ライカカメラ社(以下:ライカ)は、M型カメラの新製品「ライカ M11-P」を2023年10月28日に発売する。ライカオンラインストアでの販売価格は税込1,474,000円。
ライカ M11-Pは、デジタル画像の真正性を保護するために、撮影時にコンテンツクレデンシャルを添付してメタデータを保存する世界初のカメラだ。カラーバリエーションはブラックとシルバーの2種類。
M型カメラは1954年の登場以来、直感的な操作性を誇り、目立たずに撮影できる独自の撮影スタイルにより、フォトジャーナリストから特に高く評価され、これまでに世界の歴史的瞬間を克明に記録した名作生み出してきた。
現在、デジタル技術が普及した結果、写真を含むさまざまなコンテンツに対して後から手を加えることが容易にできるようになり、加工や偽造されたデジタルコンテンツが出回ったことで、その信憑性に疑問の目が向けられることも起きるようになった。そして、コンテンツがオリジナルであることを証明することの難しさも浮き彫りになっている。
コンテンツクレデンシャルは、業界標準としてさまざまな種類のコンテンツに対して広く採用されており、オンライン上でコンテンツの信頼性と透明性を高める基盤として活用されている。写真家が撮影した作品の信頼性を担保するため、来歴情報の記録が効果的であると考え、ライカM11-Pにこの機能を搭載した。
ライカM11-Pには、コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)が提供するオープンソース規格に基づく機能として、画像に安全なメタデータを付与する機能が搭載されている。この機能により、画像データの生成と編集の透明性をさらに高めることが可能になる。撮影者の氏名や撮影日、使用したカメラの機種のほか、どのような編集が行われたかの履歴などを安全な方法で記録できるため、画像の出所と来歴を把握できる。
また、CAI準拠の証明書に裏付けされたデジタル署名も画像に付与。画像の真正性は、CAIが提供する無償のオープンソースのツールや、ウェブサイト「Verify」でいつでも簡単に確認できる。
この機能で採用している技術はカメラ内の特殊なハードウェアを通じて画像の真正性を証明できるようにするもので、ドイツ連邦印刷局発行のデジタル証明書を保存するための特殊なチップセットも含まれている。この先進の機能により、画像の来歴を確実に証明できる仕組みを実現した。
ライカは、アドビ社主導のもとでメディア企業やテクノロジー企業、NGO、学術機関など世界中の約2,000の企業・団体が参画してコンテンツクレデンシャルの採用と普及を目指すCAIと協働しながら、デジタルコンテンツの保護において新たな基準を打ち立てようと取り組んでいるという。
ライカの社主であり監査役会議長でもあるアンドレアス・カウフマン博士は次のようにコメントしている。
カウフマン博士:ライカのカメラはこれまで常に、歴史に残る重要な瞬間を世界中で目撃・記録してきました。ところが、写真の世界にデジタル化の波が到来した結果、ビジュアルコンテンツの真正性を確認することは益々困難になり、どのようにしてそれを確認するかが一層重要になっています。
そこで今回、画像の真正性を示すことができる技術をカメラに取り入れ、デジタルコンテンツの信頼性をここでもう一度高めるとともに、世界で起きる重大な出来事を記録するツールとしてのライカのカメラの信頼度を改めて向上させていくことにしました。
アドビ社のコンテンツ認証イニシアチブのアドボカシー&教育部門責任者であるサンティアゴ・ライオン氏は、次のようにコメントしている。
ライオン氏:ライカがフラッグシップ機である「ライカM11-P」に世界初の試みとしてコンテンツクレデンシャル機能を取り入れたことは、非常に喜ばしいことだと思います。これはCAIにとっても、フォトジャーナリズムの未来にとってもきわめて大きなマイルストーンです。これを契機にフォトジャーナリストやクリエイターに対して、デジタル著作権の主張、虚偽の情報の拡散防止、作品に対する真正性の担保と信頼性の確保の面で、非常に効果的な新しい手段を提供できるようになるでしょう。それと同時に、コンテンツクレデンシャルのさらなる普及にも期待が持てます。
主な特長
「ライカコンテンツクレデンシャル」機能
「ライカM11-P」が搭載したこの機能は「Leica Content Credentials(ライカコンテンツクレデンシャル)」と呼ばれます。この機能はメニューから設定することができ、オンにすると液晶モニター上に「Content Credential」のロゴが表示され、撮影するたびに信頼性を確保する署名が特殊なアルゴリズムによって画像に付与されるようになる。
また、撮影したカメラの機種、メーカー、画像の撮影情報も付与できる。これらの情報は後から改変できない一方で、CAIが無償で提供するオープンソースのツールでいつでも確認できるため、画像の真正性を担保する証明として利用可能。画像が撮影時のオリジナルなのか、編集されたものなのかを把握できるほか、どのような編集が行われたかの履歴も確認できる。
このようにして、撮影者は撮影から公開までのすべての過程において写真の真正性を示すことが可能となる。
外観デザイン
ライカM11-PはM型カメラならではの「控えめな存在感」がさらに洗練を極めたほか、より幅広い用途に対応できるようになった。まず外観デザインにおいては、トップカバーの正面に「Leica」の赤いロゴを配置していない。これにより、さらに目立つことなく撮影できる。正面の赤いロゴの代わりに、トップカバーの上面に筆記体の「Leica」が刻印されている。
トップカバーは、ブラックはアルミニウム、シルバーは真鍮の削り出し仕上げ。ボディ部分は高強度のマグネシウム合金のフルメタルで、デリケートな内部をしっかりと保護する役割を果たす。背面の液晶モニターはサファイアガラス製で、反射防止と表面保護の効果があるコーティングが施され、難しい光の状況下でも画像をしっかりチェックしやすい仕様となっている。
テクノロジー
撮像素子と画像処理エンジンは「ライカM11」と同様で、トリプルレゾリューション技術を取り入れた6000万画素の裏面照射型CMOSセンサーおよび「LEICA MAESTRO III(ライカ・マエストロ・スリー)」を採用。これらのテクノロジーを組み合わせることでさまざまな用途やシーンに対応できる高い柔軟性を実現している。内蔵メモリーは大容量の256GBにアップしている。