Appleは、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」の最新モデルを発表した。この新モデルは、新たにM5チップを搭載し、パフォーマンス、ディスプレイの描画性能、AIを活用したワークフローの高速化、そしてバッテリー駆動時間の向上が図られている。また、装着感を高めるための新しいデュアルニットバンドが付属する。
新しいApple Vision Proの価格は税込599,800円からで、ストレージ容量は256GB、512GB、1TBから選択できる。日本を含む各国で予約注文が開始され、10月22日から販売が開始される予定である。製品には、デュアルニットバンド、ライトシーリング、バッテリー、充電ケーブル、電源アダプタなどが付属する。
関連アクセサリとして、新しいデュアルニットバンドは税込16,800円で別途購入できる。Apple Vision Proトラベルケースは税込34,800円である。視力矯正が必要なユーザー向けにはZEISS Optical Insertsが提供され、価格は「Readers」が税込16,800円、「Prescription」は税込24,800円となる。また、Logicool Museは税込19,800円で、オンラインのApple Storeにて10月29日(水)に注文受付を開始し、11月上旬に販売を開始する予定である。
新しいVision Proに搭載されたM5チップは、第3世代の3ナノメートルテクノロジーで製造されている。10コアCPUによりマルチスレッド性能が向上し、アプリの読み込みやウェブブラウジングなどがより高速になった。次世代の10コアGPUは、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングに対応し、ゲームなどにおけるグラフィックスの質を高めている。これにより、開発者は照明や陰影、反射などの表現をより詳細に作り込むことが可能である。また、16コアのNeural Engineにより、AI関連機能の処理速度も向上しており、他社製アプリでは最大2倍高速化されている。
ディスプレイにおいては、マイクロOLEDディスプレイのピクセル数が前世代比で10パーセント増加し、より鮮明なテキストと精細なビジュアルを実現した。リフレッシュレートは最大120Hzまで向上し、ユーザーが周囲の状況を見る際のモーションブラーを低減させ、Mac仮想ディスプレイ使用時もより滑らかな表示を提供する。
これらの処理は、12個のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクからの入力を処理する専用のR1チップと連携して行われ、12ミリ秒以内に新しい映像をディスプレイに表示することで、現実世界をリアルタイムに映し出す。バッテリーは、1回の充電で一般的な使用で最大2.5時間、ビデオ再生では最大3時間の駆動が可能である。
装着感を改善するため、新たにデュアルニットバンドが導入された。このバンドは立体的に編み込まれた上下のストラップで構成され、クッション性、通気性、伸縮性を持つ構造となっている。下部のストラップにはバランスを取るためのタングステンが組み込まれており、フィットダイヤルで細かい調整が可能である。この新しいバンドはS、M、Lの3サイズが用意され、前世代のVision Proにも対応する。
ソフトウェア面では、最新のvisionOS 26が搭載される。これにより、ウィジェットをユーザーの空間に配置し、再装着時に同じ場所に表示させることが可能になった。時刻や天気の確認、音楽の再生などが容易になる。また、アバター機能であるPersonaも進化し、FaceTimeなどでのコミュニケーションがより自然になった。写真は生成AIによって奥行きが加えられ、空間シーンとして体験できる。さらに、キヤノンやGoProなどの一部のアクションカメラで撮影された180°や360°の広視野角ビデオの再生にも対応した。
アプリケーションとコンテンツのエコシステムも拡充されている。App Storeでは100万を超えるアプリが提供され、そのうち3,000以上がvisionOS専用に設計されている。エンターテインメント面では、Apple TVアプリで数百の3D映画が視聴できるほか、Apple Immersiveを通じて新たなシリーズや映画が提供される。ゲーム体験も強化され、ソニーのDualSenseやPlayStation VR2 Senseコントローラーといった外部コントローラーに対応し、より没入感のある操作が可能になったという。
プロフェッショナルや法人向けの活用も進んでいる。アーティストは新しいアプリで作品をデザインし、映画制作者はロケ地探しに空間ビデオを活用できる。また、Logicoolのデジタルペンシル「Logicool Muse」に対応し、より精密な作業が可能となる。企業では、パイロットのトレーニング、自動車のショールームでのパーソナライズ、医療現場での3D医用画像の活用など、様々な分野で導入事例が生まれている。
環境への配慮として、製品のフレームとバッテリー筐体には100パーセント再生アルミニウムが使用されている。