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ヤマハ株式会社は、企業およびProAV市場向けに、同社初となる100ギガ/25ギガビット対応ネットワークスイッチの新製品「SWX2320-30MC」「SWX2322P-30MC」「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」の4モデルを2025年12月に発売する。希望小売価格は以下の通り。

  • インテリジェントL2スイッチ(SWX2320-30MC:税込1,155,000円
  • インテリジェントL2 PoEスイッチ(SWX2322P-30MC):税込1,375,000円
  • スタンダードL3 スイッチ(SWX3220-30MC):税込1,375,000円
  • スタンダードL3 スイッチ(SWX3220-30TCs):税込1,155,000円

同社は、企業内のネットワーク(LAN)を支える製品として、スイッチや無線LANアクセスポイントのラインアップを継続的に拡充してきた。なかでも「インテリジェントL2スイッチ」と「スタンダードL3スイッチ」は、ネットワーク管理者が求める高い保守性と機能性を兼ね備え、企業・学校・病院などのIT市場はもちろん、コンサートホールやライブ会場などのProAV市場でも、幅広いネットワーク環境で利用されている。

昨今、企業向けネットワーク市場では、基幹ネットワークの増強が重要な課題となっている。ワイヤレスデバイスの急増に伴う高速・安定な無線LAN環境の整備や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展によるコンテンツの大容量化、さらにはコミュニケーションツールの高機能化により、より一層の通信帯域の確保と高い信頼性が求められている。また、ProAV市場でも、IPネットワークを活用した高品質・低遅延な映像・音声伝送環境が不可欠である。

今回、こうしたニーズに応えるため、高速・大容量と高信頼性が求められる基幹ネットワーク強化に最適な同社初の100ギガ/25ギガビット対応スイッチを新たにラインアップに加えた。

今回発売する4モデルは、すべてのモデルで100ギガビットスロット(QSFP28)を2基、25ギガビットスロット(SFP28)を4基搭載している。

インテリジェントL2スイッチ「SWX2320-30MC」「SWX2322P-30MC」は、従来から好評をいただいている「SWX232xシリーズ」の機能を継承し、24ポートの10ギガ/マルチギガビットに対応した高速LANポートを備えている。

「SWX2322P-30MC」は、PoE++(IEEE 802.3bt)給電にも対応し、現在導入が進むWi-Fi 6/6E(IEEE 802.11ax)や、今後普及が見込まれるWi-Fi 7(IEEE 802.11be)対応の無線LANアクセスポイントへの給電、また高速LANポートを搭載したアクセススイッチの収容に適しており、基幹ネットワークを支えるフロアスイッチとして活用できる。

また、スタンダードL3スイッチ「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」は、従来から好評をいただいている「SWX3220シリーズ」の機能を継承。「SWX3220-30MC」は24ポートの10ギガ/マルチギガビット対応の高速LANポートを、「SWX3220-30TCs」は20スロットのSFP/SFP+スロットを備えたモデルである。

いずれのモデルも、100ギガビットスロットを活用したスタッキングや、電源の冗長化と故障時のホットスワップによる高い耐障害性を備え、基幹ネットワークを支えるコアスイッチやディストリビューションスイッチとして活用できる。

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企業ネットワーク(LAN)での利用イメージ

ProAV市場においては、音声・映像メディアの高レート化・多チャンネル化が進み、ネットワークトラフィックのさらなる増加が想定されている。今回発売する「SWX2320-30MC」「SWX2322P-30MC」「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」を導入することで、従来のL2スイッチによる同一セグメント内でのメディア伝送に加え、L3スイッチを活用した複数セグメントをまたぐメディア伝送環境を、トラフィックの増加を見越して構築可能だ。

なかでも「SWX2322P-30MC」は、PoE++(IEEE 802.3bt)に対応し、システム全体で最大720Wの給電能力を備えているため、複数の映像・音声用エンコーダー/デコーダー機器への安定した電力供給に最適である。電源配線の簡素化と設置の柔軟性を実現し、アミューズメント施設やイベント会場など、映像・音声機器が多く稼働する現場で安定したネットワーク運用を支えるとする。

さらに「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」は、IEEE 1588 PTPv2 BC(Boundary Clock)に対応しており、高精度なメディア同期環境の構築が可能である。これにより、放送市場におけるIPベースの映像・音声伝送にも活用できる。

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ProAV市場(放送設備)での利用イメージ

主な特長

次世代インフラに最適な選択

今回発売するすべてのスイッチは、100ギガ/25ギガビットインターフェースを搭載し、従来の1ギガ/10ギガ構成では限界があった大容量トラフィックや高負荷なメディア伝送も安定して行える。また、SFP28モジュールやQSFP28モジュールの搭載も可能で、次世代のネットワークインフラに求められる高速性と拡張性を兼ね備えている。

さらに、Cat6A LANケーブルやSFP+による10Gbps通信に加え、上位スイッチとの接続には光ファイバーを用いた25Gbps通信を、スタック構成機器間ではQSFP28による100Gbps通信を実現する。これにより、アクセス層からコア層まで一貫した高速・大容量ネットワークが構築可能で、映像・音声・制御データなどリアルタイム性が求められる環境でも安定した通信を提供する。

このような構成は、放送設備、教育施設の配信ネットワーク、企業の基幹ネットワークなど、高帯域・高信頼性が求められる現場に最適である。将来的なトラフィック増加にも柔軟に対応でき、長期的な運用にも安心して導入できる。

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冗長化電源とホットスワップ対応で高い耐障害性を実現

スタンダードL3スイッチ「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」は、電源の冗長化に対応し、電源故障が発生した際にも基幹ネットワークの安定運用を支える高い耐障害性を備えている。また、本体にホットスワップ可能なオプションの電源ユニットを追加搭載することで、片方に障害が発生しても、もう一方で動作を継続することができ、ネットワークを停止させることなく電源ユニットの交換が可能である。これにより、放送設備や企業の基幹ネットワークなど、可用性が重視される環境でも安心だ。

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冗長化に対応した電源ユニット(出荷時は1基のみ)

SMPTE ST 2110環境に最適

今回発売するすべてのスイッチは、音声・映像メディアなどの同期再生に必要となる高精度な時刻同期「IEEE 1588 PTPv2 TC(Transparent Clock)」に対応している。100G/25G/10G/1Gbps で構成されるネットワーク環境において、スイッチを通過するPTPメッセージに中継遅延時間情報を追加して転送することで、Pro AV市場などリアルタイム性が要求されるケースにおいて、デバイス間の同期精度を1μsec以下に保つことが可能である。

さらに、スタンダードL3スイッチ「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」は「IEEE 1588 PTPv2 BC(Boundary Clock)」に対応している。100G/25G/10G/1Gbpsで構成されるネットワーク環境において、PTPメッセージを終端し、ローカルクロックで再生成することで、複数セグメントにまたがる構成でも高精度な時刻同期を維持できる。これにより、SMPTE ST 2110環境における映像・音声・補助データのIP伝送に必要な同期精度を確保し、放送市場におけるIPベースのメディア運用にも安心して活用できる。

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クラウドでネットワーク管理をスマートに

今回発売するすべてのスイッチは、ヤマハのクラウド型ネットワーク管理サービス「YNO(Yamaha Network Organizer)」に対応している。YNOは、ルーターや無線LANアクセスポイントを含む複数のネットワーク機器を一元管理できるクラウドサービスで、運用の効率化と可視化を支援する。

YNOでは、複数のネットワーク機器を選択して一括でファームウェアを更新する機能を備えており、メンテナンス作業の負担を軽減する。また、GUI Forwarder機能により、YNO経由で拠点機器のGUIに直接ログインでき、「LANマップ」と併用することで、LAN側のネットワーク構成を視覚的に確認でき、運用状況の把握が容易になる。

さらに、アラーム通知機能により、各機器から送信されたアラーム情報をYNOの管理画面上でまとめて確認できるため、障害の早期発見と対応が容易である。なお、マルチベンダーで構成されたネットワーク環境においても、LANの中核にヤマハスイッチが導入されていれば、他社製ルーターの配下にある機器の可視化と管理が可能である。これらの機能により、ネットワークの運用管理をよりスマートかつ効率的に行うことができる。

なお、今回発売するスイッチに加え、既存のインテリL2、ライトL3、スタンダードL3スイッチシリーズも対応ファームウェアへの更新によりYNOに対応する。これにより、すでに導入済みのスイッチもクラウド管理の対象となり、複数拠点に設置されている新旧スイッチを統合的に管理できるため、運用の一貫性と効率性がさらに向上するとしている。

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Pro AVインストーラーにやさしい設定機能を強化

今回発売するすべてのスイッチにおいて、ProAV市場向けのプロファイル設定機能を強化し、SMPTE ST 2110およびIPMXに対応した新しいプロファイルを追加した。これらのプロファイルは、映像・音声・制御データをIPネットワーク上で高精度かつ低遅延に伝送するための業界標準プロトコルであり、主に放送設備などで広く活用されている。

特に、ネットワーク機器の操作に不慣れなProAVインストーラーでも容易に設定できるよう、GUIベースでのプロファイル選択機能を搭載。複雑なネットワーク設定を意識することなく、現場での迅速な導入と安定した運用を実現する。

さらに、プロファイルの設定は本体背面に搭載されたディップスイッチでも変更可能とした。リモートアクセスを必要とせず、現場で物理的に設定できるため、ProAVインストーラーにとって扱いやすく、導入時の負担を大幅に軽減する。これにより、柔軟かつ迅速な対応が可能となり、さまざまな現場環境で高い利便性を発揮する。

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BGP対応で広がるネットワーク構築の柔軟性

今回発売するスタンダードL3スイッチ「SWX3220-30MC」「SWX3220-30TCs」は、ダイナミックルーティングプロトコルとして新たにBGP4+(Border Gateway Protocol 4+)に対応した。これまでスタンダードL3スイッチではRIPおよびOSPFといったIGP(Interior Gateway Protocol)に対応していたが、今回のBGP4+対応により、EGP(Exterior Gateway Protocol)として異なる自律システム(AS:Autonomous System)間での経路情報交換が可能となり、より柔軟で高度なルーティング設計が実現できるようになった。

ASとは、単一の管理主体によって運用されるネットワーク群を指し、インターネット全体は多数のASによって構成されている。IGPはAS内部でのルート情報交換に使用されるのに対し、EGPはAS間のルート情報交換に用いられる。BGP4+はその代表的なEGPであり、インターネットの根幹を支える重要なプロトコルである。

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本機能は標準で搭載されているため、追加ライセンス無しで利用可能である。IT市場における拠点間接続やマルチホーム構成はもちろん、ProAV市場においても、セグメント分離や映像・音声伝送ネットワークの最適化に活用いただける。これにより、放送設備やイベント会場、教育施設など、高い信頼性と柔軟性が求められるネットワーク環境において、より高度なルーティング構成が可能となる。