
Blackmagic Designによると、アカデミー賞ノミネート作品「A Lien」が、ETHOS Studioのカラリストであるダンテ・パスキネリ氏により、編集、グレーディング、ビジュアルエフェクト(VFX)、オーディオポストプロダクション・ソフトウェアであるDaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Mini Panelを使用してグレーディングされたという。
第97回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされた「A Lien」は、サム・カトラー・クロイツ監督とデイビッド・カトラー・クロイツ監督による作品。グリーンカードのインタビュー当日に、危険な移民手続きに直面する若い夫婦を描いている。
パスキネリ氏は、同作のルックや雰囲気について、アンドレア・ガヴァッツィ撮影監督と緊密に協力しあったという。同氏は次のようにコメントしている。
パスキネリ氏:私たちはこの作品の雰囲気についてじっくり話し合いました。存在感がありながら、ストーリーを圧倒したり邪魔したりしないようなルックにする必要がありました。物理的にも感情的にも、環境の冷たさを表現したかったんです。中でも、建物が最も無機質な場所に見えるようにしました。

壁が迫ってきて、登場人物が絶望しているような雰囲気にしたかったので、父と娘が悪夢のような状況に陥っていくにつれて、スキントーンが周囲の環境と同じトーンになるようにグレーディングしました。キートラッキングとウィンドウを使用して、スキントーンを分離し、周囲のトーンをわずかに調整しました。
最初の車内のシーンでは、温かく親密な家族の雰囲気を演出しましたが、建物の奥深くに入っていくにつれて、悪夢やホラー映画のような雰囲気になっていきます。アンドレアと私はResolveでカスタムLUTを作成したので、最終的なグレーディングの段階では、どのような雰囲気の映像になるのかを全員が大体把握していました。作業を進める基本となるルックがすでにわかっていたのです。
幸運な偶然により、パスキネリ氏とガヴァッツィ氏は、運転シーンでカメラをマッチさせている際に新しいルックを見つけたという。

パスキネリ氏:この作品の大部分は1台のカメラで撮影し、まずはその映像をグレーディングしました。仕上がりには非常に満足でした。そして運転シーンの撮影用に別のカメラをセットアップしていた際に、偶然にも、適切なカラースペース変換(CST)を行わずに、メインカメラの映像のルックを適用してしまったんです。ところがそのルックが非常に良くて全員が気に入ったため、メインの映像に戻って新しく発見したルックにマッチさせ、さらにCSTを使用してLog Cショットにマッピングしました。
私にとってこの映画は、非常に重要なテーマです。そして長年共に仕事をしてきた友人であるアンドレアと協力し合う機会となりました。制作過程を通して、誰もが新しい試みに対して非常にオープンであり、必要に応じて新しい方向に進む姿勢を持っていました。このことが、最終的な作品を通して反映されていると思います。
パスキネリ氏のコメントを受け、ガヴァッツィ氏は次のようにコメントしている。
ガヴァッツィ氏:私は生涯を通じていくつかの国で移民として過ごしてきたので、自分がどこに属するのかわからないという気持ちはよくわかります。移住、憧れ、アイデンティティの探求といった感情に深く共感できたので、このプロセスが非常に力強いものになったと思います。このような経験を意味のある表現に変換し、表現することが難しい感情を言葉にして伝える機会となりました。

