2025年7月10日、ゼンハイザージャパン株式会社は、東京・青山にて「Sennheiser創設80周年記念 クリエーターズラウンジ」を開催。新製品となるクリエイター向けワイヤレスマイクシステム「Profile Wireless 1-Channel Set」の発表に加え、動画制作における"音"の重要性をテーマとしたトークセッションが行われた。

ゼンハイザー80年にわたる音響技術の革新

イベントの冒頭では、ゼンハイザーが歩んできた80年の歴史がプレゼンテーション形式で紹介された。同社は1945年にドイツで創業。マイクロホン「DM 1」「DM 2」の開発を皮切りに、長年にわたって革新的な音響機器を世に送り出してきた。

なかでも名機として語り継がれる「MD 421」や「HD 25」、そして世界最高峰と称されるヘッドホン「Orpheus」などは、プロフェッショナルの現場で今なお高い信頼を得ている。特にHD 25は、1980年代にコンコルド機内用として採用された経緯を持ち、優れた遮音性と耐久性でDJや音響技術者の定番機として愛されてきた。

80周年のキーメッセージ

プレゼンの中で「常に"クレイジーなアイデア"を歓迎する姿勢」こそがゼンハイザーの開発スタイルであるというエピソードも披露された。例えば、ショットガンマイク「MKH 416」は、お客様の前でマイクチューブの一部を金属ノコギリで切った長さが最終製品のサイズになったという、遊び心と実用主義が共存した開発秘話も紹介された。

クリエイター向けワイヤレスマイクシステム「Profile Wireless 1-Channel Set」発表

新製品のクリエイター向けワイヤレスマイクシステム「Profile Wireless 1-Channel Set」

プレゼンテーション後半では、ゼンハイザージャパン製品担当の吉原氏が登壇。新製品となる「Profile Wireless 1-Channel Set」について紹介した。

2025年1月には、2チャンネル仕様の「Profile Wireless」が先行発売されており、今回新たによりコンパクトで手に取りやすい価格帯のProfile Wireless 1-Channel Setがラインアップに加わった。本製品は、YouTuberやクリエイターの間で注目を集めるコンパクトタイプのワイヤレスマイクシステムであり、ゼンハイザーが長年にわたって業務用音響機器の開発で培ってきたノウハウが凝縮されたモデルとなっている。

2025年1月発売の2チャンネル仕様「Profile Wireless 2-Channel Set」

吉原氏は、Profile Wirelessが提供する価値を「安心も表現もどちらも譲れないあなたへ」というキャッチコピーで表現。最大のポイントは「録音時の不安を徹底的に排除した設計」にあるという。録音の失敗や不具合は、特にワンオペで撮影を行う個人クリエイターにとって致命的な問題になりかねない。そのリスクを減らすため、本製品には複数の安全機構が標準搭載されている。

Profile Wireless 1-Channel Setの特長は、録音時の安心感を高める多彩な機能だ。32bitフロート録音に対応しており、音割れや音量のばらつきにも柔軟に対応できるほか、本番音声とは別に-6dBで同時録音を行う「セーフティチャンネル」も搭載。また、万が一ワイヤレス伝送が不安定になった場合でも、自動でバックアップ録音を行う機能が備わっており、収録ミスのリスクを大幅に軽減してくれる。

音質面でも注目すべきポイントが多い。S/N比は78.5dBと非常に高く、60Hz〜20kHzという広い帯域に対応。音のディテールや空気感をしっかりと収録できる。さらに、MKH416に近いチューニングカーブを採用しており、プロユースにも耐えうる音質を実現しているという。プレゼンでは、その立体的な音の表現力から「ASMRクオリティ」という表現も飛び出し、聴衆の関心を集めていた。

Profile Wireless 1-Channel Setには、小型ウィンドシールド付きのクリップ、​オンマイク(マグネットマウント式)、2チャンネル受信機、2本のUSBケーブル、​USB-CおよびLightningアダプター、カメラ接続用ケーブル、シューマウントアダプターが含まれる

また、USB-CとLightningの両方に対応したデジタル出力アダプターが付属し、スマートフォンやPCなど多様なデバイスに接続可能。直感的なタッチディスプレイ操作が可能なUIを備え、録音操作の煩雑さを軽減している。録音データは内蔵メモリ(16GB)に最大30時間分保存できるほか、送信機には三脚ネジ穴も設けられ、卓上使用や安定した固定にも対応する。

送信機は、無指向性のコンデンサーマイクを内蔵しており、わずか27gという軽量設計。長時間の装着でも負担が少なく、撮影現場での使い勝手にも配慮されている。伝送性能は障害物のない環境下での最大伝送距離は約245m。さらに、システムのレイテンシー(遅延)は8ミリ秒以下に抑えられており、リアルタイム性が求められる収録にも対応可能なスペックとなっている。さらに、別売の送信機や充電ドックを追加すれば、2チャンネル運用への拡張も可能となっており、将来的なアップグレードにも柔軟に対応できる点も魅力のひとつだ。

Profile Wireless 1-Channel Setは、2025年7月24日より発売予定。希望小売価格はオープン、市場想定価格は税込35,200円。