大日本印刷株式会社(以下:DNP)は、「世界遺産 仁和寺 国宝『金堂』」(京都府、以下:仁和寺「金堂」)の高精細3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)データを制作し、バーチャルプロダクション用背景データとして提供を開始した。
バーチャルプロダクションは、スタジオの大型スクリーン等に3DCG等の仮想的な背景を投影し、その前に人や物を配置して撮影することで、現実の世界のような映像をつくり出す手法。
現在、「神田明神」(東京都千代田区)、「銀座四丁目交差点」(東京都中央区)の高精細3DCGデータのラインアップがあり、今後はバーチャルプロダクションに加え、メタバースでのイベントや教育などの多用途で3DCGデータを活用し、文化資源の持続的な保護と魅力の発信を両立させて地域を活性化する取り組みなどを展開していくとしている。
DNPは、リアルとバーチャルの空間を融合するXR(Extended Reality)の技術を用いて新しい体験と経済圏を創出する「XRコミュニケーション事業」を推進しており、その一環でバーチャルプロダクション用背景データを制作・提供している。
今回制作した仁和寺「金堂」3DCGデータは、ソニーピーシーエル株式会社(以下:ソニーPCL)が運用する高品質デジタル背景アセットライブラリーサービス「BACKDROP LIBRARY」で公開・ライセンス販売する。
開発の背景と取り組みの概要
近年、映像業界では、撮影の効率化や新たな映像表現の開発などに向けて、バーチャルプロダクションによる映像制作へのニーズが高まっている。しかし、現状はバーチャルプロダクションの背景に使える3DCGデータのバリエーションは少なく、特に撮影に多くの配慮が必要な文化財や公共施設等の高精細な3DCGデータが求められている。
DNPは文化財を毀損することなく「保存・保護」し、その魅力を高めながら観光資源等としても「公開」して、次世代へ継承するデジタルアーカイブ事業を推進しており、2019年には、仁和寺「金堂」の高精細8K VRコンテンツを制作している。これらの技術・ノウハウとコンテンツ制作の実績で、バーチャルプロダクション用データの課題・ニーズに応えていくとしている。今回、高解像度画像データの変換・加工・最適化技術を活かし、新たに仁和寺「金堂」の高精細3DCGを制作した。
仁和寺「金堂」3DCGデータの特長
DNP独自の技術で、「現存する最古の紫宸殿」を精密に表現
仁和寺「金堂」は慶長年間(1596~1615年)に造営され、後に仁和寺に移設された日本に現存する最古の紫宸殿(ししんでん、内裏の正殿)。DNPは文化財のアーカイブ事業などで培った独自技術で、宮殿建築ならではの細部の装飾や、時を経た外壁の木質など、文化財が持つ美しさや歴史的価値を3DCG上で精密に表現した。
国宝 仁和寺「金堂」の高精細画像を活用した希少な映像制作が可能
世界遺産である仁和寺「金堂」の画像データをバーチャルプロダクションの背景にすることで、臨場感あふれる希少な映像の制作が可能になる。映像の視聴者が現地を訪れたような体験をすることで、仁和寺「金堂」の美しさや歴史的価値に対する理解と関心を深めることにもつながる。
高精細3DCGデータを早期の制作・提供が可能
DNPは、国内外で3,000件以上の豊富な計測実績を持つ協力会社と連携し、同社保有の「点群データ」を活かしたバーチャルプロダクション用データを提供します。同社の計測済み「点群データ」を活用することで制作工程の負荷を低減し、背景(ロケーション)データの早期提供を可能にする。
今後の展開
DNPは、文化財の保護と次世代への継承を支援することに加え、メタバース・教育・観光等の多様な分野で活用できるコンテンツとして展開することを目的として、文化財関連の高精細3DCGデータの提供を推進していくという。また、海外に向けた日本の各地域の魅力の発信にも取り組んでいく方針だ。
DNPが制作する3DCGデータについて
DNPは文化財のアーカイブ事業などで培った独自の撮影・加工技術や、3Dデータ上での微細な凹凸情報等の表現、バーチャルプロダクション特有の撮影に連動したリアルタイムな陰影情報の表現を施して、高精細な3DCGデータを制作している。これらの特長により、バーチャルプロダクション用の背景として、光源の位置や撮影アングルが変化しても、適切な陰の形状や陰影の強弱が表現でき、リアルなロケーションのような撮影を可能とする。