ソニーは、オランダ・アムステルダムで現地時間9月13日(金)から開催される国際放送機器展「IBC(International Broadcasting Convention)2024」に出展する(ホール13、ブース番号:13.A10)。
「Creativity Connected(クリエイティビティ コネクテッド)」の展示テーマのもと、放送局やプロダクション、クリエイターに向けて、多彩な映像制作を可能にする商品・ソリューションを総合的に提案する。
会場では、ライブ制作ソリューション「Networked Live(ネットワークド ライブ)」、クラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud(クリエイターズ クラウド)」、最新のカメラやモニターなど豊富なイメージング商品群、バーチャルプロダクションの進化を紹介する。
1. オンプレミスクラウド・ライブプロダクション「Networked Live」
「Networked Live」は、オンプレミスやクラウドなど、多様な環境に点在する制作リソースをハイブリッドに活用することで、より効率的なライブ制作を実現する。本ソリューションは、場所や規模にとらわれないシステム構築を実現し、映像システム/カメラシステムの複雑な管理や運用を簡素化する。展示では「Networked Live」のメディア伝送、オンプレミス・ハイブリッド運用、ネットワークとリソースの統合管理の3つを軸に、本ソリューションの進化点や活用事例を紹介する。
メディア伝送
ソニーは、「Networked Live」の推進に向けて、各国の通信事業者や放送局と共に、多様なユースケースでの5Gネットワークを介したワイヤレスメディア伝送に取り組んできている。展示ではカメラやリモートプロダクションユニット「CBK-RPU7」、ポータブルデータトランスミッター「PDT-FP1」を用いて、5G無線通信を活用したライブ制作のワークフロー事例を紹介する。
Nevion社のソフトウェアベース IPメディアノード「Virtuoso」は、映像制作の現場で利用シーンが増えているHEVC圧縮(2024年11月末発売予定)とSRT伝送(2024年12月末発売予定)にも対応する。放送品質の画質(HEVC圧縮)とSRT伝送を両立することで、より柔軟かつ高品位なライブ制作環境を実現する。
展示では、2024年7月に公開したメディア・エッジプロセッサー「NXL-ME80」の新バージョン(V1.1)の機能を紹介する。最新バージョンは、HD8系統の超低遅延伝送を実現し、さらに5G無線伝送の受信機としても使用可能。
オンプレミス・ハイブリッド運用
2024年6月に発売したソフトウェアスイッチャー「M2L-X」は、さまざまなストリーミングフォーマットと複数のレイヤーを扱うことができる。また、「M2L-X」は、ソフトウェア・デファインドとの親和性により、仮想化環境で他社アプリと連携したライブ制作システム構築が可能。大規模スポーツイベントなど、一時的にリソースを増やしたい場合に期間限定でリソースを拡張し、初期投資を抑えながら柔軟な運用できる。
さらに、スタッカブル構造により、機器構成を柔軟に変更ができるライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」を組み合わせることで、制作ニーズに応じてハードウェア/ソフトウェア、オンプレミス/クラウドを選択、または組み合わせたソリューションを提供する。展示では2025年1月に対応予定の仮想プライベートクラウド(VPC)環境やデータセンター、COTSサーバーへの組み込みやサードパーティアプリケーションとの連携による制作ワークフローを紹介する。
「MLS-X1」の最新バージョンは、拡張性と操作性のさらなる向上を実現する。展示では、2024年公開予定の2つのバージョンの機能を紹介する。2024年10月に公開予定のバージョン(V2.2)では、小規模制作でも導入しやすいハーフ構成の設定に対応する。基板追加によるフル構成規模への拡大や、ボックス追加により更なる拡張が可能。さらに、2025年3月公開予定のバージョン(V2.3)では、タリーやクロスポイントの状態に応じたマクロの実行機能とパネル設定の一括呼び出し機能に対応予定。
ネットワークとリソースの統合管理
カメラコントロールネットワークアダプタ「CNA-2」は、2024年12月末に対応予定の新機能を展示する。新機能では、HDCなどシステムカメラ機器のカメラドメインを超えた管理・設定に対応し、柔軟かつ安全にライブシステムを構築する。また、ライセンスベースのソフトウェア「HZC-MSUCN2」を使用して、Webブラウザ経由でマルチカメラの制御や構成へのアクセスも可能。
2. 次世代のクラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」
「Creators’ Cloud」は、効率的なメディア制作、共有、配信に特化するソニーのクラウド制作プラットフォーム。本プラットフォームは、法人・個人向けとしてさまざまなサービスを展開し、複数のサービスと連携も可能。展示ではクラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせた、効率的で柔軟な制作ワークフローを紹介する。
法人向け「Creators’ Cloud」
「Creators’ Cloud」は、ハードウェアとソフトウェアのCOTS活用やオープンインターフェイス対応、ライブ制作やニュース収集などの特定のコンテンツ使用事例に応じたひな型を提供する。ソニーが持つ豊富な知見に基づき、ライブスポーツ業界の制作環境に応じた効率的な制作と放送を実現する。
クラウドメディアストレージ「Ci Media Cloud」は、ポストプロダクションのワークフローを強化するため、2024年秋以降に対応予定のBlackmagic Design社「DaVinci Resolve」とのネイティブ統合を初公開する。この統合により、本ストレージに保存している映像素材の検索やプレビュー、プロキシのダウンロード、コメントの確認、新しいカットのアップロードをすべてノンリニアビデオ編集ソフトウェア (NLE) から直接実行できるようになる。
クラウド経由で素材を伝送可能な「C3 Portal」は、対応カメラを拡充し、LiveUなどのサードパーティの送信機や汎用SRTエンコーダーからストリーミングフィードが受信可能。また、カメラフィードをクラウドに迅速かつ簡便に送信する。例えば、Teradek社の「Node II」 と「Node II CBRS」、「Node 5G」ワイヤレスモデムを対応カメラと連携することで、「C3 Portal」へのストリーミングや録画ファイル送信が可能。展示では最新の対応カメラとの連携を紹介する。
AI映像解析サービス「A2 Production」は、リアルタイム性の高い単一ソースによるマルチコンテンツ制作を実現。展示では独自のAI解析エンジンや「AI Rule Engine Maker」を用い、ライブ・収録映像のハイライト映像・クリップ作成、メタデータタグ付けを紹介する。また、クラウド中継システム「M2 Live」は、「A2 Production」と連携したハイライト映像の自動生成、インスタントリプレイや2024年9月公開予定の新しいソフトウェアバージョン(V1.4)で対応するクリップトランジションを展示する。
個人向け「Creators’ Cloud」
映像モニタリング・リモートコントロール用モバイルアプリケーション「Monitor & Control」は、モバイル端末とカメラのUSB有線接続とシャッターアングル表示に対応します(2024年9月12日対応予定)。
Creators’ Cloudモバイルアプリケーション「Creators’ App」は、カメラからモバイル端末への撮影データ転送の中断再開、差分転送に対応し、転送中も撮影可能です(2024年9月12日対応予定)。
動画編集プラグインソフトウェア「Catalyst Prepare Plugin」は、「Ci Media Cloud」との併用により、クライアントのレビューコメントを参照しながら、メタデータを活用した補正を実現する。また、現行のAdobe社「Premiere Pro」への対応に加えて、2024年秋以降にBlackmagic Design社「DaVinci Resolve」に対応する。
3. コンテンツの付加価値を高める豊富なイメージング製品群
2024年8月20日に発表した4K 60p/120p記録対応のXDCAMメモリーカムコーダー「PXW-Z200」とNXCAMカムコーダー「HXR-NX800」を展示する。両機はAIによる被写体認識・AFを搭載し、高精度なオートフォーカスによる撮影をサポートする。光学20倍ズームレンズやアサイン可能なリング・ボタン等による高い機動性や操作性、拡張性を兼ね備え、1台で高画質な撮影やネットワーク接続によるライブ配信を実現する。
2024年9月5日に発表したTRIMASTER HX搭載の17型4K液晶マスターモニター「BVM-HX1710N」の試作機を展示する。本機はSMPTE 2110 IPに対応し、「Networked Live」で活用する際の利便性を向上。SDIおよびHDMIへの対応に加え、最新の二層液晶パネル搭載により、深い黒色や正確な色再現、高ダイナミックレンジ、3,000 cd/m2のピーク輝度を実現する。
また、業務用マスターモニターのフラッグシップモデル「BVM-HX3110」とMini LEDバックライト搭載の4K液晶テレビ「BRAVIA 9」を映画制作向けモニターとして展示する。「BRAVIA 9」は、業務用マスターモニターの開発で培ってきた高輝度や色再現技術に加えて、独自のバックライト制御技術など共通のコア技術を採用。
また、欧州では2024年11月より「BRAVIA 9」の65インチを新たに発売し、ラインアップを拡充する。ソニーは、コンテンツの撮影現場から家庭での視聴まで、クリエイターの意図した表現を忠実に再現できるディスプレイの開発を業務用と民生用で連携し強化していく。
2024年9月5日に発表したマルチパーパスカメラ「HDC-P50A」を初公開する。本機は、SMPTE ST 2110のIP伝送やカメラコントロールユニット接続に対応し、柔軟なシステム構築ができる。IP伝送に対応し、「Networked Live」で提供する商品と連携して利用可能。例えば、カメラコントロールネットワークアダプター「CNA-2」と接続し、カメラを遠隔から一元監視する効率的な運用が可能。また、カメラコントロールユニットとの接続で、4Kで最大4倍速、HDで最大8倍速のスローモーション撮影が可能。
Cinema Lineカメラ「FX3」と「FX30」は、2024年9月12日以降対応予定のソフトウェアアップデートにより、シャッタースピードとシャッターアングルの選択に加えて、SRT、RTMP、RTMPSでのライブ配信に対応する。
その他、業界をリードするAIオートフレーミング機能を搭載する最新のPTZオートフレーミングカメラ「BRC-AM7」(2024年11月発売予定)も展示する。
4. 用途が拡がるバーチャルプロダクション
バーチャルプロダクションの活用領域は拡大し、シネマやCM制作にとどまらず放送分野でも活用され始めている。展示では映画制作業界や放送局向けにより本格的なプリビジュアライゼーションを提供する「Virtual Production Tool Set(バーチャルプロダクションツールセット)」の最新バージョン(2024年冬提供予定)を紹介する。プリプロダクション段階のバーチャル空間上でのシミュレーションにおいて、本番撮影と同様のルックを再現できる機能は、デジタルシネマカメラVENICEシリーズに加え、「BURANO」、「FR7」、「HDC-F5500」、「HDC-5500」、「HDC-3500」が新たに対応する。
また、iPadによるバーチャル空間上のカメラ操作に対応するほか、実物のVENICEシリーズのカメラやレンズの設定変更を即座に読み取り、Epic Games社のリアルタイム3D製作ツール「Unreal Engine」の設定に反映できるライブカメラシンク機能にも対応し、さらに利便性が向上する。
「Virtual Production Tool Set」の最新バージョンは、新機能を含む一部を有償ライセンスにて提供する。
なお、ソニーは2024年6月に英国・ロンドンにて欧州放送連合(European Broadcasting Union、EBU)と共に実証実験を行い、英国放送協会(British Broadcasting Corporation、BBC)の番組収録の実撮影でVPマルチカムライブスイッチングに成功。展示では、バーチャルプロクションを用いて、2つのカメラ映像をLiveスイッチングで切り替える運用や本実験にも使用した「Virtual Production Tool Set」を紹介する。