ソニー、IBC 2025で「未来を共創する」新ソリューションを展示。世界初のC2PA規格対応カムコーダー「PXW-Z300」など紹介

報道取材、映像制作現場での運用性向上や信頼性のある報道を支えるワークフローの進化

XDCAMメモリーカムコーダーPXW-Z300

PXW-Z300（2025年7月発表）は、1/2型 4K 3板式CMOSイメージセンサーExmor Rと、最新の画像処理エンジンBIONZ XRに加えて、AI処理専用のプロセッシングユニットを搭載した、XDCAMハンディカムコーダーのフラッグシップモデルである。本機は、カムコーダーとして世界で初めて、真正性情報を記録するC2PA規格に対応し、動画に電子署名を付与して記録することが可能である。静止画で対応してきた真正性への取り組みを動画にも拡大することで、近年報道機関から求められるコンテンツ信頼性向上のニーズに応える。

PXW-Z300などと連携し、即時的な映像伝送ワークフローを実現する「LiveU TX1」

映像伝送機器メーカーとの協業の一環として、LiveU社がソニーとのパートナーシップに基づき共同開発し、2026年に商品化を予定している小型のデータトランスミッター「LiveU TX1」を参考出展する。

本機は、複数の回線を同時に使用することで伝送速度を向上させる「ボンディング伝送」や、カメラにUSB接続するだけで自動的にファイル転送が始まる機能に対応している。これらにより、撮影現場から直接ファイルを伝送する、より即時的な映像制作ワークフローの実現をサポートする。

USB接続に加え、SDI接続も予定されており、幅広いカムコーダーでの活用が可能になる。ソニーは、高速・低遅延映像伝送を実現する5G対応ポータブルデータトランスミッター「PDT-FP1」の活用や、様々なパートナーとの連携を通じ、幅広い映像伝送ワークフローを顧客に提案していく。

クラウド制作プラットフォーム「Creators’ Cloud」

「Creators’ Cloud」は、クラウド技術と多様なカメラ、通信技術、AI、メタデータなどを組み合わせることで、新たな映像表現や効率的な制作を実現する様々なサービスを提供する。法人向けのサービスでは、C3PortalやCi Media Cloudの最新のソリューション展示を行う。C3 Portalは、収録メディアを使わずにカメラやスマートフォンで撮影した映像を「Creators’ App for Enterprise」で直接クラウドに伝送するサービスである。

今回初展示のPXW-Z300などのカムコーダーとの親和性をさらに強化し、トランスミッターとの組み合わせでさらに安定的に高画質映像を伝送し、ニュースコンテンツの即時制作に貢献する。Ci Media Cloudは、メタデータを通じて報道機関が映像の出所を確認できるようにする、C2PA規格に準拠した電子署名情報表示への対応を行う。

この他、クリエイターの映像制作をサポートする「Monitor & Control」や「Catalyst Prepare」「Catalyst Prepare Plugin」など個人向けCreators’ Cloudで提供するアプリの最新バージョンを展示する。

効率的なライブ制作を実現する「Networked Live」向けのカメラやソリューションの拡充

最新ニーズに対応したシステムカメラソリューションの強化

近年スポーツ中継では、撮影場所の制約から省スペースでの運用ニーズが高まっている。マルチパーパスカメラ「HDC-P50A」は、そのニーズに対応した小型で軽量なシステムカメラである。

放送業界での採用が進むSMPTE ST 2110でのIP伝送にカメラ単体で対応するほか、カメラコントロールユニットとの接続も可能なため、カメラの設置場所とコントロールルームが離れた撮影環境でも柔軟な運用が可能である。2025年9月に対応予定のアップデートにより、カメラコントロールユニットと接続することなく、カメラ単体で4K 2倍速のハイフレームレート撮影が可能となる。

また、カメラエクステンションアダプター「HDCE-500」を発売する（2026年3月予定）。本機は、システムカメラHDC-5000シリーズ、HDC-3000シリーズ、「HDC-P50A」に対応する。カメラとカメラコントロールユニットの間に接続することで、カメラ本体に電源を供給するとともに、光ファイバーからシングルモードファイバーに変換することで、最長10kmの伝送が可能となる。HDC-P50Aとの接続時は、1本のSMPTEケーブルで電源供給、映像信号の伝送が可能で、より柔軟な運用ができるようになる。

Networked Live

「Networked Live」は、オンプレミス/クラウドの環境を選ばず、制作機器や人などのリソースをハイブリッドに活用することで、より効率的なライブ制作を実現するソリューションである。会場では、効率的なライブ制作やリモート制作をサポートする製品およびソリューション群を展示する。

メディアオーケストレーションプラットフォーム「VideoIPath」においては、各種新機能の紹介とともに、ソフトウェアスイッチャー「M2L-X」やHawk-Eye Innovations（以下：ホークアイ）と連携したオンプレミスとクラウドを統合したオーケストレーション機能をデモ展示する。

ソフトウェアベース IPメディアノード「Virtuoso」は、新たにSRT/HEVC伝送に対応する（2025年12月対応予定）。オンプレミスとクラウドの接続性を高め、より実践的なクラウドライブシステムの構築が可能となる。

また、ライブプロダクションスイッチャー「MLS-X1」においては、タリーやクロスポイントの情報を組み合わせて、自動的に操作を実行する新機能「Conditional Action」を展示する。その他、GPUの拡張性や汎用性を生かしたソフトウェアベースのライブ制作・リモート制作ソリューションの将来的な機能拡張を参考展示として紹介する。

ソニーのグループ会社であるホークアイは、HawkREPLAY、HawkNEST、ConfigureREPLAYを用いた放送エコシステムを展示する。これらのサービスは、ソニーの技術と統合されることで、ライブスポーツおよびイベント放送向けによりシームレスで高品質な映像づくりを支えるワークフローを提供する。IBC 2025では、ホークアイが2026年にサービス開始を予定しているHawkREPLAY in the Cloudの技術展示をする。

多様な映像制作ニーズに応えるバーチャルプロダクションや空間コンテンツ制作、イメージング商品群の進化

バーチャルプロダクション（VP）や空間コンテンツ制作の最新クリエイティブツール

より効率的にVPや空間コンテンツ作成を行える最新のクリエイティブツールを展示する。「VENICE 2」など撮影用のデジタルシネマカメラ、カメラトラッキングシステムOCELLUS、背景映像を映し出す最新のLEDディスプレイCrystal LED CAPRIやCrystal LED VERONAに加え、プレビズとオンセットの制作を効率化するVirtual Production Tool Setの最新バージョン（Ver3.0）やVFX作業を効率化するツールの技術展示を行う。

またVENICEエクステンションシステムMiniと空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」を組み合わせた3D映像制作の展示を行う。撮影現場で立体映像を裸眼で即座に確認できることで、シーンの奥行きや被写体の立体感を正確に把握することができ、高品質な3D映像表現や制作効率の改善が可能である。

最新のCinema Line カメラとソフトウェアアップデート

FX2など最新のCinema Lineカメラの展示に加え、クリエイターのワークフローの選択肢を広げる最新のソフトウェアアップデートを紹介する。「FX3」「FX30」は、最新ソフトウェアアップデートにより、本機とHDMI接続したBlackmagic Design社のRAWレコーダーにRAW形式の動画が出力できるようになった。また、Cinema Lineの旋回型カメラ「FR7」は、SMPTE RIS OSVPが策定した、バーチャルプロダクション向けの新たなオープンソースプロトコルであるOpenTrackIOに、2026年2月以降のソフトウェアアップデートで対応予定である。

また本プロトコルに対応することで、FR7で、標準化された高精度なレンズデータを含むカメラトラッキングデータの送出が可能になる。OpenTrackIOに対応している他社製品や各種CGエンジンとの連携が容易になり、業界全体での互換性・拡張性が向上する。

この他、nablet社がソニーとの協業で開発した「nablet X-OCN Media Extension plug-in for macOS」を新たに提供開始し、本プラグインを使用することで、CineAltaカメラVENICE 2と「BURANO」で記録したX-OCNフォーマットの動画が、Apple社の動画編集ソフトウェアである「Final Cut Pro for Mac」で利用可能になる。

環境への取り組み

再生プラスチックを活用した展示ブース

ソニーは2050年までに環境負荷ゼロを目指す環境計画「Road to Zero」を推進している。IBCの展示什器には、回収された医療機器や食品包装廃棄物などを含む、再生プラスチックおよびリサイクル可能なプラスチックから作られたPolygoodパネルを採用し、3年間以上の再利用を予定している。長期使用やリサイクルを前提とした展示ブースの設計で、新たな採掘資源を減らす取り組みを推進する。