
ソニーは、フルサイズセンサー搭載レンズ交換式旋回型カメラ「FR7」の本体ソフトウェアアップデート Ver.3.00を公開した。これにより、バージョンは2.20から3.00へ移行する。
今回のアップデートの主な内容は、PTZオートフレーミング、リモートプロダクション、プリセットポジションといった、コンテンツ制作およびワークフローの向上に貢献する新機能の追加である。これらの機能は、ソニーが以前より各種イベントやウェブサイトを通じて2025年6月以降の対応を告知していたもので、今回正式にアップデートの提供が開始された。
■PTZオートフレーミング機能
- PTZオートフレーミング機能に対応
- PTZオートフレーミング機能に目線空け効果を追加
- 外部機器からPTZオートフレーミングを制御するためのCGIコマンドを追加
■リモート操作機能
- マルチマトリクスのArea Indication機能に対応
- リモートコントロールパネルおよびマスターセットアップユニットからの下記制御(S700プロトコル)に対応
・バリアブルNDモード/Call/Area Indication(GATE)/AWB
リモートコントロールバネル
RCP-1500/1501、RCP-1530、RCP-3100、RCP-3500/3501
マスターセットアップユニット
MSU-1000、MSU-1500、MSU-3000、MSU-3500
カメラリモートコントロール
HZC-RCP5、HZC-CMS10
- カメラコントロールネットワークアダプタ(CNA-2 ※1)に対応
- IPタリー(TSL UMD V5.0)に対応
- NDIを標準搭載(ライセンスプリインストール)
- RTSP/RTMP/SRT/NDI|HXの色再現性を向上
- カメラの動作安定とリモコンからのコマンド応答を改善
※1 CNA-2のファームウェアVer>1.20で対応予定。ファームウェアの提供時期は2025年9月以降を予定。
■バーチャルプロダクション機能
- トラッキングデータ(free-d)の出力先を4つまで選択可能に
- トラッキングデータ(free-d)のカメラオフセットが入力可能に
■プリセットポジション機能
- プリセットポジション機能で時間が設定可能に
- プリセットポジション機能が全画素超解像ズームに対応※2
■ネットワーク機能
- SETUPスイッチから、IPアドレス(192.168.0.100)が固定可能に※3
■その他
- User 3D LUT使用時の画質を向上
- Base Lookがuser1~user16時および、Target DisplayがHDR(HLG)時のMatrix/Multi Matrixの調整範囲を向上※4
- SDI出力の23.98PsFに対応
- まれに全画素超解像ズームが1.0倍に遷移してしまう症状を改善
※2 超解像ズーム領域では、ズーム動作が滑らかではない場合がある。
※3 Webメニューのネットワーク設定にかかわらず、IPアドレスを固定できる。ただし、既にIPアドレスを固定している場合は再調整が必要である。
※4 Matrix/Multi Matrixの設定値は、Ver.2.20以前と比較して効果が変更されている。そのため、当該機能を使用している場合は再調整が求められる。
注目のアップデート機能詳細
今回のアップデートの中でも特に注目すべき点を詳しく紹介する。
AIを活用したオートフレーミング機能について
ソニーは、これまでSRG-A40やBRC-AM7といったカメラでオートフレーミング機能を提供していたが、今回、バージョン3.00のアップデートにより、FR7もオートフレーミング機能に対応することになった。
AIアナリティクスを活用したオートフレーミング機能は、カメラが被写体(人物)を自動で追尾し、自然な構図で撮影する機能である。この機能は、人物のポーズ、頭部、顔、服装などの詳細なデータを用いて高い精度で人物を認識する。これにより、パン、チルト、ズームを自動で制御し、被写体を追跡することが可能となる。フレーム内に複数の人物が存在する場合でも、特定の人物一人を選択して追跡できるため便利である。
目線空け効果について
オートフレーミング機能には、目線空け効果が搭載されている。これはインタビューシーンなどでの活用を想定した機能である。被写体一人にフォーカスを当てた状態で、例えば被写体が視線の向きを変えた際、カメラマンがいなくてもカメラが自動的に最適な空間を構図内に作り出す。
PTZオートフレーミング機能には、目線空け効果が搭載されている。これは、人物を追尾する際に被写体の顔の向きに応じ、視線の先に空間が生まれるよう構図を自動で調整する機能である。これにより、プロの撮影に近い自然な構図での追尾が可能となる。また、目線空け効果による余白の大きさは3段階で調整が可能だ。
パン・チルト・ズーム(PTZ)プリセットの機能拡張
プリセットポジション機能について、今回可能となったことの一つは、プリセット再生時の制御向上である。プリセットとは、事前に設定したカメラの向き(パン)、チルト、ズーム倍率などをボタン一つで呼び出せる機能である。このプリセットを再生する際、従来の速度設定に加え、移動時間も設定できるようになった。
これにより、動作を0.5秒単位でプリセットし、1秒から99秒まで設定可能である。この機能拡張により、カメラ本体のパン、チルト、ズームの動きと、スライダー、ドリー、トーテムといった外部機器の操作との連動が容易になる。結果として、システム全体で幅広いカメラワークが実現可能となる。
超解像ズーム領域のプリセット対応
PTZ(パン・チルト・ズーム)プリセットの再生時において、超解像ズーム領域の呼び出しが可能となった。これにより、より広いズーム領域での撮影が可能となり、保存したプリセット設定を呼び出すことで、カメラの構成を迅速に変更できる。

