Blackmagic Designによると、2023年ダンス・ウィズ・フィルムズ映画祭でプレミア公開されたSF短編映画「Outpost(原題)」が、Blackmagic URSA Mini Pro 12Kデジタルフィルムカメラで撮影され、ポストプロダクションでは、編集、グレーディング、VFX、オーディオプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve Studioが使用されたという。
「Outpost」は、近未来の荒廃した地を舞台に、自信過剰な略奪者と彼の仲間である皮肉屋のロボットが、廃墟となった貯蔵庫を略奪し、思いがけない出会いを果たす様子を描いている。同作は、ジェイミー・コスタ(「Robot Riot(原題)」、「Bring Him To Me(原題)」)、ステファニー・バークレー(「Episodes from Apocalypse(原題)」、「Alone(原題)」)らが出演し、ウィリアム・ヘルムート氏が撮影監督を務め、ジュリアナ・ウルリッヒ氏、ブライアン・ウルリッヒ氏、ジェイミー・コスタ氏がプロデュース、ベンジャミン・アンクラム氏が監督を務めた。
長年のコラボレーターであり、友人同士であるコスタ氏とアンクラム監督は、以前から一緒にプロジェクトができないかと考えていたという。
アンクラム監督:何年も前から、このプロットデバイスを使った物語を作りたいと思っていたんです。
脚本を書き上げてジェイミーに送ったところ、とても気に入ってくれ、どうせなら一緒にやらないか?という話になったんです。脚本をジェイミーに送ってから4週間後に、全ての撮影を1日で行いました。
ヘルムート氏に撮影監督を依頼したのはコスタ氏であったという。
コスタ氏:彼はとても優秀な撮影監督で、ビジョンをすぐに理解してくれます。
彼に任せておけば、ただ後ろに立っているだけで大丈夫です。
ヘルムート撮影監督は、同プロジェクトをURSA Mini Pro 12Kで撮影することにした。
ヘルムート撮影監督:12Kの非べイヤーパターンのセンサーに興味があり、プロジェクトでどこまで色を追い込めるか試したかったんです。
終末的でSF的な「Outpost」の世界観と、撮影場所の組み合わせは、すぐにインスピレーションを与えてくれました。そして、これは様式化されたルックに挑戦する絶好の機会だと思いました。
撮影は冬に行われたので、ヘルムート撮影監督は、太陽の角度が低いことを利用して、最大限の効果を得たという。
ヘルムート撮影監督:影を、リフト調整した古いポラロイドのような、厳しくも温かいルックにしたかったんです。
このような極端なルックにする場合、ニュートラルに撮影してポスプロで調整するのではなく、最初から希望する露出で撮影することがベストです。多くの場合、ハイライトがクリッピングしないギリギリの露出にして、シャドウ部分のディテールをできるだけ残すようにしています。この方法だと、ポスプロでノイズを発生させずにシャドウのディテールを表示して柔軟に対応できます。
ルックの開発において、ヘルムート撮影監督は、カラリストのウェス・ラングドン氏に撮影LUTを作成するよう協力を求めた。
ヘルムート撮影監督:ウェスと私は、私たちが希望するルックについて、プリプロダクションで数日間話し合いました。
ウェスに様々な映画のスチルを送り、「この映画のガンマカーブをこの映画のカラーと組み合わせて欲しいんだ」というようなことを伝えました。ウェスは、同じような照明条件で、私があらかじめ12Kカメラで撮影したクリップをグレーディングして送ってきました。
同じカメラで撮影したフッテージを使って、ラングドン氏はヘルムート撮影監督が希望するルックをエミュレートした撮影LUTを作成した。アンクラム監督やコスタ氏もこれを気に入ったという。
アンクラム監督:ウィリアムと私はルックに関して何度も話し合い、「アラビアのロレンス」や「スター・ウォーズ」などの作品を参照しました。私たちがインスピレーションを受けた映画とは一線を画す、ユニークな作品にすることが目標でした。
ヘルムート撮影監督は、ポストプロダクションで柔軟に処理できるよう、Blackmagic RAWの利点を最大限に利用した。
ヘルムート撮影監督:Blackmagic RAWは非常に効率的でダイナミックなフォーマットです。今回のように一般的なリソースから離れた場所で撮影する場合、Blackmagic RAWで撮影できることが鍵となりました。ウェスと私はかなり極端なグレーディングを想定して撮影したのですが、Blackmagic RAWで撮影したことで、ポスプロで安心感と十分なラティチュードを得られました。
アンクラム監督はエディターの役割も担い、DaVinci Resolve Studioで作業した。
アンクラム監督:「Outpost」は、私がDaVinci Resolveで編集を行った3つ目の作品です。
DaVinci Resolveは、他のNLEと比べて、より直感的だと思います。私にとってこれは一番重要なファクターです。また、UIもより簡潔で効率的だと感じます。私は一般的なコンピューター用のキーボードを使用しているのですが、それでもマウスを使わずに多くの編集作業を行えます。私が気に入っているキーボードショートカットは、スワップ機能です。これは、特定のクリップを、隣接するクリップとスワップすることで、タイムライン上で左右に動かせる機能です。物語部分のシーンを編集する際に、この機能をよく使用します。
ヘルムート撮影監督は、最終的なグレーディングにおいて、撮影LUTをあらかじめラングドン氏と一緒に作成していたことが功を奏したと語る。
ヘルムート撮影監督:プリプロダクションでルックを準備していたので、グレーディングの際に大まかなアウトラインをすべて決めていくのではなく、ここの部分のシャドウを強調する、このシーンでは空を際立たせるなど、ディテールに集中することができました。
ラングドン氏は、これまでのヘルムート撮影監督との仕事や彼の作品を基に、同作のビジュアルをさらにレベルアップさせることができたという。
ラングドン氏:ウィリアムが「スター・ウォーズ」の大ファンであることをわかっていたので、「タトゥイーン(スター・ウォーズに登場するの惑星)」の外観を参考にしました。
「スター・ウォーズ」の撮影の時間帯や、ウィリアムの過去作品のフレーミングを参考にすることで、西部劇っぽい雰囲気を出していますが、プロダクションデザインとパンチの効いたカラーで、より現代的なSFの雰囲気に仕上がっています。また、カラーコントラストが大きな役割を担っており、私のグループルックの「Hue Vs Sat(色相vs彩度)」のノードでは、例えば空からティールブルーを抜き出すというようなことができます。
これに関して言えば、私はストーリーのグレーディングを行う際に、より写真的に考えたいと思っています。それはつまり、イメージ内で自然なカラーコントラストを評価し、それに抗うのではなく、上手く利用するということです。
今回は、サチュレーションを上げた土壌のパレットに多くが固定されているので、登場人物のシフやブラスター銃、あるいは空などの小さなエレメントが、フレームから飛び出すようになっています。
「Outpost」はダンス・ウィズ・フィルムズ映画祭でプレミア公開されたが、コスタ氏とアンクラム監督は、すでに続編の制作に取り掛かっているという。
コスタ氏:ベンジャミンと私は、これまでにいくつかのプロジェクトで一緒に仕事をしており、ルームメイトだったころから友情を育んできているので、"友達と一緒に映画を作る"というノリなんです。
コスタ氏は、長編映画への出演に加え、複数の短編プロジェクトをプロデュースしており、自身と友人たちの才能を紹介している。
コスタ氏:Blackmagic Design製品があれば、撮影からポスプロまで、多くの予算を投じた大作と同じ品質を得られることが魅力です。私は品質にこだわり、最高のルックを得るためには妥協しません。Blackmagic製品はまさに、納得のいく際立った作品を作ろうとするあらゆる映画制作者に最適な製品だと思います。