素材や編集されたファイル映像を、制作チーム間で共有できる映像制作に特化したクラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」は今年9月のアップデートによりUXをさらに進化させ、利便性を向上した。

M2 Liveから直接YouTubeライブなど複数のSNSへの映像の同時配信や、「A2 Production」からTwitterや外部クラウドサービスへの連携など、即時性の高い映像制作が可能。今後も様々な配信プラットフォームに適した形式で多様なコンテンツを提供する映像制作環境を提案するという。

パートナー企業との連携を推進

ソニーはCreators’ Cloudにおいて、映像制作ワークフローの各プロセスで価値を提供する企業や、クラウドプラットフォームを提供する企業などとの共創を進めており、今後さらに推進していくという。

今年8月にTeradek社のエンコーダー製品から「Ci Media Cloud」へのファイルアップロード連携を発表したことに加えて、「C3 Portal」でも同様の連携を開発中だという。会場ではTeradek社製品と「Ci Media Cloud」「C3 Portal」の連携について展示を行う。

Networked Live

IPベースの映像制作ソリューション「IP Liveプロダクションシステム」の枠組みを広げ、ネットワークに繋がる制作機器やクラウド上の制作リソースなどを活用した、次世代のリモートプロダクションにも対応するオンプレミスクラウド・ライブプロダクションを「Networked Live」として発表する。

Networked Liveは、オンプレミスとクラウドのサービスの組み合わせによって構成され、今後対応サービスを拡張していくという。放送局などが使用するネットワークの効率化に加え、オンプレミスやクラウドに分散した制作リソースを必要に応じて組み合わせることで、場所や規模を問わずライブプロダクションの環境を構築することが可能。

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主な特長

Networked Liveは、複数設備やリソースについて、遠隔での統合監視・一括制御を実現する。制御システムの一元管理が可能なことに加え、各システムは独立して稼働。このため、ある設備が停止した場合でも、他のシステムは稼働を継続することができるなど、可用性・信頼性に優れたシステム運用が可能だという。

また、小規模システムから大規模なシステムまで規模を問わない設計・運用ができる。さらに、システムだけでなく、それらを繋ぐネットワークの経路制御も含めて一元管理でき、ネットワーク規模の柔軟な変更も可能だ。

リモートプロダクション向けの、オンプレミス/クラウドシステムを活用したスイッチャープロセッシングエンジンを提供。プロセッシングエンジンを分散して配置することにより、映像制作スタッフの効率的な配置を行うことができ、柔軟な制作手段を提供する。

IP伝送規格における業界標準のSMPTE ST2110-22(JPEG XS)に加え、ネットワーク帯域をより効率的に運用することが可能な低遅延・高画質・高圧縮の新たなコーデックを開発。これにより、オンプレ機器間に留まらず、クラウドとの接続性の向上を実現し、コスト削減にも寄与するとしている。

Networked Liveの提供サービス:Nevion社のメディアネットワーク用SDNコントローラー「VideoIPath」にFederation機能を追加

Nevion社と連携し、オンプレミスとクラウドの設備を組み合わせて、各システム間の機器をよりシームレスに繋ぎ、時間や場所の制約がなくリソースにアクセスできる「VideoIPath」を提供。VideoIPathは、高度なSDN技術を駆使し、メディア伝送用ネットワークの高い柔軟性と耐障害性を実現するSDNコントローラー・ソフトウェアだ。

今年8月のアップデートにより、複数の独立したシステム間で信号リソースを自由にやりとりできるFederation機能を追加。同機能により、例えば中継車のリソースを柔軟に放送局側のIP設備に割り当てることなどが可能になった。

また、ネットワークの規模や経路制御をUIで可視化し、安全に一元管理できる。各拠点のシステムは自律しており、システムの一部がダウンしても、独立した他のVideoIPathで安全に継続稼働が可能。

Networked Liveの提供サービス:スタッカブル構造のライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」(新商品)

新たなライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」は2023年春頃に販売開始予定。同スイッチャーは、映像制作規模の変化に応じて、スイッチャーを構成するプロセッサーの台数を追加したり、システムの組換えができるスタッカブル構造を採用する。

これにより、制作毎に利用するスイッチャーの構成を柔軟に変更できるため、予め最大規模のシステムを用意する必要がなくなり、コスト削減に繋がるという。MLS-X1は、小規模から大規模な制作まで、様々な規模のスイッチャー用途にフレキシブルに対応するとともに、制作スタッフ人数が限られる場合での4K、HD同時配信などのマルチプログラム制作も可能にする。

また、今後リモート制作だけでなく、オンプレミスでもクラウド上でも、複数システム間のスイッチャーを統合して運用可能にすることを予定しているという。

Networked Liveの提供サービス:IPカメラエクステンションアダプター「HDCE-TX50」「HDCE-TX30」のJPEG XS対応

システムカメラと接続することで、リモートプロダクションで利用可能なIPカメラエクステンションアダプター「HDCE-TX50」「HDCE-TX30」が、新開発のソフトウェア「HZCE-JX50F」「HZCE-JX50H」(別売)を適用することで、SMPTE ST2110-22規格に対応した圧縮ストリーミング形式JPEG XSに、2022年11月中旬以降より対応する。

JPEG XSに対応することで、システムカメラで撮影した映像のデータ圧縮が可能になり、ネットワークの帯域幅を効率的に使用できる。これにより、リモートプロダクションに必要なネットワーク回線の帯域を抑えることができ、回線コスト削減に貢献するという。

多彩な映像表現を可能にするカメラ群

映像制作用カメラ商品群Cinema Lineの新商品などのカメラ群を展示する。

世界初フルサイズセンサー搭載レンズ交換式旋回型カメラ「FR7」

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映像制作用カメラ商品群Cinema Lineの新商品となる、世界初フルサイズセンサー搭載レンズ交換式旋回型カメラ。同商品は、フルサイズイメージセンサーと映画制作で培われたルックの搭載により、シネマのような印象的で高品位な映像表現が可能なことに加え、従来のリモートカメラのようなPTZ(パン・チルト・ズーム)機能により、ユニークな視点や動きによる本格的かつクリエイティブな映像コンテンツ撮影を実現する。同商品は、幅広い映像制作クリエイターに新たな映像制作手法の可能性を提案するとしている。

VENICEエクステンションシステム 2

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デジタルシネマカメラ「VENICE 2」用のカメラヘッド延長システム「CBK-3620XS」を発売する。同エクステンションシステムは、コンパクトな3mと最長12mの2種の延長ケーブル。リピーター不要で「VENICE」の高品位な画質をそのままに、撮影の自由度を高めるという。新たに8K伝送にも対応し多彩な映像表現を実現する。

また、「VENICE 2」ファームウェアVer2.00のアップデートを2023年初頭に予定。同アップデートでは、イメージセンサーの読み出しモードの追加や記録機能の強化など各種機能の拡張を予定しており、エクステンションシステム 2に対応する。

この他、Crystal LED Bシリーズとデジタルシネマカメラ「VENICE2」を組み合わせたバーチャルプロダクションの展示なども行う。