
ヒビノ株式会社 ヒビノマーケティングDiv.は、次世代Bluetooth技術「Auracast(オーラキャスト)ブロードキャストオーディオ」に対応した新製品「AuraBroadcaster(オーラブロードキャスター)シリーズ」の発表会を開催した。
Auracastとは

Auracastは、Bluetooth LE Audioに新たに追加されたブロードキャスト機能。1つの送信デバイスから、複数の受信デバイスに対して同時に音声を配信できるのが最大の特長だ。
従来のBluetoothでは基本的に1対1の通信が前提だったが、Auracastにより1対多(1:N)の音声配信が低遅延かつ高品質で実現できる。片方向通信のため、受信側に大きな電力を必要とせず、効率的な運用が可能。また、新たに導入された低遅延・高音質なコーデックにより、これまで以上に安定した長距離通信が可能となっている。
スマートフォンやラップトップ、テレビ、公共放送設備など多様な送信デバイスから、ヘッドホンやスピーカー、イヤホン、補聴器などで受信できる仕組みは、パブリックスペースでの新たな音声体験の提供を可能にする。
ヒビノ「AuraBroadcasterシリーズ」の特長と可能性

今回の発表会で、ヒビノの山田氏が語ったのは、単なる製品発表ではなく「Auracastを軸にした新規事業創出」という大きなビジョンだった。ヒビノはこれまで輸入製品の販売・施工を中心に事業展開してきたが、近年は自社ブランドによるプロダクト開発にも注力。その第一弾としてAuracast対応製品をリリースした。
「Auracast導入は目的ではなく、手段です」と山田氏は語る。つまりBluetooth LE Audioを活用することで、より柔軟で手軽な音声配信ソリューションを業務用市場に提案しようとしているのだ。
ABI Researchの予測によれば、Auracastの導入が想定される施設は2025年時点で世界に約8万ヶ所、2030年には240万施設にまで拡大する見通しだという。

AuraBroadcasterシリーズは、Auracastに対応した業務用音声送信機で、施設やイベント会場などにおける多言語ガイドやバリアフリー音声配信、静音環境での情報伝達など、幅広い活用が想定されている。
製品ラインナップは、「据置型送信機」「ポータブル送受信機」「受信機(骨伝導イヤホン)」の3つ。
据置型送信機

施設設置向けの常設型ユニット。カンファレンスルームや劇場、スタジアムなどに最適。オーディオ信号を安定して複数の受信機に配信できるベースユニットとして機能。
ポータブル送受信機

送信・受信の両方に対応する携帯型デバイス。ツアーガイドやイベントなど、移動しながらの運用に適しており、現場で柔軟に対応可能。軽量・コンパクト設計で、Bluetooth帯域を活かした利便性を発揮する。
受信機(骨伝導イヤホン)

骨伝導式のイヤホン一体型受信機。衛生的かつ周囲の音も聞き取りやすいため、教育・福祉施設などでの使用に向いている。ユーザーの持参端末がなくても使用できる「貸し出し型受信機」としても。
ヒビノでは、以下のような業務・公共用途での活用を想定している。
放送・スタジオ現場での返し音声配信
複数のスタッフが一斉にモニター音声を受信可能。免許申請不要で導入もスムーズ。
国際会議や教育現場での同時通訳・解説
参加者自身のイヤホンで、どの席にいても均一な音声体験を実現。
ツアーガイドや美術館音声案内
軽量小型な受信機で持ち運びにも優れる。屋外イベントにも対応可能。
こうした活用シーンは、従来の専用無線機器よりもはるかに柔軟で、かつ安価に構築可能だという。
ヒビノの提案するAuracast製品は、専用機器を必要とせず、ユーザー自身のイヤホンやスマートフォンで簡単に受信できる「開かれた音声共有」を目指している。「どの席でも、誰でも、同じ音声を高品質に聴くことができる世界」。それがヒビノの描く未来だ。
なお、AuraBroadcasterシリーズは2025年9月末発売開始を目指しており、早期に受注活動を開始するとしている。希望小売価格はオープン。

